■民生委員とは?
まずは、介護の悩みを相談できる民生委員について教えてもらった。
「民生委員はそれぞれ担当エリアをもち、対象となる世帯へ定期的に訪問します。孤独死を防ぐための安否確認や、高齢者を狙った悪質な詐欺被害の抑止。また、児童虐待の早期発見など、訪問をする中でそうした兆候が見られた場合には、速やかに行政や地域包括支援センターなどの専門機関へつなぎ、解決へ導く役割を担います」(小菅さん)
心強い限りだが、秘密は守ってもらえるのだろうか。
「民生委員には守秘義務があり、相談内容を口外することはありません。実際に相談したい場合は、最寄りの役所や社会福祉協議会に訪ねてみましょう」(小菅さん)
なるほど。不安に思うことがあれば、まずは相談してみると安心だろう。
■地域包括支援センターとは?
次に、地域包括支援センターについて尋ねた。
「地域包括支援センターとは、高齢者の健康・福祉の増進や保健・医療の向上を目的とした総合相談窓口です。市町村が主体となり中学校区に一カ所の割合で設置され、高齢者およびその家族の相談に応じます」(小菅さん)
地域包括支援センターには大きく4つの機能があるそうだ。
「まず要介護状態にならないために、高齢者の健康維持や介護サービスの利用にあたり必要な支援などを行う『介護予防マネジメント』があり、介護認定の申請も受けつけています。次に、高齢者自身とその家族も相談できる『総合相談・支援』機能もあります。事前に連絡しておけば、センター職員が自宅に訪れ、相談に応じてくれます。また、高齢者の虐待や詐欺被害を防止する『権利養護』機能もあり、認知症を抱える高齢者のご家族へ、成年後見制度の紹介支援も行っています。さらに、高齢者が住み慣れた地域で健やかな生活を送ることができるように、地域のケアマネジャーや医療従事者との連携を図り、住みやすい地域づくりの体制を構築する『包括的・継続的マネジメント支援』機能もあります」(小菅さん)
地域包括支援センターには、保健・医療が専門の保健師、社会福祉制度に精通した社会福祉士、介護が専門の主任ケアマネジャーが配置され、相互に連携しながら相談者を支援してくれるという。相談費用は発生しないとのこと。
■サービスを受けるための手続き方法
最後に、介護サービスを受けるために必要な手続きについて教えてもらった。
「介護保険サービスは、ホームヘルパーが生活支援や身体介助を行う『訪問介護』や、通いで機能訓練やレクリエーション、入浴といったサービスが受けられる『デイサービス』が代表的です。これらを利用するには『要介護認定』が必要になります」(小菅さん)
実際のサービスを利用するまでには、いくつかのステップを踏む必要があるという。
「まず、『要介護認定の申請』のため、最寄りの役所の窓口(介護保険課、高齢福祉課など)、または地域包括支援センターへ、要介護認定の申請を行います。申請には費用はかかりません。申請後、訪問調査員が高齢者のご家庭を訪問し、心身の状態や日常動作などを確認します。あわせて『主治医の意見書』を提出し、コンピューターによる一次判定、介護認定審査会による二次判定を経て要介護度が確定し郵送で通知されます」(小菅さん)
申請からここまで約一カ月かかる。
「要介護度が確定したらケアマネジャーと契約し、どのような介護サービスが必要かケアプラン(介護サービス計画)を作成します。それを基に、訪問介護事業所やデイサービス事業者と契約し、サービス利用する流れです」(小菅さん)
小菅さんは「病気やケガなどをきっかけに、介護は突然はじまります。家族が介護を必要とする状態になったとしても、そのすべてをご家族が背負うことはありません。公的な介護保険サービスを上手に活用し、介護負担を軽減しましょう」と付け加えてくれた。
超高齢化社会の日本に住むわれわれにとって、介護は決して人ごとではない。今は当事者でなくとも、基本的な制度の知識を身に付けておきたいところだ。
●専門家プロフィール:小菅秀樹(こすげ ひでき)
日本最大級の老人ホーム・介護施設の検索サイト「LIFULL介護」編集長。大手老人ホーム紹介センター主任相談員、入居相談コールセンターの立ち上げ、マネジャーを経て現職。LIFULL介護は有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などのシニア向け住まい検索サービス。全国38,000件以上の物件情報を掲載し、エリアや費用などの希望条件で絞り込み、見学や資料請求の申し込みや電話問い合わせが可能。