■そもそも往診って?
まずは、診療の種類を整理しよう。私たちが患者として医師に治療を受ける場合、主に外来診療、入院診療、在宅診療に分けられる。入院するほどでもないが具合が悪いというときに病院へ行き、治療を受けるのが外来診療だ。高齢者や足腰の悪い人など、病院に通うことが困難な人は、自宅に医師を呼んで治療を受ける。これを在宅診療といい、往診と訪問診療に分けられる。
「往診は、患者のいる家の求めに応じて行うものです。通常は外来もしくは訪問診療を利用している患者が、定期訪問がなく具合の悪い日に依頼します」
と教えてくれたのは、さがみはらファミリークリニック、愛心ケアクリニックの顧問、本田瑞穂さん。訪問診療はあらかじめ訪問のスケジュールを組むが、医師が訪問する予定のない日に突然具合が悪くなったときに依頼するのが往診だ。
■誰でも往診してもらえるの?
往診は基本的に通院が困難な人が対象だが、緊急性が高い場合は誰でも利用できる。
「ただし、一刻を争う場合は迷わず救急車を呼んでください。例えば、突然のしびれや半身の麻痺、大きな怪我や大量の出血、広範囲の火傷、痙攣が続く、意識障害、急に倒れた、胸や腹部の激しい痛みや吐血・下血、突然の激しい頭痛、呼吸困難などです。訪問診療を受けている利用者でも、緊急性が高いと判断したときは迷わず救急車を要請してください。」(本田さん)
往診の場合、医師の都合や交通事情などで到着が遅れる可能性があるので、命の危険が迫っている場合は救急車を呼ぼう。
「通院歴がなくて突然の重い病気やケガをした人に、応急手当てを行い適切な医療機関に搬送するのが救急隊の役目です。しかし、症状の軽い方が安易な救急要請をすることは望ましくありません」(本田さん)
つまり、「急に具合が悪くなり、病院には行けないが救急車を呼ぶほどではない」という場合に利用できるのが往診、という位置づけのようだ。
■気になる治療費
では、往診を受けるとどのくらいの金額がかかるのだろうか?
「往診料は720点(1点=10円)です。他に診察料がかかり、初診料もしくは再診料が算定されます。また、時間外や休日など、往診の時間帯によって、往診料と診察料にはそれぞれ加算があります」(本田さん)
往診料だけでも7,200円だが、保険が適用されるので3割負担の人だと2,160円。初診料は282点なので2,820円となり、3割負担で850円。合計3,010円程度が最低でもかかると思っておくと良いだろう。検査や薬の処方にかかるお金は別途なので、詳しく知りたい人は病院に直接尋ねると良いが、金額よりも大切なのは、往診に対応してくれる病院が近くにあるかどうか。
「もしも」の時に備えて、調べておくと良いだろう。
(酒井理恵)