■メインキャストが意気込みを語る
TVアニメ化もされた人気マンガの舞台化作品ということもあり、多くの報道陣が詰めかけたこの日の囲み取材。会場ではメインキャストの和田雅成さん、七木奏音さん、君沢ユウキさん、馬場良馬さんが登壇し、それぞれ公演にかける意気込みを語った。
体内に侵入した細菌やウイルスを排除する白血球(好中球)役の和田さんは「今日、ついに初日を迎えます。お客様と一緒にこの『はたらく細胞』の世界を作り上げたいと思います」と挨拶。自身が演じる白血球について「頼もしい一面もありますが、天然さもある。そんなかわいさを出せるように頑張りたい」と語った。
酸素を体の隅々の細胞に届け、二酸化炭素を肺に運ぶ赤血球役の七木さんは「稽古中から早くみんなを見てほしかったので、すごく楽しみです。私が演じる赤血球は、すぐ迷子になるキャラクターなのですが、そのおかしな感じを精一杯出せたらいいなと思っています」と初々しくコメント。
キラーT細胞役の君沢さんは「細菌を発見し次第、2秒で殺すという役です。とにかく戦います。演出や殺陣師の方がこだわって作ってくださったアクションシーンがいっぱいあって、いろんな種類の戦いを見ていただけると思います」と見どころを紹介した。
馬場さんは、「(肺炎などを引き起こす呼吸器病原性菌の)肺炎球菌になりました馬場良馬です。違う仕事で1年間ヒーローをやっていた時の知識を存分に生かして、今回の肺炎球菌というかませ犬を頑張っていきたいと思います」と自己紹介して会場を沸かせたあと、「悪役ですが、悪いながらに皆さんの空気が温まるような笑いを提供していけるよう頑張っていますので、そこを見ていただければ」と語った。
衣装について、和田さんが「白いなあと思いました(笑)」と感想を述べると、七木さんが「私は赤いなあという感じで(笑)」、君沢さんが「僕は黒いなあと(笑)」とコントのように続けて会場は大爆笑。ちなみに馬場さんは「僕ら細菌チームの衣装は、この舞台ではいちばんお金がかかっています。それに見合ったお芝居で還元できれば」と語っていたが、その言葉通りの凝った衣装で原作やアニメに出てくる肺炎球菌のビジュアルが再現されていた。
■ステージと客席が一体になって楽しめる作品
囲み取材に引き続き、ゲネプロが行われた。本作で描かれるのは37兆個もの細胞があると言われる人間の体内。新人の赤血球は、酸素を体の隅々の細胞に送り届ける途中、体内に侵入してきた肺炎球菌と遭遇する。白血球の助けでその魔の手から間一髪で逃れた赤血球は、次の荷物を届けるため肺に向かうが、体内は入り組んだ迷路のようでたちまち道に迷ってしまう。困り果てた赤血球は、近くの部屋にいる人に道を聞こうと扉を開けるが、そこにいたのは先ほど彼女に襲いかかろうとした肺炎球菌だった……。
劇中には白血球や赤血球、キラーT細胞、肺炎球菌のほかにも、一般細胞やヘルパーT細胞、NK細胞、ナイーブT細胞、マクロファージなどが登場するが、衣装はもちろん、小道具から髪の毛のハネ具合まで原作やアニメのビジュアルにかなり忠実。白血球の頭についているレセプター(細菌などをレーダーのように捕捉するもの)や、子役たちが演じる血小板のかわいらしさ、化膿レンサ球菌や黄色ブドウ球菌などのグロテスクさなどもしっかり再現されている。
映像やプロジェクションマッピングなども効果的に使われており、演者と観客が一体になって楽しめる仕掛けも用意されているので、原作・アニメファンなら、まさに「はたらく細胞」の世界に入り込んだ気分を味わえる。
原作やアニメを知らない人でも、演者たちのコミカルでドラマチックな演技を観ているうちに、それぞれの細胞の役割などが自然に頭の中に入ってくるストーリーになっているのでご安心を。インフルエンザに感染したり、すり傷ができたときに体内でどんなことが起こっているのかを、楽しみながら学ぶことができるはず。もっとも、そんな教育的な要素を抜きにしても抜群におもしろいのが「はたらく細胞」の凄さ。それは本作でもしっかり継承されており、2時間という公演時間があっという間だった。
●「体内活劇『はたらく細胞』」公式ページ
(c) 清水茜/講談社・体内活劇「はたらく細胞」プロジェクト2018