■相手が上司の場合
笹木さんによると、「仕事ができないのに、できると思っている人は、地位や年齢問わず意外に多い」とのこと。そんな相手が自分の上司だったら対処法に悩みそうだ。
「そもそも上司の役割は、限られた予算や人材を活用し、チームで行う仕事の優先順序を決め、無駄を排し、チームとしてのベストパフォーマンスを図ることです。それらを成し遂げられない上司は、仕事ができないと思われても仕方ありません」(笹木さん)
そんな上司が自分は仕事ができると思っている場合、どうしたらよいだろうか。
「解決策は、あなたと上司との『信頼関係』が確立されているか否かがポイントになるでしょう。チームの上司として力量不足な点があっても、信頼関係が確立されていれば、あなたから問題点を指摘し、上司に受け入れてもらうことができるかもしれません。それに反し、上司との信頼関係が築けていなければ、意見を言うこともできず会社の先行きも厳しくなるでしょう」(笹木さん)
相手が上司でも、風通しのよい関係を築いていれば、指摘や共有、相談ができ、改善の可能性も出てくる。改善することができれば、信頼関係はますます強固になるだろう。
■相手が同僚の場合
同僚の場合は、関係性により対処法に迷いそうだが……。
「同僚の場合、中堅社員であればなおさら、自分は仕事ができると思い込む傾向が高いです。同僚をライバル視していることも少なくないので、意見を聞きたがらないかもしれません。そんな同僚とうまく付き合うためには、相手の立場をよく理解し、会社にとってマイナスであると確信できれば、私情を捨て率直に是正を求めるとよいでしょう」(笹木さん)
同期入社など、相手との関係性が深いほど、私情が入り意見しづらいかもしれない。だが、「逆のケースも有り得るので、その際は謙虚に聞くことを心しておきましょう」と笹木さん。対等な関係の同僚だからこそ、お互いを高め合える関係でいたいものだ。
■相手が部下の場合
部下が勘違いしている場合は、問題点について指摘しやすそうだがどうだろう。
「社会に出て間もない部下などは、時間感覚に乏しく、依頼された仕事の優先順序を付けらないあまりダラダラと試行錯誤し、残業までしておきながら、仕事をしたと自己満足に浸ってしまったりします。仕事は会社からお給料を頂きながら、決められた時間内で完結する事が原則です。そのような部下には時間を大切にし、広い視野に立って目的意識を持ち、仕事に励む人こそが『できる人』であることを教えてあげたいですね」(笹木さん)
だが、部下に指摘する前には、まず長所を認めてあげることが大切なのだそうだ。
「エネルギッシュで発想力に富み将来の可能性もある年若い部下の場合は、長所を認めた上で、問題点を具体的に辛抱強く説明しましょう。そして、ミスなく予定時間内に仕事を終えることができたら、仕事ができる人としてきちんと評価してあげましょう」(笹木さん)
部下は、「褒めて伸ばす」作戦がよさそうである。どんな相手でも、問題点を指摘することは気を遣うが、「人の振り見て我が振り直せ」という言葉があるように自分自身も邁進する必要があるだろう。初心を失わず、互いが足を引っ張りあうことなく、一丸となって「チーム力の底上げ」を目指せるようになりたいものである。
●専門家プロフィール:笹木 正明
会社勤務しつつ、転職相談業務に従事。57歳でリストラ退職後は、放送大学大学院修士全科生として入学し、政策経営プログラムを専攻。卒業後は人材紹介会社に勤務。現在は、キャリアカウンセリングや転職サポート、学習相談などを行う。