■お腹の調子が悪いといっても原因は様々
鈴木先生は「お腹の調子が悪い」といってもその原因は様々であることをまず指摘する。
「お腹が痛くなったり、便秘、下痢、お腹が張ったりすることがあるときに『お腹の調子が悪い』と表現されます。下痢と嘔吐などの症状が重なったり、下痢と便秘が交互におこる症状を呈することもあります。『お腹の調子が悪い』原因は、胃腸炎などの消化器疾患などが多いですが、心筋梗塞などの心疾患、甲状腺機能低下症などの内分泌疾患、うつ病などの精神疾患など多岐にわたります」(鈴木先生)
なるほど。お腹の調子が悪いだけでは消化器疾患と断定できないようだ。
「個々の疾患により治療はさまざまであるため、ひどくお腹の調子が悪かったり、症状が長引く場合は医療機関の受診をおすすめします。代表的な消化器疾患による『お腹の調子が悪い』場合は、消化管に刺激を与えるのを避けるために絶食、または消化のよいものを少量たべるようにしましょう」(鈴木先生)
お腹の調子が悪い場合、自己判断せず、まずは何が原因なのか特定するために医療機関の受診が第一だ。
■吐いてしまう時の原因と対策
食べたくても吐いてしまう。そんなときは、やはり何も食べなくてよいのだろうか。
「嘔吐の原因は様々ですが、消化管などの異常により迷走神経を経て嘔吐中枢を刺激するために誘引される嘔吐の場合は、何らかの消化器疾患の可能性が疑われます。その場合の嘔吐は食事がさらに胃腸に入ってくるものを体が拒否をする防御反応と考えられます。何らかの消化器疾患により、食べたくても吐いてしまう場合は、病態が改善するまでは食事は控えておくことをおすすめします」(鈴木先生)
まずは体力がある初期段階で、やはり医療機関で原因の特定をしておきたいところだ。
「もし長く続く場合は、長期間による絶食は体力を消耗してしまうため、可能な範囲でスポーツ飲料などで水分を摂取し、脱水症にならないようにしましょう。何日も食事できない場合は入院して原因精査、点滴治療などが必要となります」(鈴木先生)
嘔吐などは脱水症状を招く可能性がある。冷蔵庫に水分補給に適切なドリンクを常備しておこう。
■おなかの健康には腸内フローラのバランスが重要
ほかに対策があるのか引き続き聞いてみた。
「感染性胃腸炎、食べすぎ、冷たいものでお腹をこわしたことが原因による下痢症状には、症状が改善するまで少しの期間食事を控えたり、水分や電解質を適度に摂取することが大切です。おかゆやうどんなど食物繊維や脂肪が少ない食事を、症状が悪くならない範囲で少量摂取することをおすすめします。冬季はノロウイルスなどのウイルス性感染性胃腸炎が多く、予防には日頃から石鹸を使用し流水での手洗いが効果的です。おなかの健康には腸内フローラのバランスが重要であり、ヨーグルトなど整腸作用をもつ食品の摂取もポイントです」(鈴木先生)
普段から健康のために食物繊維を摂っている人も多いと思う。しかし、お腹の調子が悪いときに、ごぼうやさつまいもなどの不溶性食物繊維を摂るとお腹に刺激を与えてしまうので気をつけよう。
冬場はお腹に影響のでる病気も流行しやすい。日頃の手洗いや整腸作用のあるヨーグルトなどでお腹を壊さないように予防を心がけよう。
●専門家プロフィール:鈴木飛鳥
医療法人長岡内科医院院長 医学博士。生活習慣病、消化器疾患の治療を得意分野とする。安心、安全で質の高い医療を提供し、地域医療に貢献することに力を注いでいる。