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抵当権の被担保債権の不履行前に生じた抵当目的物の賃料に、抵当権の効力は及びますか?

一問一答的には「及ばない」となりそうですが、考えているうちに分からなくなりました。
判例・条文については以下のように理解しています。

(1) 371条の「果実」には法定果実も含まれる。
(2) よって、債務不履行後に生じた不動産賃料には抵当権が及び、物上代位・強制管理が可能。
(3) ただし、物上代位・強制管理は、372条が準用する304条より「払渡し又は引渡しの前」にしなければ、優先権を主張できない。
(4) 賃料物上代位を認めた最判平1・10・27は、「対価(賃料)について抵当権を行使することができるものと解したとしても、抵当権設定者の目的物に対する使用を妨げることにはならない」と判示。

(1)を反対解釈すると、「債務不履行前の法定果実には抵当権は及ばない」となり、
これは、設定者に使用収益権を留保するという抵当権の性質から当然とも思われます。
しかし、最高裁は(4)と判示しています。本判例が旧371条を前提としているにしても、こちらは、
「賃料に抵当権を及ぼしても問題ないから、不履行の前後を問わず及ぶ」と読めます。
(「及ぼしても問題ないが、抵当権の性質上実行には制限を設ける」とも読めますが…)

長くなってしまいましたが、お聞きしたいのは
ア) 債務不履行前に生じた賃料に抵当権は及ぶか
イ) (1)は色々なところに書いてあるが、正確な内容か
ウ) 371条は反対解釈するのではなく、「抵当権の効力は時期を問わず及ぶので不履行後も当然及ぶ」という確認規定ではないのか

混乱しているので分かりくくて申し訳ありません。
参考文献等もありましたら教えていただけると幸いです。

A 回答 (4件)

ア)及ばない。



イ)「反対解釈すると、「債務不履行前の法定果実には抵当権は及ばない」となり、
これは、設定者に使用収益権を留保するという抵当権の性質から当然とも思われます。」
→正しい

ウ)間違い。

最判平1・10・27の判例を根拠に、及んでもおかしくないのでは?とお思いのようですが、民法371条は平成15年に改正されています。

改正前の371条はその解釈について、色々な争いがあり、その一部を決着させたのがお書きになった判例ですが、それでもその解釈について争いがありました。それを受けて、債務不履行前の果実には抵当権の効力は及ばないことを明文化したのが、現在の371条です。

改正前
第371条
1 前条ノ規定ハ果実ニハ之ヲ適用セス但抵当不動産ノ差押アリタル後又ハ第三取得者カ第三百八十一条ノ通知ヲ受ケタル後ハ此限ニ在ラス
2 第三取得者カ第三百八十一条ノ通知ヲ受ケタルトキハ其後一年内ニ抵当不動産ノ差押アリタル場合ニ限リ前項但書ノ規定ヲ適用ス

現在
第371条
抵当権は、その担保する債権について不履行があったときは、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。

参考文献:物権法(試験対策講座 伊藤真著)
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この回答へのお礼

質問文に即した簡潔なご回答ありがとうございます。
判例が371条改正後にも妥当する議論かどうかの関係がいまいち分かっていない状態でした。
詰めると疑問がまだありますが、ひとまず今回の知識を押えて再度検討したいと思います。

お礼日時:2012/10/19 15:08

>執行対象の発生時期が債務不履行以降かは別問題であると認識しているのですが、間違いでしょうか?



私の回答は何時も実務経験からです。
本件のように「賃料は抵当権に及ぶか」と言う問いだとしても、抵当権と賃貸借と密接な関係があり、
更には、例えば「抵当権は、抵当物件上にある庭石に及ぶか」の問いだとしても「及ぶ」も正しいし「及ばない」も正しいです。
何故ならば、現場の状況次第で変わってきます。
そのようなわけで、不履行があり、抵当権実行があり、その買受人から見て、初めて正しい答えがでるので、今回のようなご質問も、果実だの判例など持ち出すことが全くのナンセンスなことと思います。
もともと、お問い合わせの問題は民事執行法180条で解決済みと思います。
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この回答へのお礼

追加のご回答ありがとうございます。

担保物権の問題は実務の現実から切り離して考えられないこと、また、
実務家から見れば「ナンセンスな議論」と評価されることは重々承知しております。
私自身も「この議論は意味があるのか」と思うことも多々あります。
そうであるからこそ、最低限、学説の自由演舞を可能な限り排除して判例準拠で
検討しようとしています。

他方、私自身は実務を行う以前の法理論について勉強している段階であり、
一般論として担保物権の効力が及ぶ範囲の捉え方については、
法理論習得の上で必要なものとして議論されております。
法改正前に遡って検討しているのもそのためです。

事案に即さなければ正しい答えが出ないというのはその通りですが、
限界事例を想定した上での議論をしているという点をご容赦下さい。

お礼日時:2012/10/20 11:19

371条の反対解釈というより,物件法定主義からして,抵当権の効力が及ぶと書かれている範囲以外には,効力が及ばないのが当然なのではないでしょうか。



旧371条では,果実の発生時期については,明確な規定が無いので,被担保債権の債務不履行後に,被担保債権の債務不履行前に生じた未払の賃料がまだ残っているなら,それに対し抵当権に基づき権利行使できると解釈する余地はあると思います。

ただ,改正により,抵当権の効力の及ぶ範囲が,果実については「その(債務不履行)後に生じた抵当不動産の果実」と明確に法定され,「債務不履行の前に生じた抵当不動産の果実」に抵当権の効力が及ぶという法定が無い以上,債務不履行前に生じた賃料に抵当権の効力は及ばないと解さざるを得ないと思います。
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この回答へのお礼

ご回答ありがとうございます。
物権法定主義に立ち戻った解釈は読んだことがなかったのでなるほどと思いました。
非常に頭の整理になりました。

お礼日時:2012/10/19 15:11

摘示の判例があったことから、平成15年に民事執行法の一部が改正されまして、同180条1項2号で「担保不動産収益執行」が創設されました。

(これは実務でも時々あります。)
つまり、抵当権の実行は、担保物件の換価を目的とした「担保不動産競売」と、担保物件から生ずる収益(賃料など)の取り立てを目的とした「担保不動産収益執行」の2つがあります。
いずれも、当然と債務不履行が要件です。
従って、債務不履行前では、賃料について、抵当権の効力は及ぶか否かの問題は生じないです。
及ぶか否かは、抵当権実行後の問題です。
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この回答へのお礼

ご回答ありがとうございます。
強制執行の要件として債務不履行が必要であることと、
執行対象の発生時期が債務不履行以降かは別問題であると認識しているのですが、
間違いでしょうか?
執行法はほとんど勉強していないので改めて検討したいと思います。

お礼日時:2012/10/19 15:05

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