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なぜ蕎麦なのか?引っ越し蕎麦、その由来に迫る

なぜ蕎麦なのか?引っ越し蕎麦、その由来に迫る4月を目前にした3月は、引っ越しシーズンである。卒業、転勤などで新天地へと向かう人が多いからだ。そんな季節にあわせ「引っ越しの挨拶はした方がいいのか?マナー講師に聞いてみた!」という記事では、引っ越しにまつわる疑問として「挨拶」について解明したが、今回は「引っ越し蕎麦」について紐解いていきたいと思う。なぜ引っ越しで蕎麦なのか? 長野にある老舗蕎麦製粉メーカー、日穀製粉株式会社の土田さんに話を聞いた。

■引っ越し蕎麦は江戸の町人文化が発祥


早速引っ越しになぜ蕎麦なのか、その疑問をストレートにぶつけてみた。

「引っ越し蕎麦は、引っ越しの挨拶のため近所に住む方々へ蕎麦を振舞う風習のことを指します。蕎麦を配るようになったのは江戸時代中期、江戸の町人文化が始まりです。それまでは小豆粥を重箱に入れて配ったり、餅を配ったりしていたようですが、それではちょっとした挨拶なのに丁寧すぎやしないかという思いと、もっと安上がりな挨拶はないかという思惑から、安値の蕎麦に白羽の矢が立ちました。ちなみに、蕎麦を配った場合、小豆粥や餅を配った時のおよそ半分ぐらいの値段で済みます。『近く』の意の『そば』にひっかけ『おそば(蕎麦)に末長く』、また蕎麦の形態から『細く長いお付き合いをお願いします』といった意味合いは後からつけられたようで、本音は安くてうまくて喜ばれるところにありました」(土田さん)

安くて喜ばれるのであれば、蕎麦にしない理由はない。さらに、配る分量にも違いがあったという。

「引っ越し蕎麦は向こう三軒両隣(向かい側の家三軒と両隣の二軒合わせて五軒)と大家さん、管理人さんへ配るもので、向こう三軒両隣には各二食分、大家さんと管理人さんへはそれぞれ五食分、都合二十食分を配ったとされています」(土田さん)

■蕎麦好きの江戸っ子、振る舞いも蕎麦で


江戸時代には、引っ越し蕎麦以外にも「振る舞い蕎麦」なる風習もあったそうだ。

「振る舞い蕎麦は祝い事などに配られる蕎麦のことで、家を新築する際に基礎が出来たら振舞われる『棟上げ蕎麦(建前蕎麦とも)』、新しい出版物が出たときに著者や絵師を招いて蕎麦を振舞う『新板もの祝い蕎麦』、嫁取りをしたときに蕎麦を持参する『結納蕎麦』などがあります。また、芝居で演技やせりふを間違えると楽屋中に蕎麦を振舞う『とちり蕎麦』というような変り種も。蕎麦自体が市民の生活に根差していたことがよくわかります」(土田さん)

よく「東の蕎麦、西のうどん」と言われるが、江戸には本当に蕎麦を食べるという文化が根付いていたようだ。

■引っ越し蕎麦、一般的だったのは大正末頃まで


そんな引っ越し蕎麦であるが、実際にあげたり貰ったりという話を最近聞くことがない。もう廃れてしまったのだろうか?

「引っ越し蕎麦を配る風習は、大正十二年の関東大震災ごろまでは一般的に行われていました。明治時代までは午後のおやつの時刻を見計らって現物で配られましたが、明治末から大正の頃は蕎麦屋が出す『蕎麦切手』を替わりに渡し、好きなときに食べてもらうという方法が考え出されました。そのようにごくごく一般的だった引っ越し蕎麦の風習も、昭和の始めごろには見られなくなりました。時代と共に、好き嫌いのある食品ではなく、あっても困らないタオルや石鹸などに置き換わっていったようです」(土田さん)

江戸は遠くなりにけり、といったところだろうか。引っ越し蕎麦自体はすでに過去の風習のようだが、だからこそ、挨拶に蕎麦を配ると驚かれ、また喜ばれるかもしれない。

●専門家プロフィール:土田 幸一
日穀製粉株式会社 品質保証部。日穀製粉株式会社は創立70周年を超える蕎麦製粉メーカー。長年培ってきた蕎麦の知識と技術を生かし、「蕎麦きり」「蕎麦茶」などを届ける。蕎麦の国「信州」から「美味しい蕎麦」を提供。

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