実務でなく、試験でしか問題にならない事例かもしれませんが、よろしくお願いします。
甲・乙及び丙は、丁に対して連帯して金1000万円の貸金債務を負っており、その負担部分が、甲及び乙は500万円、丙はゼロである。
このとき、
「丁の甲及び乙に対する債権が時効により消滅した場合でも、丙は、丁からの債務の全額の請求に応じなければならない」という出題があれば「誤り」と解答すべきです。結論を暗記しました。しかし、理由がわかりません。
債権者丁と連帯債務者甲・乙及び丙が契約したわけですから、丁としては、連帯債務者3名の負担部分は平等だと思うのが当然でしょう。
もし、この際に、甲乙丙が、丙の負担部分がゼロだと申し出て、丁がそれを承諾したなら、それで良いと思います。
質問1:
しかし、よほど特殊な場合でなければ、そんな契約をする債権者はいないでしょう。
丁は契約時に丙の負担部分がゼロだと知らされていなくても、丁は丙からまったく回収できないのでしょうか。
質問2:
もし質問1のとおりだとすれば、甲乙丙で、甲だけが全額負担して、乙丙はゼロと勝手に内部関係を決めておいて、甲が突然死した場合、乙丙も支払う必要はありませんか。
以上、負担部分をどのような手続きを経て決めるのかがわかっていないので、トンチンカンな質問かもしれませんが、真剣に考えていますので、よろしくお願いします。
No.5ベストアンサー
- 回答日時:
もう一度、お話を質問文の事例に戻してお答えします。
甲乙丙は連帯債務者です。
ですから、債権者の丁は、甲乙丙のうち、一人に対し、全額の請求ができます(432条)。
このとき、負担部分は関係ありません。連帯債務は、それぞれ別個独立した債務ですから、負担部分がどうあれ、1人に全額請求できます。
負担部分というのは、甲乙丙のうち誰か1人が全額を弁済したとき、どれだけ求償できるかという話です。
例えば、時効にかかる前に甲が全額弁済した場合、甲は乙に対して500万円求償できるということです。
とすれば、負担部分は債権者にとって、どうでもいいことです。だって、負担部分がどうであれ全額請求できるわけですから。
ですから、判例も負担部分を決定するすのに債権者の同意は必要ないとしているのです。
絶対効とは、連帯債務者1人に生じた事由であっても、他の債務者にも生じたことになってしまう効力です。
例えば、債権者丁が、甲1人に「請求」したとしても、乙丙に対しても請求したことになるのです(434条)。
これと同じく、時効にも絶対効があります。しかし、請求とは異なり、その人の負担部分のみについて絶対効が生じます。
つまり、1人についてのみ、時効が成立しているにもかかわらず、全員に時効が生じたことになます(絶対効)。でも、他の人の債務は、時効が成立した人の負担部分についてのみ消滅します(439条)。
もし、甲1人について時効が成立したら、その負担部分500万円の範囲で絶対効が生じますから、
甲:0円
乙:500万円
丙:500万円
になり、丁は1000万円請求できなくなります。
この上さらに乙の債権まで時効にかけてしまうと、乙の負担部分500万円について、絶対効が生じますので、
甲:0円
乙:0円
丙:0円
になり、丁は誰にも請求できなくなります。
先ほどの説明と異なり、今度は債権者は「負担部分」がどうなっているかによって、全額請求できるかどうか決まります。
つまり、時効の場合は負担部分が重要な意味を有します。
それなのに、先ほどの判例のように、債権者を無視して負担部分を決められるとしますと、債権者は害されてしまいます。質問者さんは、この点が、おかしいんじゃないかとお考えなのですよね。
そう。おかしいといえば、おかしいのです。
通説(有力説?)も、質問者さんと同じ問題意識をもっています。
だから、判例を修正して、債権者が負担部分を知りうる状況に無い場合は、平等にしようとえているわけです。
もっとも、資格試験や実務では、判例の結論をしっかり抑えておく必要があります。その点で、これまでの他の回答者さんの回答は参考になるはずです。
詳しいご説明、ありがとうございます。
多数当事者の問題は苦手だったのですが、今回、けっこう理解が進んだ気がします。
何度も読み返していたので、お礼が遅れました。
No.4
- 回答日時:
判例での取り扱いは、これまでのお答えどおりだと思います。
でも、通説は違うらしいです。例えば、負担部分が平等だと信じていた債権者は、1人分ぐらいなら時効にかけてもいいやと思ってしまうかもしれません。
「請求」以外の時効の中断は相対効ですしね(440)
ふたを開けてみたら、「甲乙で全部負担してました」なんてひどい気がします。
連帯債務者の負担部分は、債権者には分からないので、負担部分は平等だという信頼も保護に値します(427条)。
そこで、通説は、債権者に対しては原則として負担部分を平等として、債権者が負担部分を知りえた場合にのみ、これを主張できると解しているようです(内田IIIP343)。
もちろん、判例とは異なります。
この回答への補足
ありがとうございました。
絶対効・相対効・負担部分・・・というのがそもそもわかりにくいので、一生懸命考えました。
私が素朴に考えると、427条は重要で、契約時に負担部分を債権者に明確に示す必要があると思います。
しかし、判例を読んでいないのでわかりませんが、実際には「負担部分のある連帯債務」にしたいきさつも重要なのでしょう。
みなさんがわかりやすく解説してくださったのに、おそらくその何割かしか理解できていないのが残念です。さらに勉強を続けます。今後ともよろしくお願いします。
No.3
- 回答日時:
連帯債務者の一人に生じた絶対効によって、他の連帯債務者に対してどのような影響を及ぼすかについては、二つに分けられます。
1.債務全額を免れるもの
(1)更改(2)相殺(3)混同(4)弁済
つまり、質問者さんに事例において、甲・乙・丙の誰か一人について、上記(1)~(4)のどれかの絶対効が生じれば、他の連帯債務者も債務全額を免れる事になります。
2.その絶対効が生じた連帯債務者の負担部分のみ、他の連帯債務者が免れるもの
(1)免除(2)時効
つまり、質問者さんの事例において、甲の債務にのみ時効が完成すると、乙は甲の負担部分を除いた500万円の連帯債務を引き続き負い(自己負担部分500万円)、丙も同様に500万円の連帯債務を引き続き負う(自己負担部分0円)事になります。ですから、御質問のように、負担部分のある甲・乙双方に時効が完成すると、甲・乙の負担部分についてのみ、丙は債務を免れるのですが、甲・乙の負担部分の合計が連帯債務の全てであり、丙は負担部分が0なのですから、結局丙は、連帯債務全額(1000万円)を免れる事になります。そして、連帯債務の負担部分の割合については、NO2さんも言われているように、債務者間で自由に決定できます。というのも、負担部分の多い連帯債務者に特に無資力等の事情が無い限り、債権者を害する事はなく、また、そもそも、連帯債務者の一部の者について、時効が完成してしまうまで時効の中断をせず放って置いた債権者は、責められても止むを得ないと思われるからです。以上を踏まえて、
質問1の回答 これも、NO2さんが言われていますが、要は、負担部分についての連帯債務者間の合意について債権者が知らなければ、その合意に付き丙が立証出来るかの問題であり、出来なければ、そのような丙の主張は認められず、支払い義務があると判断されると思われます。
質問2の回答 これはNO1・2さんが答えている通りであり、連帯債務者の一部の者の死亡により、他の連帯債務者の債務に変更は生じません。
No.2
- 回答日時:
直接の理由が、時効の絶対効(民法439条)であることはいいですよね?
その上で、連帯債務の負担部分とはどうやって決まるかという疑問でしょうか。
まず、連帯債務車間での負担割合が平等だと思うのが当然とはいえません。
連帯債務の負担部分というのは、本来、その債務によって利益を得た割合で決まるというのが判例の立場です。(大判大正5年6月3日大審院民事判決録22輯1132頁など)
たとえば、A、B、Cの三人が1000万円借りて、Aが800万円使って、Bが200万円使って、Cは何も使わなければ、負担割合はそれぞれ800万円、200万円、0円となります。使った人が時効で払わなくていいのに、使っていない人が払わなければいけないのは、かわいそうです。
債務者たちが貸したお金をどう使うかというのは、債権者の意思とは無関係のことですから、結局、負担割合も、債権者の意思とは無関係に決まるということになります。どうせ、債権者の意思と無関係に決まるのですから、債務者間で、勝手に負担割合を決めても、債権者を特別害するということにはなるとはいえません。
ということで、判例は、負担部分は債務者の意思で自由に変更できるとしています。(大判昭和7年4月15日大審院民事判例集11巻656頁など)
ただ、裁判においては、負担部分について債務者間で特約があったということは、きちんと立証しなければいけません。ただ、単に、特約があったと主張しても、証拠がなければ認められません。
以上を前提として
>回答1
丙が債務者間での負担部分の特約の存在か、もしくは丙が債務負担により何の利益も得ていないことを立証すれば、免れます。
>回答2
これは意味がよくわかりません。甲が死亡しても、甲の相続人が甲の地位を引き継ぎますので、甲負担部分が消滅するわけではありません。当然、乙、丙は甲負担部分について支払い義務があります。
No.1
- 回答日時:
質問1
(1)負担部分ゼロの連帯債務を負わせる契約をする債権者はいると思います。
債権者丁にしてみれば、甲乙が無資力であっても
「時効期間内であれば、丙に全額支払を求める事ができる」ので
メリットはあるからです。
負担部分ゼロといえば、保証人もそうですよね。
(2)丁は負担部分の割合を知らなくても丙から回収できないと思います。
437条に時効の絶対的効力が定められてますよね。
甲乙の負担部分(500+500万)については丙もその義務を
免れられるのです。
その理由は求償の循環を避けるためです。
丁には酷と思われますが、丁としては甲乙丙のいずれかに請求すれば
時効中断でき、こういう事態を防ぐことができました。
時効制度の趣旨の「権利の上に眠るものを保護しない」を
思い出してください。
質問2
甲が突然死しても、債務は消滅せず相続されます。
よって、時効にかかっていなければ、丁は甲の相続人+乙丙に
請求する事ができます。
甲につき時効完成していれば、乙丙は時効援用できるので
支払う必要はありません。
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