■入院する前に準備をしておく
健康であった人ほど、急に入院となると慌ててしまうもの。今からでもできる事前準備があると磯貝さんは話す。
「事前に、入院時に求められる情報をまとめておいて、身近に準備しておくとよいです。かかりつけの医者や使用している薬、病歴、アレルギー、延命についての考え方などノートにまとめておくのです」(磯貝さん)
このような情報を、信用できる人に託しておく事も準備の一つとのこと。
「入院の手続きに最低限必要なものは、上記に挙げた情報に加え、約10万円の保証金、保険事務所への連絡、着替えなど生活に必要となるもの、印鑑、生活費用などです。着替えに関しては、病院側が用意する施設もありますが、家族が洗濯する場合が多いです」(磯貝さん)
退院する際の準備もあるだろうか。
「基本的に、退院時は支払いを済ませるだけでOKです。治療費は所得に応じて上限があり、高額療養費を使うと、月10万円は基本超えません。最近ではクレジットカードや分割払いなどもできますので、費用面に関しては、病院の相談員であるソーシャルワーカーさんと相談してみましょう」(磯貝さん)
このような入退院の際に必要な手続きや相談、それらをサポートしてくれる人がいないのが独身者に起こりうる問題なのだ。
■緊急時なら保証人がいなくても治療は受けられる
十分に準備ができるような入院ではなく、急に手術が必要となるような場合、保証人はどうすればよいのだろう。
「救急車で運ばれるような緊急入院の場合、病院側が治療を拒否する事は医師法で禁止されています。そのため、緊急で治療を受ける際は保証人がいなくても治療を受ける事ができます。手術の同意に関しては、基本はご本人しか選択できません。本来は家族でも手術の同意権は持たないのですが、訴訟リスクを病院が回避する為に、家族や保証人に同意サインしてもらっています」(磯貝さん)
緊急時なら保証人がいなくても治療は受けられるが、容体が安定すると状況が変わるようだ。
「治療が終わると、病院に長く滞在する事は病院経営の観点から好まれません。よって、必要な治療が終わった段階で、退院もしくは転院を病院から促されます。転院に関しては必ずといってよいほど保証人を求められます」(磯貝さん)
治療やリハビリが必要な場合も、両親や兄弟に保証人になってもらうことが好ましいとのこと。
■どうしても保証人がいない場合はどうする?
ユーザーからの投稿にもあったが、保証人がどうしても見つからない場合、市役所職員などの他人が保証人になるケースはあるのだろうか。
「各自治体によって対応が違いますので、全国で決まった形はありません。地域によってはそのようなケースもありますが、外郭団体で引き受ける形になると思います。病院で保証人を探すケースだと、当社のような団体へ依頼が入ります」(磯貝さん)
どうしても保証人が見つからない場合、民間で運営されている団体に相談するのも手だ。
「このようなケースと混合されるのが、成年後見人といわれる制度で注意が必要です。成年後見人とは、高齢かつ精神疾患を伴うことで、『契約行為』に不安がある人が使う法律制度のことです。多くの方が勘違いしているのですが、成年後見人は、財産管理をする事が主になりますので、保証人を引き受ける事は法律上できません。身元引受人は連帯保証人でもありますから、一般的に簡単なことではありません」(磯貝さん)
保証人以外にも、成年後見人という判断能力が不十分な場合に適用できる制度があるという。独身かつ、家族や親戚など、周りに頼れる人がいない環境の場合は、健康なうちにどのような制度があるかを把握し、準備をしておくと安心だろう。
●専門家プロフィール:想いコーポレーショングループ
健康・医療・病院などをはじめとした相談や保証人代行までを提供。また、葬儀・お墓や生前整理に関する終活相談も行う。