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マンションの修繕積立金値上がりは仕方ない?今後の方向性やマンション選びのポイント

マンションの修繕積立金値上がりは仕方ない?今後の方向性やマンション選びのポイント修繕積立金とは、マンションの将来的なメンテナンスに備えて住人から集められる資金のこと。長期的な維持管理には不可欠だが、近年この修繕積立金が不足し、値上げをするマンションが少なくないという。家計に影響を及ぼし困惑する住人もいるようで、「教えて!goo」にも「マンションの修繕積立金の値上げは仕方がないですか?」と質問が寄せられていた。そこで今回は、不動産の専門家で顧客に寄り添った不動産取引のサポートを行う田中勲さんに、修繕積立金不足を防ぐためのマンション側の工夫に加え、今後のマンション販売の方向性やマンション選びのポイントについて話を聞いた。

■修繕積立金不足を防ぐマンション運営側の工夫


2018年の国土交通省の調査によると、修繕積立金が不足しているマンションの割合は34.8%にのぼるそう。なぜこのような事態が起きているのか。

「修繕積立金の徴収方法が大きな要因です。徴収方法は大きく2つに分類されます。新築当初は修繕積立金を低く抑え、5年後や10年後などに段階的に値上げをする『段階増額積立方式』と、長期修繕計画をもとに必要な修繕費用の総額を算出し、新築当初から一定額を徴収する『均等積立方式』です。多くの新築マンションで前者を採用し、不足が生じています」(田中さん)

不足が生じる具体的な理由とは?

「段階増額積立方式による値上げや建築原価の高騰により、新築当初は低く抑えられていた修繕積立金が徐々に増額されると、売却を検討する所有者が増える場合があります。修繕積立金を増額する際には管理組合の総会で一定数の賛成票が必要ですが、所有者の高齢化が進むと合意を得ることが困難になりがちです」(田中さん)

支払う住人が減少したり値上げが困難になったりと、様々な理由が重なる。そのような状況下では、マンション全体で積立額を補充する工夫も必要になるとか。

「国土交通省が創設した『マンションの長寿命化促進税制』というものがあります。その対象条件をクリアし長寿命化工事を実施すると、翌年度に課される建物部分の固定資産税が6分の1から2分の1の範囲内で減額されます」(田中さん)

補助金や助成金の活用も有効のようだ。

「地方自治体や国などの補助金・助成金を利用し、電気や水道などのエネルギー効率が高い設備へ改修することで、共用部分のランニングコストを抑えることができます」(田中さん)

共有部分を活用し利益を得るのも一案とか。

「需要の低い駐車場を外部に賃貸したり、屋上や外壁などに広告看板を設置するのも得策です。使用頻度が低い集会室などを居室や事務所に改装し、外部に賃貸して収益を得る方法もあります」(田中さん)

管理面でのランニングコスト削減も検討すべき項目とのこと。

「委託している管理会社などの変更を検討することで、コスト削減を実現できる場合もあります」(田中さん)

これらを実施できれば、マンション全体でも積立額を補充できるという。生活コストが上昇している今の時代、このようなマンション側の工夫に期待したい住人は多いだろう。

■今後のマンション販売の方向性やマンション選びのポイント


多くの新築マンションで段階増額積立方式を採用していることは先述の通りだが、今後もその方向性は変わらないのか。

「平成22年以降に新築されたマンションでは、23.6%が均等積立方式、67.8%が段階増額積立方式を採用しています。しかし国土交通省では、均等積立方式を推奨しています」(田中さん)

修繕積立金不足のマンションが増えている現状、そうせざるを得ないのも納得だ。

「国土交通省より令和4年に改訂された『マンションの修繕積立金(月額)に関するガイドライン』では、地上20階未満、延床面積5,000㎡未満のマンションだと専有面積1㎡あたり235円~430円、平均値は335円と明記されています。マンション全体の規模や階数、機械式駐車場の有無により目安は異なります。たとえば専有面積70㎡のマンションだと16,450円~30,100円、平均値は23,450円となります」(田中さん)

これからマンション購入を検討している人は目安にするとよいだろう。

「購入を検討している物件の修繕積立金額がガイドラインよりも著しく低い場合は、段階増額積立方式である可能性が高いです。将来値上がりすることも想定しておく必要があります」(田中さん)

修繕積立金の値上がりは、物価の高騰だけではなく、日本のマンションで長年採用されてきた仕組みが関係しているということがわかった。今後マンションの購入を検討している人は、修繕積立金の徴収方法を確認し、維持管理が持続可能かという点に着目することが大切だ。現在値上げに困惑している人は、マンション全体での補充を提案するのもよいかもしれない。


●専門家プロフィール:田中 勲
著書「こんな建売住宅は買うな」を幻冬舎より出版。不動産の専門家としてテレビやラジオ、YouTubeに出演。田中住宅診断事務所、仲介手数料無料ゼロシステムズ、レジデンシャル不動産法人(株)の代表取締役。宅建士など不動産関連の資格を複数取得。

画像提供:AdobeStock
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