
■「ふるさと納税」のルール改正点
今回の改正では、経費や地場産品、関連返礼品についてのルールが主な変更点だという。まずは新しい経費のルールから教えてもらった。
「これまでも、『ふるさと納税の募集にかかる費用の総額は、寄附金額の5割以下でなければならない』というルールは存在していましたが、その内訳については曖昧でした。今回の変更で、『寄付後に発生する事務手続きは経費に含むべき』との指針が出ました。具体的には、『寄付金の受領証明書に関する費用』や『ワンストップ特例制度(条件を満たせばふるさと納税の確定申告が不要になる制度)により発生する費用』などです」(飛田さん)
たとえば、現時点で経費の割合が寄付金額の49.9%の返礼品は、新たなルールに沿って
費用を計上すると5割を超える可能性がある。経費削減か寄附金額の値上げを行う必要が生じるのだ。
それでは、地場産品の定義はどう変わるのか。
「地場産品には、『その区域内において返礼品の製造または加工の主要な部分が行われ、相応の付加価値があるものを指す』という定義がありました。それに加え、熟成肉と精米については、『原材料もその区域内で生産されたものでなければならない』というルールが追加されました」(飛田さん)
外国産の肉や県外産の米を区域内で加工していた返礼品は、認められなくなるということだ。
新たな関連返礼品ルールも、聞けば納得の内容だ。
「これまで地場産品の返礼品は、関連する別の返礼品とのセットが認められていました。今回から『地場産品の返礼品に附帯するものであること』、『メインの地場産品の返礼品がセットの価値全体の7割以上であること』が義務付けられました」(飛田さん)
これらは総務省が運用方針を変更した訳ではなく、“明文化されず曖昧になっていた部分を軌道修正するための改正”と捉えてよいとか。今後はより明確に、区域内の産品の魅力を打ち出していく必要がある印象だ。
■改正前に購入すべき返礼品
今回の改正により、10月から寄附金額の値上げや提供終了の可能性がある返礼品を挙げてもらった。
「経費ルールの改正により、高いコスパで大人気の『北海道別海町(べつかいちょう)のいくら』は寄附金額を上げると明記しています」(飛田さん)
地場産品の定義の改正に左右されそうな返礼品もあるとのこと。
「大阪府泉佐野市や福岡県飯塚市は、区域外で生産された肉を市内で熟成させた、大容量でコスパが高い『熟成肉』が大人気の返礼品です。区域内で生産された肉への変更に伴う寄附金額の値上げや、場合によっては提供終了となる可能性があります」(飛田さん)
大阪府熊取町(くまとりちょう)では、人気の“セット返礼品”があるが、関連返礼品のルール改正の影響が懸念される。
「海外ブランド家電製品(電気シェーバーや電動歯ブラシなど)と関連する地場産品(タオル)のセット返礼品などは、新ルールに触れる可能性があり、提供終了になるかもしれません」(飛田さん)
飛田さんならではの予想を教えてくれた。返礼品を選ぶ際の参考にするとよいだろう。
■改正後におすすめの返礼品
ルールの改正により返礼品の値上げが目立つようだが、10月以降お得になる返礼品はあるのだろうか。
「12月に向けて申し込みのピークシーズンとなるため、期間限定の寄附金額の値下げや返礼品の増量が行われる可能性があります」(飛田さん)
来年届く返礼品の先行予約も、10月以降一気に拡充されるそう。
「今年のふるさと納税の限度額内で、来年届く季節のフルーツを予約するのも一案です。また、年末にまとめてふるさと納税を頼むと、“同じ時期に大量に返礼品が届いて保管に困る”という話はよく聞きます。発送月が選べるなど、届く時期を分散させられる返礼品もよいでしょう」(飛田さん)
改正後も、ふるさと納税がお得な制度であることに変わりはないことがわかった。「年末に配達可能なおせちは、自宅以外でも帰省先などに届くようにすると喜ばれそうです」と飛田さん。改正後も上手にふるさと納税制度を活用し、楽しみながら納税してみてはいかがだろうか。
●専門家プロフィール:飛田 啓介
株式会社カリーグズ取締役。ふるさと納税専門家。ファイナンシャルプランナー。ふるさと納税に関する正しくお得な情報を発信するため、「ふるさと納税ガイド」編集長として掲載中の200万件の返礼品情報を元に日々研究中。テレビやラジオ、雑誌などメディアへの出演も多数。
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