■「騒音注意」は全室に届く?
普段から騒音に注意し善良に暮らしている入居者にも、騒音に関する注意書面が届くことがあるのか。
「管理会社は、初期段階の騒音クレーム対応であれば、入居者全員に向けた文章で注意書面を作成し、全室のポストに投函するのが一般的です」(田中さん)
その理由は、主に2つあるとか。
「例えば、203号室に住んでいて上の階の騒音がうるさいと感じたら、多くの入居者は303号室が騒音の発生源と決めつけて管理会社にクレームの連絡を入れてしまいます。しかし実際は303号室ではなく、別の部屋の生活音であるということがよくあるのです。そのため管理会社は、まず入居者全員に向けて注意書面を投函します」(田中さん)
真上の部屋の入居者が、騒音の発生源とは限らないということだ。もうひとつの理由はどうだろう。
「管理会社が対応を適切に行っているということを、クレーム発信者ご本人にも知ってもらうため、同様の注意書面を投函します」(田中さん)
書面のポスト投函では、肝心の騒音発生の当事者に意図が伝わらず、騒音が改善されないといったことはないのか。
「そのような場合、管理会社は第二段階として、騒音発生源の可能性がある住戸に絞って個別に連絡をします」(田中さん)
最初から騒音の発生源の可能性がある住戸に絞って注意書面を投函すると、クレームの発信元が特定されやすくなるという。そのため、最初は全室に向け発信し、様子を見ながらターゲットを絞り込んでいくのだ。
■書面が届いた場合の適切な対処法
突然、注意書面がポストに届いたら誰でも驚くだろう。心当たりの有無により、適切な対処法は異なるという。
「入居者全員に向けた文章であっても『もしかして自分のことでは?』と考えて、ご自身が発生する生活音について一度見直してみるべきだと思います」(田中さん)
普段から生活を振り返ってみることが大切なのだ。
「騒音を出しているという心当たりがなければ、あえて管理会社に連絡する必要はなく、今まで通り騒音に注意しながら生活を続けるとよいでしょう。ご自身で気づいていない生活音が原因でクレームが入っているのであれば、管理会社より直接連絡が入るはずです」(田中さん)
心当たりがある場合は、どうすべきか。
「管理会社に連絡をして、『クレームが入った騒音の発生時期や内容』について確認し、生活を改善する必要があります」(田中さん)
自分が発生源だとわかったら、以後同じ騒音を発生しないよう気をつけなければならない。
「騒音に対しての受忍限度は人によって異なり、共同住宅では知らず知らずのうちに他の入居者に迷惑をかけていることがあるので注意が必要です」(田中さん)
注意書面が届いてから慌てるのではなく、常日頃から自分の生活音に注意したい。普段は顔を合わさなくても、そこには生活者がいる。その人の生活をイメージし尊重することが、共同住宅で暮らす上でのマナーといえるのかもしれない。
●専門家プロフィール:田中 勲(仲介手数料無料ゼロシステムズ)
著書「こんな建売住宅は買うな」を幻冬舎より出版。不動産の専門家としてテレビやラジオ、YouTubeに出演。田中住宅診断事務所、仲介手数料無料ゼロシステムズ、レジデンシャル不動産法人(株)の代表取締役。宅建士など不動産関連の資格を複数取得。
画像提供:ピクスタ