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賃貸の一室が「ゴミ部屋」に! 退去させることは出来る? 弁護士が解説

賃貸の一室が「ゴミ部屋」に! 退去させることは出来る? 弁護士が解説定期的にワイドショーを騒がす、いわゆるゴミ屋敷問題。一戸建ての家主が「これは宝物だ」と行政や近隣住民と争っている様子が印象的だが、借家や賃貸でも同様の事態は起きるようだ。「教えて!goo」にも、「借家の中がゴミ屋敷になっている」という質問が投稿されている。「持ち家ではなく、大家さんがいるなら簡単に追い出せるのでは?」と思ってしまうが、現実はなかなかシビアな模様。弁護士に聞いてみた。

■賃料を滞納していないなら、迷惑をかけていられても追い出せない!?


お話を伺ったのは、不動産会社に勤務していた経歴を持つ弁護士の瀬戸仲男先生。

「部屋を貸すときや借りるとき、貸す人(貸主)と借りる人(借主)は『建物賃貸借契約』を結びます。契約書の中に盛り込まれている事柄には拘束力が生じ、違反すれば退去させる正当な理由となります。契約上、借主にとって最も重要なのは、『賃料を支払う義務』。明確な決まりはありませんが、大体3ヵ月~5ヵ月程度賃料の滞納があれば、退去させられる可能性が高いでしょう」(瀬戸先生)

ゴミ部屋の住人と貸主が揉めた場合、まずは建物賃貸借契約に、住人がゴミを溜め込んだ場合についての記載が確認される。しかし、借主が負う義務のうち、8~9割の重要性を占めるのは「賃料支払い義務」なのだそうだ。つまり、賃料を支払っている、または支払う意思があると見なされさえすれば、簡単には追い出せないことになる。

「ゴミ部屋の場合、問題として考えられるのは、悪臭と害虫の発生です。一軒家の場合は、悪臭や害虫の問題の他に敷地の前の道路通路を塞いでおり、通行の妨げになるといった問題も考えられます。しかし、この借主が賃料を支払っているのであれば、それだけで追い出すことは難しいです。裁判になった場合、どのくらい近隣住民の迷惑になっているかどうかが争点となるでしょう」(瀬戸先生)

貸主の立場で考えれば、時間も費用もかかる裁判にまで発展させることは避けたいもの。近隣住民に迷惑をかけているのが明白であるにも関わらず、なぜ強制的に退去させることができないのだろう?

■借主が持つ権利とは?


借主がその建物に居住することができる権利を「借家権」といい、主に「借地借家法」により保護されている。

「借地借家法や労働法などは、法律のなかで『社会法』(社会政策立法)に分類されます。社会法は、雇用者と労働者なら労働者、貸主と借主なら借主と、弱い立場にある方の権利を保護する法律です。借主を簡単に追い出すことができてしまうと、借主が居住する場所が無くなってしまいます。そのため、借主を保護す助ける法律が定められているのです」(瀬戸先生)

例たとえ近くに実家や親族の家があったとしても、今の物件が「生活の本拠」である以上、保護の対象となるという。ちなみに持ち家がゴミ屋敷化した場合は、家主の「所有権・財産権」が保護される。傍から見ればゴミでも、本人が違うと言い張れば「財産」として守られるため、持ち家の場合も解決が困難なのだ。

■ゴミ屋敷問題解決には、“立ち退き料”を支払って早く出ていってもらうのも一つの方法うしかない?


では、貸主は泣き寝入りするしかないのだろうか。

「まず、貸主は建物賃貸借契約書に禁止事項をきちんと明記しておくことです。とはいえ、これまで述べたように、借主が賃料を支払っているのであれば、強制的に退去させることは簡単ではありません。行政に相談するした場合、まず担当者が調査し、自分で清掃するよう借主に警告し、それでも聞かなかったら命令、最終的に代執行という手段が取られます。行政代執行も裁判も、最低半年以上はかかります。現実的な解決策としては、引越し代を支払うなどして、出て行ってもらった方が結果的に時間も費用も節約できることもあります。盗人に追い銭のようですが、居座られては大変ですから。」(瀬戸先生)

一方、マンションやアパートの隣室がゴミ部屋化してしまったという一般入居者も、冷静に対処することが大切だ。

「争うのであれば、害虫の写真を記録したり、サンプルとして捕まえておいたりして、因果関係を証明することが大切です。この場合も自分が出て行った方が早いことが多いですが、部屋を汚したのは貸主ではないため、貸主に引越し代金を請求できるかどうかは微妙なところですね」(瀬戸先生)

被害を受けた立場からすれば非常に悔しいが、裁判にかかる費用や精神的負担を考えると、早急に縁を切るのが得策なのかもしれない。とはいえ、退去させたゴミ部屋の住人が、引越し先でも同様のトラブルを起こす可能性は高い。根本的な問題の解決に向けた取り組みが早急に求められている。

●専門家プロフィール:瀬戸 仲男
アルティ法律事務所代表弁護士。大学卒業後、不動産会社営業勤務。弁護士に転身後、不動産・建築・相続その他様々な案件に精力的に取り組む。我が日本国の歴史・伝統・文化をこよなく愛する下町生まれの江戸っ子。

(酒井理恵)
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