「教えて!goo」にも「赤ちゃんは何故むちむちぷりんなのでしょうか?思わずほっぺをつんつんしたくなります」と、疑問が寄せられている。
そこで今回は、株式会社EQWELの「日本赤ちゃん発育学研究所」で研究員をつとめる浦谷裕樹さんに、赤ちゃんの身体に関する疑問をぶつけてみた。
■むちむちの身体と水分量の関係
大人とは違う赤ちゃんの身体。なぜあのようなむちむちとした身体つきなのか。
「赤ちゃんは体内の水分量が多い上に皮膚は薄く、その下の脂肪は厚くなっています。これが赤ちゃんをむちむちさせている一番の理由です。大人の体内水分量が約60%なのに対し、新生児(誕生~28日未満)は約80%といわれています」(浦谷さん)
さらに、赤ちゃんの身体の柔らかさには生物としての理由があるというので聞いてみた。
「むちむちした身体のため衝撃吸収がよくなり、多少なら物にぶつかったりしても痛みを感じにくくなります。また、赤ちゃん期には身体が急成長するので、皮膚が多めにある方が急成長に対応しやすいことなども考えられます」(浦谷さん)
か弱く見える赤ちゃんの身体だが、合理的にできているのだ。
■赤ちゃんが持つ能力「ベビーシェマ」
赤ちゃんの身体が柔らかいのには、触ったり抱きしめたいという愛着をより強く促す効果もあると浦谷さんは指摘する。
「生まれたばかりの赤ちゃんは、一人で生きられません。そのため、大人に面倒をみてもらう必要があります。その戦略として、大人に愛着を湧かせるさまざまな特徴を持って生まれてくるのです。まず、見た目からかわいいですよね。大人の身体はだいたい7頭身なのに対し、赤ちゃんは4頭身。頭が大きい上に顔は小さく、目は大きくて丸く、顔の中でも低い位置にあります。また、鼻と口も小さく、頬がふくらんでいて、体もふっくら。手足が短くずんぐりむっくりの上に、動作がぎこちないという特徴があります」(浦谷さん)
浦谷さんによると、それらの特徴は多くの生まれたばかりの生物に共通している「ベビーシェマ」と呼ばれるものだという。
「大人に向けて『赤ちゃんらしい』というメッセージを送り、手を差し伸べさせるのです。愛らしい身体つきにはつい触りたくなりますし、言葉にならない声や甘えた仕草、無邪気な行動も周囲の人々を引きつけます。こういった赤ちゃん特有の愛嬌とたくさんの魅力が大人を魅了するのです」(浦谷さん)
赤ちゃんの虜になる大人が多いのは自然の摂理ともいえるのだろう。
■赤ちゃんが見せる笑顔の秘密
赤ちゃんの身体には、まだまだ知られざる働きがあった。
「赤ちゃんには生まれた直後から相手を選ばず反射的にほほ笑む能力があります。これは『新生児微笑』と呼ばれ、無意識の行動です。周りの大人はこのほほ笑みを見ると幸せな気分になり、愛着が高まり、より面倒を見たくなります。『新生児微笑』は生理的現象の一つですが、生後2ヶ月ごろからは、人の笑顔につられて笑い返す『社会的微笑』がはじまります。笑顔を返すのが楽しくなってきていると考えられているので、大人も笑顔を見せてあげるとよいでしょう」(浦谷さん)
見る人を思わず笑顔にしてしまう愛らしい赤ちゃんの笑顔。この笑顔も、生きていくために必要な反射の一つだというから驚きだ。
「ぷにぷにの頬は思わず指でつつきたくなってしまいます。赤ちゃんは頬を指でつつかれると、そちらを振り向き指をくわえようとする『口唇探索反射』や、その指をチュウチュウと吸う『吸啜反射』という原始反射があります。これらの反射は授乳で必要なものなのですが、あえて指でつついて、その反応を見るのもよいでしょう」(浦谷さん)
赤ちゃんの身体はただかわいらしいだけでなく、生き抜くための知恵が詰まっていた。他にも「把握反射」や「バビンスキー反射」といった赤ちゃんならではの反射があると浦谷さんは教えてくれた。興味を持った人は調べてみてはいかがだろうか。
●専門家プロフィール:浦谷 裕樹
新未来教育科学研究所の主席研究員。日本赤ちゃん発育学研究所の研究員を兼任。京都大学大学院を修了。工学博士、理学修士。「楽しく、わかりやすく、ためになる」をモットーに全国で講演活動中。延べ受講者数は1万7千人を超える。著書に『子どもの未来が輝く「EQ力」』、『赤育本』などがある。