No.13ベストアンサー
- 回答日時:
戦国大名というのは、武官であると共に政治家でもありました。
だから、政治家らしく「使者を斬ることで政治的にメリットがある」なら斬りますが、そうでないならのべつまくなしに斬るだなんてことはしないものですよ。あえて斬るのは、斬ることによって家臣団に戦うことは不退転であるとアピールする意図があったり、それで家臣団の士気が上がったりするからです。他の方も指摘していますが、使者を斬るということは、外交ルートそのものを絶つという意味があり、一般的にそういうのは政治家としてはデメリットが多いです。例えば、上杉謙信はご存じのとおり武田信玄や北条氏康と激しく戦ったわけですが、武田信玄が今川義元の討死で南進策に変わると休戦し、北条氏康との間では関東制圧が無理と判断すると休戦のうえ氏康の息子を上杉景虎として養子に迎えました。
今、敵対していたからといってずっと敵対するとは限らず、また今同盟しているからといってそれを永遠だと信じるほどお人好しでもないのです。
今でも、コッカイの政治家さんたちはやれ選挙協力だ野党集結だとかいって離合集散をくり返していますでしょ。それと同じなんですよ。選挙って、合戦と同じじゃないですか。殺し合いではないというだけであって。
戦国大名の間では人質みたいなのは結構重要だったのです。例えば城攻めをしたとき、これ以上持ちこたえるのが難しいという場合はよく開城交渉がされました。多くの場合、条件は「城を明け渡す代わりに城兵の命は助ける」というものです。備中高松城の戦いのように城主が切腹するなんてのはむしろまれで、多くは城主も含めて命を助けるというケースが多いです。特にすごく重要な城でもないなら、オセロみたいにお互いが取り合うことも珍しくないですからね(例:長篠城や高天神城)。
で、そういう場合、城兵としてはいちばん怖いのは城門を開けたら「ウソだよ~ん」とかいって攻め込んできたり、あるいは城を明け渡して帰るところを後ろから襲われることです。だから、攻める側から城兵側に人質を出すのが決まりでした。多くの場合、人質は適当なところで解放されたようです。こういう場合も、もし人質を殺してしまったら次の戦いのときに「お前らは人質を殺すから、全員ぶっ殺してやる」となったらデメリットのほうが多いですよね。
戦国時代初期の朝倉宗滴さんが語ったといわれる記録が現代に残されていますが、それには「武士ってのは犬だとか畜生だとかいわれても勝つのが重要なんだよ」とか「占いで日が悪いからとかいう理由で出陣しないとかやるんじゃねえよ。勝つか負けるかは神意で決まるんじゃねえんだよ」なんて言葉が残っていて、そういう話が残っているということは逆にいえば「そういう勝ち方って武士的にカッコよくねえよな」とか「今日は日が悪いから出陣はやめよう」なんてことがよくあったってことですよね。
だからよく映画やドラマなんかじゃ合戦の後に死屍累々となっていますが、私はたぶんあれはウソなんじゃないかと思っています。だいたい人口が現代よりはるかに少ないあの時代にあんなに殺し合いをしてたらあっという間に人がいなくなってしまいます。それに普段は百姓であることが多い足軽なんかは、戦場で死んだら単なる死に損です。戦場で成り上がろうと思ってるフリーの武士なんかはやる気満々でしょうけど、足軽なんかは「死んでまで頑張る気はさらさらない」のです。だから足軽兵が多かった織田軍は弱かったのです。状況が不利だとなるとみんな逃げちゃう。どうも、みんな逃げちゃうくせに他に行くところがないからしばらくたつと「また雇ってください」って戻ってくるみたいです・笑。で、織田軍も人がいないと困るから結局そういう奴でも雇わざるをえなくて、だからそういう奴らでも真面目に戦えるように槍を長くしたり、飛び道具である鉄砲を積極的に取り入れたりしたのです。刀と槍なら槍、槍と鉄砲なら鉄砲を選ぶでしょ。
父から直接聞いた話なんですけどね。学生運動が華やかなりし頃、学生のデモ隊と警察の機動隊が衝突したってことがしばしばあったわけです。これって合戦ですよね。で、当時は田舎から動員されたおじさんのお巡りさんなんかがいたわけです。デモ隊は学生が中心だから若い。それで、衝突したところでは押したり引いたりしたのですが、そういうとき、相手側の一角を崩すためにお巡りさんを引っ張ったそうです。で、おじさんのお巡りさんがいるところだとおじさんは若い人には力で勝てないからそういうところが狙われる。
田舎からヘルプにきたおじさんお巡りさんは哀れデモ隊に引っ張られて引きずり込まれる訳ですね。おじさんお巡りさんはやっぱり興奮してるデモ隊に引きずられるから怖いので「助けてくれェ!」っていうらしんです。で、デモ隊としても田舎のおとっつあんを半殺しにしてもたいした意味はないんですね。万が一度が過ぎて死んじゃったら大変だし。だから、引きずり込んだおじさんお巡りさんはみんなでどんどん後ろの方に送ってっちゃうんだそうです。で、適当なところでポイッと捨てられる。おじさんはその流れに抵抗せずにいれば大けがもしなくて済むわけです。
だから昔の合戦というのもそういうものだったと思いますよ。たいして名のあるお侍さんでなければ、おじさんなんか放っておけ、足軽なんていくら首をとっても金になんないんだから蹴散らせばよい、てなもんだったと思います。
実際、「雑兵物語」には足軽の誰かがペットとして飼っていたネズミが逃げて騒ぎになって、それが大騒ぎになったら敵襲と勘違いして全軍総崩れになった、なんて話が残っています。なんか大騒ぎしてるぞ、何事?え、敵襲?敵襲らしいぞ。やべえ、戦う準備してないよ、あっ、隣の陣が逃げ始めた。やばいぞ、俺たちも逃げ遅れたら大変だ、ここは逃げよう、ってなもんだったと思います。
この回答へのお礼
お礼日時:2014/01/06 05:40
朝倉宗滴さんのご高名は存じています。(主に信長の野望で……
そうでしたか。そんなこと仰っていましたか。
非常に勉強になります。ご回答ありがとうございます。
No.20
- 回答日時:
「使者を斬る」行為は、「交渉の余地は全くない」「徹底的に戦う」という意思表示。
どちらかが全滅するまで戦う、というならまだしも。
戦が終った後のことも考えましょうよ。
武器を持たない使者を斬ったとあっては、深い遺恨が残りますよ。
うっかり負けたときは 今度は自分が容赦なく斬られるでしょうし、
仮に勝ったとしても 服従させた相手国の人間が素直に言うことを聞くでしょうか。
戦だって相手国にとっては弔い合戦ということになるし、凄惨なものになりますよ。
勝つにしても 自国にも無駄に多大な損害がでてしまいます。
No.19
- 回答日時:
戦いにせよ何にせよ、外交は互いの存在を知っているから摩擦がおき、連絡、コミュニケーションが必要になる。
(地球の反対側にいる奴とはいさかいもなければ、コミュニケーション自体もない。)
だから外交吏はかならず元へ帰さないと、相手の意思や気持ちがつかめない。悪くすると相手の動きがつかめなくて、奇襲されるかもしれない。(日本の開国時に揉めたのもそこいらへん。)
もし使者を斬って、こちらも同じことをされた場合どうする。例えば、負けが込んでやめようとするときに、相手が受けつけてくれないということが起こりうる。(だから外交上は仲介者をたてる。<アメリカーモロッコーイラン>だったかな。)
戦時でも、兵器開発では相手の反撃手段との兼ね合いで考える。
No.17
- 回答日時:
「外交の使者を斬ってはならない」とまで頑然としたものは無かったのではないでしょうか。
実際相手との手切れを決定し、ある種の遺恨などがあるのならば切ったでしょう。
或いは鼻や耳を削ぎ落として返事とすることもあったようです。
また使いには第三者として僧侶等も用いる場合がありましたので
この場合はその限りでは無かったかと思われます。
使者との対面の折、主君が使いの者を斬ろうとした場合にそれを諌める近臣が存在したかに
よっても変わったでしょうね。
己が置かれている立場上、断固として斬らねばならない状況もまたあったでしょう。
No.15
- 回答日時:
鎌倉時代の元寇で、時の鎌倉幕府が相手からの使者を斬ったことは知られています。
国際法のない時代といっても、現在の国際法に関する発想をそのまま過去の史実に適用して考えることは妥当ともいえません。何となれば、その前提が異なりもしますから。確かに戦国大名をはじめ、それに準ずる組織集団例えば雑賀衆や本願寺あるいは興福寺といった強固な経済基盤と組織を有する集団とそれら戦国大名が同盟関係を結ぶとの現実もあります。
一つの強固な組織によって日本全国を地域的そして階層的にも統治されていた時代とは異なり、権力の所在が分散もしていますので、安直に交渉相手との窓口を閉ざしてしまうことは切実な死活問題ともなりかねません。
確かに信長も使者を斬るとの行為に及んだ場合もありますが、それは信長が新たな秩序の創出を意図していたからであって、その頂点に君臨するのは「国王としての信長自身」であることを明確に意識もし、それと同時に無意味な争いは避け、やむを得ず武力を以て対峙するとのケースに限られています。
相手との交渉窓口を閉ざすことで生じるデメリットはあってもメリットは少ないとの話になりもします。「問答無用」との姿勢で臨んで自滅の道を開いた事例は幾らでもありますよね、それだけで相手に口実を与えてもしまいますから。
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