■FXの専業トレーダーの割合
まずは、どのくらいのFXトレーダーが専業として取引をしているのかを教えてもらった。
「私たちがリサーチした結果、専業トレーダーの割合は全体の11.8%でした。つまり、ほとんどの人が、何かしらの本業を持ちながら取引をしている兼業トレーダーであるということです」(佐藤さん)
株の場合は専業トレーダーが一定数いるイメージだが、FXの専業トレーダーはそこまで多くないようだ。それはなぜだろうか。
「FXは株に比べるとリスクが高いということが理由として挙げられます。その分リターンも大きくなるのが魅力ではありますが、FXだけで生活していくと考えた場合、リスクマネジメントが難しいのです。株であれば、業種などに分けてポートフォリオを組むことで、ある程度リスクを分散させることができます。もちろん、FXでもリスクを分散させることはできるのですが、株ほど容易ではありません」(佐藤さん)
リスクマネジメントの難しさから、FXの専業トレーダーは少な目とのこと。
■専業トレーダーはそれほど儲かっていない?
では、少数派であるFX専業トレーダーは儲かっているのだろうか。この点についても教えてもらった。
「今回の私たちの調査では、専業トレーダーはそれほど儲かっていないという結論に至りました。トータル収支がプラスのトレーダーは全体の40.9%です。つまり、6割の専業トレーダーは利益が出ていないということです。1,001万円以上の大きな利益を上げているトレーダーは、全体の4.7%に比べ6.8%と高い水準ですが、大きな差ではありません。つまり、FXの専業トレーダーはそれほど儲かっていないのです」(佐藤さん)
ただし、大きな利益の出ているトレーダーは、そもそもアンケートに回答していない可能性もあるかもしれないと佐藤さんは付け加えた。
■専業FXトレーダーのロールモデルとは
このままだと、FXで大金を稼ぐごく一部と思われる専業トレーダーの生態は謎のままになってしまう。そこで、利益を上げている専業トレーダーはどんな人なのか教えてもらった。
「実際に、私が知っているFXトレーダーで利益を上げている人は、順張り、メジャー通貨同士の通貨ペアで、取引は一定タイミングのみピンポイントで行っています。たとえば、トレンド発生の条件が揃った時だけ、レバレッジをある程度かけて、10ロットくらい持って取引されていますね。これ以外にも、テクニックだけに頼らず、株価指数の動向や長期金利の動向、中央銀行の金融政策など相場全体の流れを見て、長期的なシナリオを考えてトレードされる人もいます」(佐藤さん)
毎度の取引に加え、ここぞというときに、取引量を増やすのだ。百戦錬磨のFXトレーダーは、勝負の勘所を熟知しているということなのだろう。多くの口座では、1ロットを10万通貨としているところが多いらしい。
「他には、50万円のヘソクリを元手に、毎月50万円の利益が出るようになったので専業トレーダーに転身したという人もいました。ただしその当時は、まだレバレッジが規制されておらず、200倍、300倍というレバレッジで取引ができた時代でした。そのため、今ほど資金がなくても、ロット数をたくさん持って相場が読めれば、資金効率よく利益を上げられたのです。それに比べ、現在はレバレッジ規制がありますし、専業だと社会的信用もそこまで高くはありません。収支だけでなく、そういった面でもリスキーなため、兼業でFXを続けるという人が多いのでしょう」(佐藤さん)
レバレッジとは、元手の何倍もの取引を行う手法だ。専業FXトレーダーがそれほどいないのは、レバレッジ規制や生活に与えるリスクなどの理由からのようだ。
どうやらFXの専業トレーダーは、甘くない職業のよう。もちろん、FXを専業で行うトレーダーの中には、大きな利益を上げている人がいるのも事実ではあるが……。継続的に稼ぐ自信がない人は、まず兼業ではじめるのが無難だろう。
⇒「FXトレーダーの口座に入っている証拠金を調査」に続く
●専門家プロフィール:佐藤 真奈美
FXに関する疑問や悩みを解決するサイト「ナビナビFX」の編集部員。大学卒業後、FX関連の証券会社に勤務したことが契機となり、金融の世界へ。ベンチャーキャピタルをはじめとした投資会社で経験を積む。現在は、複数のFXメディアサイトに相場予想やFX解説等の記事を寄稿している。