初学者です。詐害行為取消権のところでうまく理解できないところがあったので質問させていただきます。
事例
「GはSに対してα債権500万円、β債権500万円を有している。そしてα債権を担保するために、S所有の甲土地(評価額600万円)上に抵当権が設定されている。Sの全財産は甲土地と500万円の金銭だけである。SはDとともに、Gを害する意図で甲土地をDに贈与して所有権移転登記を済ませた。その後Sは手元にある500万円をα債権の弁済にあて、α債権は消滅、甲土地上の抵当権設定登記も抹消された。これらののちにGは、β債権を被保全債権として詐害行為取消しの訴えを提起し、裁判所はSD間の贈与を詐害行為として取り消した。」
この場合は、甲土地上の抵当権設定登記は抹消されてしまっていますから、逸出財産の原状回復が著しく困難ということで取消債権者は現物返還ではなくて価額償還によらないといけない…んですよね?
それでその価額償還は、甲土地の評価額600万円のうち責任財産を構成していなかった500万円を除いた100万円についてなされる…んですよね?
ここでちょっと思ったんですが、
もし甲土地の贈与よりも先にα債権の弁済がなされていたら、甲土地上の抵当権は消え、500万円分はSの責任財産になる。その後に甲土地の贈与がなされたとしたら、Gは詐害行為取消権行使によって不可分物であるところの甲土地全体を現物返還によって受領しそこから自己の債権の満足を得ることになる、と思うのですが、
この例のように、先に甲土地の贈与がなされてしまった場合にはGは100万円分しか債権の満足を得ることができず、Dは100万円の価額をGに払うだけで甲土地を保持できる、というのはなんとなくおかしいような気がしてしまうのです…
これはこういうものとして理解するしかないのでしょうか?
ぱっと出てきた害意あるDが500万円分も得てしまうことになるのがここの結論なのでしょうか?
混乱していますので、わかりやすく教えていただければありがたいですm(_ _)m
A 回答 (8件)
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No.8
- 回答日時:
>僕の使っている教科書では、「『債務者の財産』と『責任財産』の異同」という見出しで、「責任財産を構成するのは物的担保により優先的に支配された価値を控除した部分だ」、と書いてありましたので行き違いが生じてしまったのかもしれません。
なるほど、その教科書ではそのように定義しているのですね。詐害行為取消権は、責任財産の保全制度の一つですが、ここでいう責任財産というのは、一般債権者の引き当てになっている価値部分のことを言うということなのでしょう。
>β債権の額を700万円としてもらえないでしょうか?
Gには、担保権者(α債権)の立場と一般債権者(β債権)の立場が併存しているので、分かりづらいですが、本件では現物返還しても担保権者としてのGは害されないという点に着目する必要があります。私の挙げた典型的な事例は、原物返還だと、担保権者が害されてしまうので、価額賠償の方法になるわけです。
しかし、ご質問者の「この例のように、先に甲土地の贈与がなされてしまった場合にはGは100万円分しか債権の満足を得ることができず、Dは100万円の価額をGに払うだけで甲土地を保持できる」という疑問は、別の観点からの問題です。
そのような疑問は、そもそも、目的物が不可分なものの場合、分けられないからその全部の原物返還にならざるを得ないという立場に対する批判の根拠になるわけですから、それに対して反論して、原物返還の立場を貫くか、あるは、担保権者が害されるか否かを問わず、被保全債権の額より目的物(不可分)の価額が上回る場合は、価額賠償によるべきであるという立場を採用するか論じて下さい。
No.7
- 回答日時:
No.3,5です。
>僕の勉強不足なのですが、抵当権が設定されている債権の弁済をする際には、それが有効となるための条件のようなものがあるのでしょうか?
この疑問は,学問としての法律の勉強の基礎ができていない,ということです。
そもそも債務の弁済とは何でしょうか?
まずは自分で条文を確認してみてください。
自分なりに考えたうえでの質問は法律の勉強には有意ですが,単なる丸投げ質問は何の役にも立ちません。
抵当権の弁済に特別な有効要件は,通常は条文上要求されていません。でも質問者さんの質問では,α債権の弁済によってSの一般財産が逸失します。
そのため,この問題について「解釈」が必要である。
こうなりませんか?
確かに法学部では,この「解釈」論を学ぶわけですが,この「解釈」の答えには,「解釈」の必要性という前提(問題提起)があります。
条文上は通常,抵当権の弁済に特別な有効要件はありません!!(細かくみていくと,例外はありますが)。
しかしながら,質問者さんの質問で抵当権の弁済の効力をそのまま認めていくと,不都合があると質問者さん自身が疑問を立てているわけです。
じゃあどうするか。「解釈」が必要になるわけです。
質問者さんの疑問自体が間違っているならば,「解釈」は不要です。
私の回答は,質問者さんの疑問が間違っています,という回答です。
もし仮に,質問者さんの疑問が正しいとしたならば,無条件に弁済として有効=一般財産の逸失を認める,というのはおかしいから,弁済としての有効要件に欠けるとするか,詐害行為取消権との関係で弁済の効力を修正する必要がある,という解釈の必要性を指摘しているわけです。
もう一度,質問の事例に戻ります。
甲土地がα債権の責任財産だ,という意味はなんでしょうか?
それは,α債権には物的担保が付いているから,債務者の一般財産からの弁済がなくても排他的に優先弁済が受けられる,ということです。
だから,物的担保によって担保される債権は,詐害行為取消権の行使は許されないのです。
逆にいうと,物的担保として把握されている目的物は,一般財産ではないから,その物的担保として把握されている目的物が処分されても,一般債権者は詐害行為取消権を行使できないのです。
しかし,事例では「一般財産」から,物的担保の付いているα債権が弁済されています。そうすると弁済によって消滅した抵当権によって責任財産とされた部分は,抵当権から解放された以上「一般財産」とならなければおかしいことになります。
α債権の弁済のために甲土地を確保していました。でも,α債権の弁済のために預金を使いました。甲土地は,α債権の弁済のために確保していた土地だから,他の債権の弁済には使えません・・・なんて理屈は通りませんよね?
だから,質問者さんの疑問自体が間違っていると指摘しているわけです。
No.6
- 回答日時:
>けれど、「Sの『財産』であること」と「Sの『責任財産』であること」とは違うのではないですか?
それでは、抵当権付の不動産について、債務名義を得た債権者は強制執行できないのでしょうか。
>詐害行為取消権により取消しができるのは、Sの『責任財産』すなわち「物的担保などで優先的に支配された価値を除いた部分」に限られるのではないのですか?
それは責任財産ではなくて、積極財産という用語を使用すべきでしょう。無資力とは、簡単に言えば、消極財産>積極財産です。積極財産の額を計算する上で、積極財産、甲土地600万円でなくて、被担保債権であるα債権の額を引いた、積極財産 甲土地100万円になります。(御相談者の言わんとしているのは、このことだと思いますが、責任財産という言葉を使用してしまうと、S名義の甲土地は責任財産であるとしかいいようがない思います。)
そのかわり、α債権は、消極財産に含みません。
本問題は、現物返還か価額賠償かを論じる前に、そもそも、贈与が詐害行為に該当するのか否かを論じて下さい。形式論で言えば、贈与の直前では、消極財産は、500万円「β債権」で、積極財産は、100万円「甲土地」+500万円「現金」なのですから、甲土地を贈与しても、Sは無資力の状態になっていませんよね。500万円の現金をα債権の弁済に充てたことにより、Sは無資力になっていますので、本来であれば、α債権の弁済が詐害行為になるわけです。ところが、α債権の債権者は、β債権の債権者と同じGなので、Gがα債権の弁済を詐害行為として取消しても意味がありません。それでは、贈与を詐害行為として取り消すことができるのかが問題になるのです。
この回答への補足
ご回答ありがとうございます。
僕の使っている教科書では、「『債務者の財産』と『責任財産』の異同」という見出しで、「責任財産を構成するのは物的担保により優先的に支配された価値を控除した部分だ」、と書いてありましたので行き違いが生じてしまったのかもしれません。すみませんでした。
あともう一つ、申し訳ないのですが、ご指摘の通り、β債権が500万円では(詐害)行為時の無資力要件を充たしませんね…
β債権の額を700万円としてもらえないでしょうか?
本当に次から次へと質問ですみません(> <)
No.5
- 回答日時:
No.3です。
質問者さんの問題提起で矛盾しているのは,甲土地の500万円部分は,抵当権が設定されているため「一般債権者」の責任財産ではない,としておきながら,その甲土地500万円部分のために「一般債権者」の責任財産を逸失させている,という点にあります。
違う言い方をすると,α債権には,抵当権が設定されているから「一般財産」から弁済は予定していない。それなのに,「一般財産」からα債権からの弁済に無条件の弁済としての効力を認めている,ということです。
この問題提起からは,α債権の弁済が許されるのか,許されるとして,詐害行為取消権との関係でどう取り扱われるか,を検討すべきです。
これに対し,私の回答は,甲土地について責任財産からみるという問題提起自体をしていません。すなわち,詐害行為取消権の行使によって甲土地の返還(贈与登記の抹消)は可能か,という問題提起になっています。
私の論理の流れはこうです。抵当権付の不動産の贈与も詐害行為取消権で取り消せる。詐害行為取消権は現物返還が原則である。今回の事例で現物返還を認めても問題ない。という論理の流れになっています。
この回答への補足
回答者様の考えはよく理解できました。なるほど、という感じです。
また僕の考えの矛盾をご指摘くださいましたが、「α債権には、抵当権が設定されているから『一般財産』から弁済は予定していない」という部分がいまいちわかりませんでした…
僕の勉強不足なのですが、抵当権が設定されている債権の弁済をする際には、それが有効となるための条件のようなものがあるのでしょうか?
何度も質問ばかりで申し訳ありません(> <)
No.4
- 回答日時:
>混同は…していないと思います。
なぜ混同していませんかと聴いたのかと言いますと、私の挙げた事例と御相談者の事例が違うのに、御相談者が価額賠償になると考えた原因を探りたかったからです。
おそらく、その原因は、「甲土地の評価額600万円のうち責任財産を構成していなかった500万円を除いた100万円」という考え方をしてしまっているからだと思われます。
詐害行為から離れて、SがGのために甲土地(600万円)に債権額500万円の抵当権を設定したという事例(抵当権の勉強)で考えてみましょう。甲土地がSの責任財産であることには変わりはありませんよね。なぜなら、甲土地の所有者は依然としてSだからです。もし、甲土地の100万円部分はSの財産だが、500万円の部分はGの財産になると思っているのであれば、もう一度、抵当権のところのテキストを読んでみましょう。
この回答への補足
再びのご回答ありがとうございます!
確かに甲土地はSの財産です。それは理解できております。
けれど、「Sの『財産』であること」と「Sの『責任財産』であること」とは違うのではないですか?
詐害行為取消権により取消しができるのは、Sの『責任財産』すなわち「物的担保などで優先的に支配された価値を除いた部分」に限られるのではないのですか?
この理解がやっぱりおかしいのでしょうか…?
もう一度回答してくださると嬉しいです。
No.3
- 回答日時:
質問文がうまくできているので悩んでしまいました(笑)。
下記回答はあくまで試論です。
「この場合は、甲土地上の抵当権設定登記は抹消されてしまっていますから、逸出財産の原状回復が著しく困難ということで取消債権者は現物返還ではなくて価額償還によらないといけない…んですよね?」
この問題設定が,多分,誤りです。
SD間贈与時点(α債権弁済前)で考えると,詐害行為取消権行使によって,甲土地の贈与に基づく所有権移転登記が抹消されます。
それが,α債権弁済によって,現物返還ではなく,価額償還になっています。これが間違いではないでしょうか。
本来,Dは甲土地の所有権移転登記の抹消を受任すべき立場にあったのですから,α債権弁済によってもやはり,Dの甲土地の所有権移転登記の抹消ができると解すべきです。
その理由は,質問者さんの疑問のとおり,β債権からみれば,Sの責任財産が流出していることは,α債権弁済によって何ら変わりがないからです。
また,このように解しても,Sに過剰な利益を与えるわけではなく,また他の債権者の利益も害しないからです。
この回答への補足
再びのご回答感謝します!
僕もそうした考え(現物返還を認める)のほうが妥当な解決になるのではないかと思っています。
以下まとめてみます。
【判例では、この「抵当権付不動産と詐害行為取消権」の事例において、
「もともとは責任財産を構成していなかった価値(この場合は甲土地の500万円分)までもが債務者の責任財産に復帰してしまうことにより、債務者や債権者に不当な利益を与えることになることを避ける」という理由から
「抵当権が抹消されていなければ現物返還、抵当権が抹消されてしまっていれば価額償還による」
という考え方がとられている。(ですよね?)
ただこの質問の事例では、現物返還により甲土地をSのもとに戻しても、GやSに「不当な」利益を与えることになる、とまでは言えないので、判例の考え方に従う必要はなく、原則通り現物返還で構わない。】
という処理でいいのでしょうか?
担当の教授に聞いたところ、似たような事例において、あくまで「もとの責任財産」の限度(この場合だとおそらく甲土地の100万円分)での「価額償還」によらないといけないとおっしゃっていたので、この処理に説得力があるのかがわからなくて不安です…
その教授が多忙でなかなか質問の時間がとれなく、ここで質問させていただいた次第です…
No.2
- 回答日時:
>この場合は、甲土地上の抵当権設定登記は抹消されてしまっていますから、逸出財産の原状回復が著しく困難ということで取消債権者は現物返還ではなくて価額償還によらないといけない…んですよね?
説明の便宜上、事例を変えます。「GはSにα債権(500万円)を有しているが、それを被担保債権としてSは甲土地(600万円)に抵当権を設定した。一方、XはSにβ債権(500万円)を有している。Sは、唯一の財産である甲土地をGに代物弁済し、抵当権は消滅した。(所有権移転登記及び抵当権抹消登記は完了している。)そこで、Xは、β債権を被保全債権として、SG間の代物弁済契約の詐害行為取消を求める民事訴訟を提起した。」という事例と混同していませんか。
この回答への補足
混同は…していないと思います。
ご回答中おっしゃってくださったような事例であれば、Xは、甲土地のうち責任財産を構成していた100万円についてのみ、価額償還によることができる(現物返還は不可)、という処理で問題ないと理解しています。
ここではあくまでも同じ債権者における、抵当権の消滅と詐害行為取消請求の事例なんです。
これを踏まえてもう一度回答していただけると嬉しいです!
No.1
- 回答日時:
ご質問の事例の中では、『SはDとともに、Gを害する意図で』と明確に書かれています。
これを前提に事例の説明は続きます。仰っている混乱は前述の事例に於ける条件(『Gを害する意図』が立証済みと言う条件)を読み飛ばした事によるものと愚考致します。甲土地の贈与が既遂か未遂かの問題でしょうか。
『SとDのGを害する意図』が、仮に立証済みならば、SとDの法律行為自体が民法90条に照らして無効であり、Dの取得は『不法利得』になりませんか。(甲土地の贈与は本来ならば未遂と言う事になります。しかしながら贈与の手続きを終えている為に『不当利得』となります)
『ぱっと出てきた害意あるDが500万円分も得てしまうこと』は、『SとDのGを害する意図』が立証済みならば民法の規定によって起こり得ないと考える方が理解しやすいと思います。
『SとDのGを害する意図』が立証される以前の段階では仰る様な問題も有ろうかと思いますが、それはご質問に挙げられた『事例』にそもそも合致しない別の話と愚考致します。
この回答への補足
ご回答ありがとうございます。
「SもDも、贈与がGを害することを知っていたに過ぎない」場合つまり「積極的な害意まではないが、詐害行為取消の対象になるだろうなくらいの意識はあった」という場合は、90条の適用まではできないと思うのですが、
その場合は僕が質問させていただいたような問題が生じうるということなのでしょうか?
そのとき、処理としては質問に書いたようにならざるを得ないのでしょうか?
(質問の仕方が少し悪かったみたいです。
実は、回答してくださったのに恐縮なのですが、あまり「害する意図で」というのは拘らなくていいと思います。そういった文脈の問題ではなかったので…(^^;))
それも踏まえてもう一度回答していただけると嬉しいです!
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