近代の文学流派と機関誌についての解説で、ただしいかどうかを問う問題です。
この二つがどうしてもわからないので、正誤を教えて下さい。もともとは「正しいものを選べ」という選択肢式の問題ですが、この二つ以外については明白な誤りなので残る二つのうちどちらか一方のみが正しいという状況です。 誤っている記述には、誤りの理由も教えていただければ幸いです。
1.自然主義が衰えた明治43年、武者小路実篤を中心に同人雑誌『白樺』が創刊され、論理的・道義的な生き方を求めながら、近代人の精神生活を描いた
2.プロレタリア文学運動は大正10年、雑誌『種蒔く人』の創刊に始まり、関東大震災後、弾圧によって一時的に衰退したが、大正13年、『文芸戦線』創刊によって再び活発化した。
*気がかりな点は、次の通りです。
1については、白樺派は理想主義・個性主義・自由主義を基調としていたという記述を見ていることです。それはこのように言い換えられるのでしょうか。
2については、関東大震災後に弾圧があったのかということです。そして小林多喜二の死後だとは思いますが、「戦時体制の強化によりプロレタリア文学の作家たちは弾圧を受け、政治性や思想性を放棄した転向作家が続出した」との記述を見ていますが、そこには再び活発化したとの記述はありません。また別の場所で「関東大震災もあって『種蒔く人』が廃刊したが、『文芸戦線』創刊によって再び活発化した」との記述も目にしています。だからその時にも弾圧があったと考えれば、つじつまが合います。
その一方で、口コミレベルではありますが「小林多喜二の死後に弾圧を受けて一時的に後退した(つまり後日活発化した)」との話も聞いています。
これらの諸点が私の判断を迷わせています。
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
#3です。
紛らわしい表現で申し訳ありません。
李 修 京氏は、(自らの論文内で)引用した朴明用氏(2ページ)の論文内容に関して、
【運動の当事者や上記の文学評論家の意見に見る限り、「帝都震災号外」が『種
蒔く人』の解散要因という根拠は希薄である。
少なくとも、上記引用文における著者の認識は、厳密な論拠の提示がなく、客観性にやや欠けている意見だと考えられる。】
と述べています。
つまり、朴明用氏は『「帝都震災号外」が『種蒔く人』の解散要因(=弾圧によって廃刊になった)』と言っていたわけで、これは、#2でお示ししました祖父江昭二氏の、
【 ‘関東大震災'という出来事とそれに乗じた弾圧の強化とによって『種蒔く人』が余儀なく廃刊に追い込まれた】という見解と意を同じくしており、李 修 京氏は、このような「弾圧によって廃刊になった」という見解を否定した、という意味でした。
#2、#3は、読み返してみても、我ながら非常にわかりづらい構文だと反省しています。
URL を参照していただければ、詳しい内容はおわかりいただけると考え、手抜きの記述をしてしまったようです。
申し訳ありません。
下記一覧にある、「韓国における 日本近代文学運動の評価考察」の項目をクリックしていただくと、論文のサイトが自動でダウンロードされ、(画面の下方などに)PDFファイルとして表示されると思います。
それをクリックしていただくと全文が見れるはずです。
https://www.google.co.jp/search?q=%E5%B8%9D%E9%8 …
ご説明、ありがとうございました。
私が質問文で記した「小林多喜二の死後に弾圧を受けて一時的に後退した(つまり後日活発化した)」との話は、その後それを私に伝えた人の誤解であって、正しくは「そのまま衰退」であることを確認できました。
というわけで、この件については全面的に解決したようです。
No.3
- 回答日時:
#2です。
>もっともこの程度では、選択肢2番のような記述はオーバーだと言えるかもしれませんね。
:
そうですね。
この記述は、李 修 京氏が他者の論文から引用している箇所で、弾圧が原因となって廃刊した、という見方を否定している部分です。
これは特に、小牧近江、金子洋文など「種蒔く人」発起人の見解を基にした判断でもあり、論理性の高いものだという印象を受けた次第です。
【 ‘関東大震災'という出来事とそれに乗じた弾圧の強化とによって『種蒔く人』が余儀なく廃刊に追い込まれた】 ←えっ、「弾圧の強化」という言葉を使っているのに、これが弾圧が原因となって廃刊したという見方を否定していることになるのですか? 「 ‘関東大震災'という出来事」をもっと強調しなければ、そのような意味になりにくいと思います。
その点がいまひとつわかりません。
No.2
- 回答日時:
1.
「論理的・道義的=理想主義」と考えて良いのではないでしょうか。
武者小路実篤(友情)・志賀直哉(暗夜行路)などを読んでも、一応、そのような評価は可能だと思います。
「個性主義・自由主義」については、特に言及していませんが、間違いとする理由にはならないでしょう。
2.
たしかに、流言飛語による外国籍の方々に対する暴虐や、社会主義者・アナーキストなどに対する弾圧はありました(亀戸事件・甘粕事件)が、そうしたことに基づいて、プロレタリア文学が【弾圧によって一時的に衰退した】と言えるかどうか。
という点に焦点が当たっているように思われます。
個人的には、衰退したのは弾圧が主要因とは思えないため「弾圧によって」という記述部分が誤りではないか、という気がします。
以下、その理由を述べます。
a.
廃刊の経緯については、李 修 京氏の下記論文が詳しいように思います。
file:///C:/Users/user/Downloads/YP50008000004%20(1).pdf
諸説が公平に紹介されていて、たとえば、祖父江昭二氏の【 ‘関東大震災'という出来事とそれに乗じた弾圧の強化とによって『種蒔く人』が余儀なく廃刊に追い込まれた】という見解も記されています。
一方、
青野季吉⇒団体としての統制の崩壊、経済的弱化、内部の意見対立。
小牧近江(「種蒔く人」発起人)⇒経済的問題や内部の意見対立。
金子洋文(「種蒔く人」発起人)⇒【自著の『種蒔く人伝』の中で、「雑誌『種蒔く人』は一九ニ一年二月創刊し、関東大震災にあって終刊となった。」と明言している。】
といった内容も記している。
その上で、李 修 京氏は、引用した朴明用氏(2ページ)の論文内容に関して、
【運動の当事者や上記の文学評論家の意見に見る限り、「帝都震災号外」が『種
蒔く人』の解散要因という根拠は希薄である。
少なくとも、上記引用文における著者の認識は、厳密な論拠の提示がなく、客観性にやや欠けている意見だと考えられる。】と述べています。(3ページ)
「帝都震災号外」とは、朝鮮人虐殺に抗議の目的で小牧近江等が作ったもので、これが原因で弾圧された、という見方もあるわけですが、それを否定する見解を述べている箇所です。
b.
下記ブログの記述が非常に興味深く感じました。
【 雑誌「種蒔く人」は1923年(大正12年)9月の関東大震災のために廃刊に追い込まれた。「種蒔く人」は毎号そのときどきの時流にあわせた形で編集しており、大震災の直前には朝鮮人問題をテーマとして、原稿をすべて印刷所に渡していたが大震災で印刷所は焼失、原稿もすべて失われてしまった。
小牧近江と金子洋文は再建につとめたが、同人が集まった会議では意見がまとまらなかった。そこで震災後故郷の秋田に避難していた今野賢三に、「休刊の辞」と「朝鮮人虐殺に抗議」を書くように依頼した。その上で金子も秋田に戻り、「帝都震災号外」を印刷して、今野とともに汽車で東京に運んだのだった。】
http://monsieurk.exblog.jp/d2013-07-19/
c.
ウィキの「種蒔く人」の項目でも、
【1923年、関東大震災により廃刊(第二次通巻21冊)したが、終刊号と別冊『種蒔き雑記』で震災時の亀戸事件での朝鮮人・社会主義者への虐殺に強く抗議した。】
と記されており、虐殺は(廃刊の原因ではなく)抗議の対象としてだけ扱われている印象を受けます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A8%AE%E8%92%94 …
d.
以上のことから、
「関東大震災後、弾圧によって一時的に衰退した」ではなく、「関東大震災によって生じた諸事情により一時的に衰退した」とするのが適切ではないか、という気がします。
ただ、これはあくまで『文芸戦線』が刊行されるまでの期間を「一時的衰退」と捉える見方で、「本格的衰退」は、小林多喜二の死を契機として訪れたのであり、それが転向文学萌芽につながったということになるのでしょう。
詳しいご回答、ありがとうございました。いつもお世話になっております(特に日本語に関する質問では、長い議論を交わしたこともありました)。
ご紹介の下記ファイルが参照できない(開けない)ために内容を確認できませんが、【 ‘関東大震災'という出来事とそれに乗じた弾圧の強化とによって『種蒔く人』が余儀なく廃刊に追い込まれた】という形で「弾圧」という言葉も使われているのですね。もっともこの程度では、選択肢2番のような記述はオーバーだと言えるかもしれませんね。
file:///C:/Users/user/Downloads/YP50008000004%20(1).pdf
No.1
- 回答日時:
1.は、「理想主義・個性主義・自由主義」という説明と、「論理的・道義的な生き方」という説明が、同じような内容を指していると考えられるかどうかを判断するだけですね。
どちらも、他人が第三者的に下している評価だと思いますが、その作家たちが「書いたもの」を読んで、本人たちの立場に立ってみて、あなた自身はどのようにお考えですか?
2.は、治安維持法の成立が1925年(大正14年)、小林多喜二の獄死が1933年(昭和8年)です。また、1929年のアメリカ・ウォール街に始まる世界恐慌、その余波を受けた1930~31年の昭和大恐慌(失業者があふれ、「大学は出たけれど」などの流行語ができた)など、そういった歴史とともに判断すればよいでしょう。
いずれも、固定した解説文の「暗記」で考えてはだめです。
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