遅刻の「言い訳」選手権

○ 友達とおしゃべりをしていたら、母と出かける約束を(すっかり/さっぱり)忘れてしまい、叱られました。

「すっかり忘れた」はいえるが、「さっぱり忘れた」は言えるでしょうか。両者の違いはどこにあるでしょうか。よろしくお願いいたします。

A 回答 (3件)

 お示しの文の場合、どちらも言えます。

「すっかり」「さっぱり」どちらも、何も残っていないことを表す意味があり、問題ありません。

 でも、どちらかが何か違う、と思えることがあったり、自分ではこれでいいと思っても、他人から違うと指摘されたりしますね。それは、「すっかり」と「さっぱり」で大きく違う用法もあるせいではないかと思います。

「デジタル大辞泉」から、その辺りを感じられそうな語義の相違を引用してみます。

・さっぱり
>2 いやみのないさま。また、しつこくないさま。あっさり。「―(と)した味」

・すっかり
>2 完全にある状態になっているさま。まったく。「からだはもう―よい」「―春だ」

「さっぱり」はしつこくないのですから、最小限という感じになります。一方、「すっかり」は完全に何かになっているのですから、最大限という感じです。

 これらの語義が、「すっかり」「さっぱり」が「忘れた」に対して同じ意味で使えることと混同されることがあります。

 特に「忘れた」が忘れて行く動的な状態ではなく(それなら上記さっぱりの類語「あっさり」が適する)、忘れてしまっているという静的な状態(同様にすっかりに対する「まったく」が適する)をイメージしている場合は、「さっぱり忘れたはおかしく、すっかり忘れたと言うべき」と思う人も多いです。

 間違いかどうかの議論ではなく、多用される、しっくりくる、といったレベルであれば、お示しの例文では「すっかり忘れた」を使いたくなる人のほうが多いであろうと思います。でも繰り返しですが、「すっかり」「さっぱり」どちらでも正しいのです。

P.S.

 もし「忘れる」という言葉を「忘れ行く」と動的に表したいなら「さっぱり」の類語「あっさり」で(最小限で起こる、つまり容易く起こった)、忘れてしまった後の状態を言いたいなら、「すっかり」の類語「まったく」(最大限にない、つまり欠片も残っていない)などで言い換えるといいかもしれません。

「きれいさっぱり」と複合語にすると、単純な「きれい+さっぱり」というより、もう別の言葉になった観があります(「すっかり」には、ニュアンスが異なって多用化されるものが特に見当たらない)。

 例えば「悪事からはきれいさっぱり足を洗った」は、「きれいさっぱり」を「さっぱり」に言い換えようとすると違和感があり、むしろ「すっかり」のほうがしっくり来たりします。
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以前なら程度副詞としての「さっぱり忘れてしまった」などは使えていたのですが、その後しだいに否定の予告副詞「さっぱり~ない」の用法へと発達した結果、今日では「<きれいさっぱり>忘れた」といった用法にのみかろうじて残されている状態です。



用例:
「むかしの事はさっぱり忘れてしまうつもりでいたんだが……。」 (永井荷風「つゆのあとさき」)
「近ごろはそのショッパイ味覚がさっぱり忘れられてきた。」(吉川英治「舌のすさび」)
      ↓
「こんなにも、綺麗(きれい)さっぱり忘れてしまうものなのか。」(太宰治「八十八夜」)
「そのほかのことは、さっぱり覚えていないのである。」(太宰治「新樹の言葉」)
「今はすっかり忘れてしまった」(芥川龍之介「水の三日」)
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「さっぱり」を使うとしたら、「さっぱり忘れていて」です。

この「忘れていて」には、「すっかり」も使えますが、ここでいう「忘れてしまい」には「すっかり」しか使えません。
両者の違い~言葉に表しにくいですねえ。とりあえず、両者の意味を調べてみると、ここに使われる意味としては、どちらも残るもののないさま、となりますが。
母とした約束を、さっぱり忘れてしまい、といえば、後になっても思い出せない、という意味になります。すっかり忘れてしまい、の表現は、その時は、という言葉が省略されているとみて、その時はうっかり忘れていたという意味にも取れるでしょう。
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