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ブルマはなぜ消えたのか?専門家に聞いた

ブルマはなぜ消えたのか?専門家に聞いた「ブルマ」は、昭和世代には懐かしい響きだが、今はブルマを知らない子たちも多いと聞く。その昔、なぜ体操着として採用されたのか、そもそもなぜブルマとよばれるのか。謎はつきない……。そこで『ブルマーの社会史 女子体育へのまなざし』の著者である掛水通子さんに話を聞いてみることにした。

■男女で体操着はおろか授業内容も違った時代


まず、現在の小学生の体操着事情について聞いた。

「一昔前は男子ショートパンツ、女子はブルマというのが一般的でしたが、今は男女ともハーフパンツやクォーターパンツです。一昔前は中学校・高校では授業も男女別々で、女子だけにダンス、男子だけに武道などという差がありました。時を経て、学習指導要領の改定により中高の教育内容は男女同一になり、体育の授業内容も同じになりました。その後選択制の導入も関係し、男女共修が始まりました(実際には今でも、共学校でも男女別修の学校もあります)。このことが、ブルマからハーフパンツへの移行に影響を及ぼしました。男女同じ授業を男女同じ服装で受けることになった結果、ブルマは消滅しました」(掛水さん)

男女平等の時代がブルマを消滅させ、今では言葉自体を知らない子どもがいるのだ。

■ブルマの長い歴史


では、体操着に採用されたのはいつだったのか。その歴史を教えてもらった。
  
「ブルマは、ブルーマーさんの名前に由来します。19世紀半ばの欧米では、コルセットで身体を締め付け、鯨の髭や鋼鉄でできたクリノリン(腰枠)でスカートを広げた服装がはやり、中産階級ばかりでなく下層階級も着用していました。このような服装を改良したのが、アメリカ生まれのアメリア・ジェンクス・ブルーマーで『膝下丈のスカートとゆったりしたトラウザーズ(ズボン)を組み合わせたスタイル』を着用しました。そしてこのスタイルのことを『ブルマ』と呼びました。友人の服装を模したものだったそうですが、当時は不評で、本人も8年ほどで着用をやめています。その後、1880年代にアメリカのサージャントスクールで女子の体操服としてブルマが採用され、ブルマの名前が残ることになりました」(掛水さん)

ブルマの起源はアメリカで、当初はスカートとズボンの組み合わせだった。そのブルマがいつ日本に伝来し、あの形になったのだろう。

「地域や学校にもよりますが、明治30年頃まで、女性は着物の着流しにたすき掛けで体育の授業を受けていました。その後、実践女子学園の創設者でもある下田歌子が考案した女袴に靴、束髪が広まり、少しずつ運動しやすくなりました。この頃、雑誌でアメリカのスカートとズボンの組み合わせであるブルマが紹介され、米国留学帰りの女高師の井口阿くりは『圧迫することなく運動に自由になる』と紹介しましたが定着しませんでした」

だが、ブルマは消えなかった。

「大正初期になると、くくり袴という、中央部分をとめて裾をくくる袴を着用することが増えてきました。そして大正末期頃からようやく洋式運動服となり、スカートのままか、スカートとズボンの組み合わせであるブルマを着用するようになりました。戦後、生理用品、化学繊維の発展とともに、ブルマはちょうちんブルマからぴったりブルマへと、長さや形、布地や下ゴムの有無などモデルチェンジを繰り返しながら学校体育着として生き続けましたが、1992年以降一気に消滅していきました」(掛水さん)

当時の女子らが自ら、ブルマは男性の性的な対象になるから嫌であるという声を上げ、消滅していったという。

■ブルマから読み解く世の中の動き


「ブルマは社会の歴史、特に女性解放の歴史と重なります。コルセットで束縛され、広いスカートで動きにくい身体を解放し、自由で動きやすい服装としてブルマは考案されました。しかし、当時の女性は自立しておらず、男性から見て美しくなければならなかったため、ブルマが受け入れられることはありませんでした。その後、女性も社会進出を果たし、スポーツに参加するようになると、アメリカの学校の体操着として取り入れられ、その頃には、女性も自らが動きやすいことを考えるようになりました。日本でも、はじめはアメリカ同様受け入れられず、消えていきましたが、袴やスカートよりも動きやすいので、改良され続けていきました。月日は流れいつしか男子の性的なまなざしの対象となり、誕生した頃とは異なる女性解放の立場で消えていったのです」(掛水さん)

ブルマの発展、そして消滅には、女性が自分の意見を言えるようになった歴史が密接に絡んでいたのだ。

アメリカで誕生し、日本に伝来したブルマは独自の進化を遂げ、やがて消滅した。ブルマに限らず、ファッションは世相を反映することが多い。ファッションの変化に目を向け、世の中の動きを改めて捉えてみると、意外な発見があり、面白いかもしれない。

なお「教えて!goo」では、「ブルマを採用している学校はもう日本にはない?」ブルマを採用している学校はもう日本にはない?という質問とその回答も紹介中だ。


●資料提供者プロフィール:掛水通子
東京女子体育大学教授・東京女子体育大学女子体育研究所所長・日本スポーツとジェンダー学会会長・体育史学会監事など多岐に渡る活動で知られている。著書に『ブルマーの社会史 女子体育へのまなざし』(高橋一郎・萩原美代子・谷口雅子・掛水通子・角田聡美共著。青弓社) 他。

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