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脳科学の文章を読んでいて,この言葉が出てきました。
ラットなどに電気ショックを何度も与えると、実験するための箱に入れただけで恐怖反応が見られるという説明が付け加えられています。
これはエピソード記憶とどこが違うのでしょうか?

A 回答 (1件)

こんにちは。


「文脈的認知」の概念に就いてはある程度お調べになったでしょうか。ここで取り敢えず注意しておかなければならないのは、「文脈」とは言いましても、それは決して言語思考における論理的な判断などではないということですね。
例えば、我々は目上の人には敬語を使います。これは、敬語を使わなければ失礼に当たるといった論理的な判断を脳内で逐一駆使しているのではなく、むしろ日本の社会に生まれ育ったことによって自然に形成された文脈によるものです。ですから、相手が目上と判明した時点で、我々は難なく敬語を選択することができるわけです。
あるいは、何か入れ物が必要ならば、当然、入れる物より大きな物を探します。それが大きいか小さいかは視覚情報に基づく認知です。これに対しまして、入るか入らないかは文脈による認知結果ということになります。

このように、個人体験、社会常識、強いては物理法則に至るまで、脳内には生後体験に基づくありとあらゆる文脈が習得されており、我々はこれによって与えられた状況に応じた適切な行動の選択や修正を行っています。これが文脈的認知の概要ですね。
では、そこにどうしてラットのオペラント条件付け実験の例が説明として用いられているのか。そして、それはエピソード記憶と何処が違うのか、ということで宜しいでしょうか。

「エピソード記憶」と言いますのは、その名の通り個人的な体験情報です。ですからこの場合、「以前、これと同じ実験箱に入れられて酷い目に合った」というのがラットにとってはエピソード記憶ということになるわけですが、このような情報は大脳皮質の機能によって学習、保持されるものです。
これに対しまして、恐怖や不安などの「感情」といいますのは大脳皮質ではなく、「大脳辺縁系の情動反応」によって発生するものです。ラットは実験箱の中で電気ショックを与えられ苦痛を体験したわけですが、これによって発生した情動反応の結果はラットの辺縁系に記録されます。ですから、まず最も明確な違いは、エピソード記憶と言いますのは大脳皮質の受け持ちなのに対し、こちらは辺縁系の学習機能によるものであるということです。
古典心理学ではこれを「オペラント条件付け」と呼びますが、この場合はラットの「心的外傷(トラウマ)」と言ってしまった方が分かりやすいと思います。そしてこれにより、脳内には「実験箱=危険」という文脈が学習されたことになり、ラットは大脳のエピソード記憶を使わなくとも直ちに回避行動を選択することができるようになります。

このように、文脈的認知とは論理的な思考をスキップし、生後体験に基づく適切な行動を出来得る限り迅速に選択するというのがその役割です。ならば、大脳皮質のエピソード記憶というのは、何故、危険なのか、どうすれば良いのかといった、論理的な思考に基づく計画行動を執るため学習情報ということになります。
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この回答へのお礼

明快な解答ありがとうございます。
どうも私は「文脈」と言う言葉を取り違えていたようです。
エピソード記憶との違いも、すっきりしました。

お礼日時:2013/03/08 22:26

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