
■風呂なし物件の意外なメリット
風呂なし物件はどのようなことから人気なのだろうか。
「近年都市部の若者世代を中心に、駅近くの風呂なし物件は確かに人気があります。その理由としては、築年数が経っていても、交通アクセスの便利さや銭湯など近くの公共施設が利用しやすいことが挙げられます。また、賃料が相対的に安いことも理由です」(田中さん)
家賃が安いのは確かに大きい。他にもメリットはあるだろうか。
「部屋のスペースが広く確保できるという点も魅力です。更に風呂の掃除やメンテナンスをする必要がないため、手間が省ける利点もあります」(田中さん)
その昔は風呂なし物件でもそれほどの不自由を感じることなく暮せていたかもしれないが、現代でも同じように暮らせるのだろうか。
「通うはずの銭湯が閉店したりすると不便を感じるかもしれません。ですが最近は、コインシャワーを完備したネットカフェが増えてきたので、必要に応じてそれらを利用することもできます」(田中さん)
ジム通いをしている人などは、家で風呂に入る頻度が低いかもしれない。ライフスタイルによっては、風呂の重要性が低いこともあるようだ。
■風呂なし物件に住む際の注意点
実際に風呂なし物件に住む際の注意点を聞いてみた。
「古い風呂なし物件の多くで、室内に洗濯機のスペースが設けられていません。しかしベランダや共用廊下に設置スペースを設け、工夫されている場合があります。近年になって建築された風呂なし物件は、単に浴槽がないだけでシャワールームや洗濯機スペースなどを備えたものがあります」(田中さん)
一人で住むのであれば、浴槽がなくてもそれほど不自由はないだろう。
「風呂なし物件は、そもそも狭い物件が多いため、二人以上で居住するシェアルームには適していません。また、通常のワンルームの物件と同様に、規約で二人以上の居住を禁止している場合があります」(田中さん)
家族を持つ以前の若い世代に人気なのだろうか。
「未婚の独り暮らし世帯が多い若い世代が集まる傾向にあります。中年以降の年齢層でも、独り暮らしをしている人の中には、老後に備えて賃料の安い物件を選択する人が増えてきています」(田中さん)
ライフスタイルや人生設計により、風呂なし物件が選ばれていることが分かった。銭湯やコインシャワーに別途お金がかかることも考慮し、賢く風呂なし物件を候補にするとよいだろう。
●専門家プロフィール:田中勲(ゼロシステムズ)
レジデンシャル不動産法人(株)代表取締役。宅建士などの不動産関連の資格を複数取得。仲介手数料と建物診断が無料のゼロシステムズを運営。不動産の専門家としてYouTubeチャンネル「田中勲の不動産の知恵袋」を運営しながらテレビ、ラジオにも出演。著書に「こんな建売住宅は買うな」幻冬舎がある。
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