話題の出来事のQ&Aをウォッチ(観察)しながら、コラム形式で皆様に紹介していくサイト

夏服の可愛さをワンランクアップする「オヤ」って? クルド伝統の刺繍アクセサリー

夏服の可愛さをワンランクアップする「オヤ」って? クルド伝統の刺繍アクセサリー世は刺繡ブームだ。シャツやスカート、デニムにカバン、街に出て刺繍アイテムを見ない日はない。いかついトラ刺繍のジャンパーを女の子たちが肩にかけ闊歩していた春が過ぎ、今夏の水着売り場には、ついに刺繍入りの水着がお目見えした。

2017年春夏のトレンドは刺繡なしでは語れない。「教えて!goo」にも「花柄刺繡のスカジャンが欲しい」などの相談が寄せられている。

しかし、シンプルな服がスタンダードとなり、日本人も平均的に10着ほどしか服を持たなくなってきた今日この頃である。一過性かもしれないブームに乗っかって、直接刺繍の縫い付けられたアイテムに手を出すことに躊躇したまま、夏を迎えた人も多いのではないだろうか。

そんな人におすすめの、取り外し可能な刺繍アイテムを紹介したい。中近東地域の伝統手芸「オヤ」のアクセサリーだ。

■クルド人女性が紡ぐ美しい装飾「オヤ」

ネックレスのほかにイヤリングも取り揃えられている。
関東地方にあるアパートの一室。こぼれんばかりの長いまつげを伏せ、女性の細い指が何色もの糸をするすると操る。みるみるうちに色とりどりの花や果実がかたちづくられていく。

「オヤ」とはアナトリア地域(トルコのアジア側)の女性に伝わる伝統的なレース編み。彼女たちの髪を覆うビビットな花柄のスカーフはどれもオヤで縁取られており、女性たちの顔まわりに華やかな立体感を生みだす。

1本の針から生み出される可憐なオヤは、作り手によって仕上がりが変わる一点もの。ざっくりと編まれた大柄のものから精密なものまで、色も大きさもさまざまだ。

「母親は娘が誕生すると、娘の嫁入り道具のためにオヤの刺繍を始める」(クルド女性)

スカーフだけでなく、寝具や家の装飾品などにも刺繍は施され、母の編んでくれたオヤとともに娘たちは新たな生活をスタートさせるという。オヤは母から娘へ受け継がれる絆のようだ。

■オヤはクルド女性の「言葉」

色鮮やかでありながら柔らかな風合いのオヤ。
花や果実など身近な自然をモチーフにつくられるオヤはまた、クルド女性の「言葉」だともいわれる。

女性はトルコ出身のクルド人。国家を持たないクルドの民は、トルコやイラン、シリアなどの山岳地帯で生活し、少数民族として迫害されてきた。その中でも自由な発言が許されなかったクルド女性にとって、オヤは思いを伝える大切な手段だった。

「とても気持ちをこめて刺繍しているので、感情が現れるのは当たり前のこと」
と女性は言葉少なだが、ポジティブな気持ちをピンクの糸に、ネガティブな気持ちを黄色い糸にのせ、オヤは雄弁に語りかけてくる。

色の組み合わせ次第で、細やかな感情を幾通りにも表現できるのだ。時には恋する気持ちをヒヤシンスに、愛への切なさを黄色い水仙にこめて……オヤは女性たちのその時々の「声」を受けて華やかに編み上がっていくのである。

■日本でも苦難抱えるクルドの民

個人販売のお店では、一個1,000円~5,000円ほどで購入することができる。
埼玉県の蕨市に「ワラビスタン」と呼ばれるエリアが誕生したように、日本にもクルド人は数多く移り住んでいる。その多くが難民申請中だ。

実は女性もその一人。家族の生活費の足しとするためにオヤの製作をはじめた。その活動を紹介しているのが、中東を中心に写真を撮り続けているジャーナリストの高橋美香さん。前述したオヤを製作する様子は高橋さんの話から再現したものだ。

「一家は日本に来て長い年月が経つ。難民申請は何度も却下され、とても不安定な身分のまま。申請中は就労が禁じられているが、出来ることを探しながら、ご夫妻ともに懸命な努力をされている」(高橋さん)

クルドの人々は、さまざまな場所で、さまざまな苦難を抱え、今日を暮らしている。

そんな彼女たちの編み出すオヤにはきっと、家族を思う切実であたたかな願いや、どんな苦境をも乗り越えていこうという強い思いが込められているのだろう。

■実用編~オヤで夏服をワンランクアップ!

夏服にマッチするアクセサリー、オヤ。
女性はオヤでピアスやネックレスなどのアクセサリーもつくっている。それがまた、カワイイ。赤×青、黄色×紫、緑×オレンジ…日本人には思いもつかないような配色だ。

目の前にずらりと並べられると、まるで花屋に来ているよう。どれかひとつなんて選べずに、あれもこれもと欲しくなる。が、さて、どんな服に合うものか、筆者も迷った。

しかし、これまた不思議。フェミニンな服にはもちろん、モードやカジュアルなど、まさかと思うジャンルの服にもしっくりと合うのだ。

「購入されるのは支援したい人だけでなく、アクセサリーとしての魅力を感じて買ってくれる人、中には男性もいる」(高橋さん)

ブランドショップなどでは一個1万円~2万円で販売されることもあるオヤだが、個人で販売されているものの場合、一個1,000円~5,000円程度で購入することができる。今回取材させていただいた女性の場合、ネックレス2,000円、ピアス1,500円で販売しているそうだ。

この夏もまだまだ衰えることを知らない刺繡ブーム。オヤのアクセサリーひとつあれば、手持ちの服があっという間にトレンド服に早変わり。大柄の刺繡にはちょっと抵抗が…という人でもオヤなら気軽に取り入れられるはずだ。

お気に入りのオヤを身に着けて街を歩けば、おしゃれなあの子にぐっと差をつけられるかも。この刺繡ブームを機に、あなただけの刺繍アイテムをたのしんでみては?


●専門家プロフィール:高橋美香
写真家。1974年広島生まれ。パレスチナ、エジプト、アフガニスタン、彫刻家・金城実氏や、沖縄、震災被災地の宮古などで「困難」と闘う人々の日常を主なテーマとして撮影、作品を発表。アフガニスタン山の学校支援の会運営委員。著書『パレスチナ・そこにある日常』(未來社)、写真集『ボクラ(Bokra)・明日、パレスチナで』(ビーナイス)

●情報提供:認定NPO法人 難民支援協会 / Japan Association for Refugees
(現在オヤ関連事業は行っておりません)


(オダギリ)

この記事についてどう思う?

みんなの反応

5

BAD

NICE

みんなの反応

25

教えて!goo 教えて!gooで質問する

人気のコンテンツ

更新情報をチェック