教えて!gooに「朝新聞配達をしていて、最近追加されたお寺に配達し始めたのですが、とても空気が冷たく怖いです。」という投稿が掲載されている。質問者はお寺が不気味で怖いと話しているが、それは劣化したお地蔵様も同様で、傷でもついていようものなら尚更だ。しかし、実は傷ついたお地蔵様ほど歴史が古く、その分ご利益があると言われている。
■品川区戸越6丁目の子育て地蔵はかつて首がなかった
今回は傷ついたお地蔵様について、なぜそうなったのか、またどんなご利益があるのか、心に残る家族葬という葬儀サービスを全国で展開している葬儀アドバイザーに話を聞いてきた。
「東京都品川区戸越6丁目に小さな御堂に納められた子育地蔵尊があるのですが、以前は首なし地蔵だったそうです」(葬儀アドバイザー)
首がないお地蔵様。怖すぎる。ご利益どころか祟られそうだ。
「仰るとおりお地蔵様を傷つけようものなら祟られそうな気がしますが、当時の首なし地蔵は首を転がしたり、胴体を突き倒して、願いが叶ったら元に戻すという習わしだったそうです。ただいつの間にか首がなくなってしまい、見かねた目黒の植木職人さんが首をつけ、首なし地蔵から子育て地蔵に呼び名が改められて、今では地域の方々の崇敬を集めているそうです」(葬儀アドバイザー)
このお地蔵様は江戸末期に建てられたという。再建されて現在まで残っているということは、その分きっと多くの人の助けになっただろう。
■福岡県北九州市若松区・高塔山山頂の「河童封じの地蔵尊」には釘が刺さっている
「福岡県北九州市若松区・高塔山山頂の御堂に『河童封じの地蔵尊』が安置されているのですが、このお地蔵様の背中には、釘が刺さっています」(葬儀アドバイザー)
首なしの次は釘刺し。しかも首なし地蔵とは違い、再建や改修などされず現在進行形で釘が刺さっているという。
「明治・大正期、修多羅(すたら)村(現在の北九州市若松区の東部)に伝わっていたという伝説によると、妖怪の河童が庄屋の馬を池に引きずり込もうとしたら、逆に庄屋に捕まったことが発端となっているそうです。庄屋は高塔山のお地蔵様に釘を打ち、その釘が刺さっているあいだ、いたずらしないなら許すと河童に迫り約束させ、その結果、村にいたずらや水死がなくなったそうです」(葬儀アドバイザー)
ちなみに河童封じの地蔵尊やそこに残る伝説は、若松生まれの作家・火野葦平の小説『石と釘』で一躍有名となったので、興味がある人は是非ご覧になってみてはどうだろうか。
■お地蔵様といえば自己犠牲
昨年7月、記録的豪雨に見舞われた熊本県相良村で、自らの危険を顧みず各家庭に避難を呼びかけて回った同村在住の西村俊則さんに村から感謝状が贈られた。
西村さんは玄関の呼び鈴を押しても出ない一人暮らしの高齢女性に、隣の家から電話をかけてもらい、避難を促した。また避難先に男性1人が来ていなかったことを確認すると、すぐにその男性の携帯に電話をかけた。すると自宅で首まで水につかった状態で逃げ遅れていることがわかった。西村さんはその男性を電話で励まし続け、消防団が救助するまでの支援に一役買った。「西村さんの動きがなければ、犠牲者が出ていたかもしれない」と吉松啓一村長は話した。
お地蔵様は人の願いを叶えるだけでなく、仏教で言う「捨身飼虎(しゃしんしこ)」と呼ばれる、自らの身を呈して他人を助ける自己犠牲的なありようを持ちあわせている。首なし地蔵や河童封じの地蔵尊ほどの自己犠牲まではいかなくとも、私たちの身の回りにもささやかな捨身飼虎はありふれているはずだ。こんなご時世だからこそ、今一度自分に何ができるのかを見つめ直してみるのもいいかもしれない。
専門家プロフィール:心に残る家族葬 葬儀アドバイザー
火葬料も含まれた追加費用のかからない格安な家族葬を税込み14万3000円から全国で執り行っている。24時間365日受け付けており、寺院の手配や葬儀後の各種手続きなどのアフタフォローにも対応。
記事提供:ライター o4o7/株式会社MeLMAX
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