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 ライブドアがニッポン放送の株を、時間外取引によって短時間に大量に取得したことから、政府・与党はやたらと急いで、時間外取引の規制に乗り出しているようです。

 しかし、TOBを使わない時間外取引、あるいは広く市場外取引というのは、それほど不公正なものなのでしょうか?

 我が国では、株式の譲渡は場所・価格・時間・数量・相手、全てが自由なのが大原則です。いわゆる閉鎖会社の場合でも、会社に譲渡の効力を対抗できないというだけであって、当事者間では売買毛役として完全に有効とされます。そして、我が国における株式会社の圧倒的多数は株式を証券取引所に上場しておらず、また会社の規模が一定以上であっても上場が強制されることもありません。つまり、我が国における株式取引は、市場外で行われることの方がむしろ多いと言えるでしょう。

 そんな我が国にあって、たまたま株式を上場しているからといって、証券取引所を通さない、あるいはTOBによらない時間外取引が、そもそも不公正と言えるのでしょうか?私にはどうも不公正とは思えないのですが。

 法律の知識ある皆さんのご意見はいかがでしょうか?

A 回答 (4件)

個人的見解を含めて,コメントします。


市場外取引と立会外取引は区別して書きます。

1.市場外取引について
これについて「非公開会社」と比較されているようですが,非公開会社と公開会社とでの大きな違いは「一般投資家」と「マーケット」の存在です。
企業支配権の移動を伴うような取引は投資家にとって重要な影響を及ぼします。
そのような取引に一般投資家が参加できないというのは投資家に不利益ですし,マーケットの信頼を損ないます。

非公開会社では投資家が投資として株式を保有していることはまれですし,非公開会社の株式取引の不信がマーケット,ひいては国民経済に影響することは考えにくいと思います。

企業支配権の移動という株主に影響する事項が,投資家に事前に知らされず参加することもできない状況で行われ,マーケットへの信頼を損なうことを防止することが必要だと言うことです。
投資家に事前に情報公開をし,平等に取引に参加する機会を確保する制度が,公開買付と言うことになります

もちろん1/3ルールの存在意義や適用範囲について議論のあるところですが。

2.立会外取引について
これについて立会外取引が不公正だという立論は正確性を欠きます。
「ToSTNeTを用いた立会外取引」といってもその実態はいろいろあります。

まず,取引所が提供する取引だから「市場」だという意見もありますが,形式的すぎます。取引所が「市場」として提供していることと,公開買付規制で言う法律上の「市場」と言えるかは別の問題だと思います。
もっと実質的に考えるべきです。

実質的観点から考えると,今回ライブドアが行ったToSTNeT-1の単一銘柄取引では個別に条件交渉を行い取引を成立させることになりますので,一般投資家の参加の機会の保障という点からすればかなり問題だと思います。
事前公表も私の知る限りありませんでした。
事実,このような取引は妥当性を欠くとの指摘(神崎克郎 河本先生古稀記念「現代企業と有価証券の法理」199頁)や違法との指摘(連載・新体系証券取引法9 企業会計54巻3号)も以前からありました。

では,今まで多くの企業が立会外取引をしているという意見もありますが,これは実態を見ていない意見なのです。
今まで1/3以上を取得することになる立会外取引ではToSTNeT-2の非クロス取引を利用してきました(少なくとも不勉強な私は今までToSTNeT-1で1/3以上取得した例を知りません)。
これはToSTNeT-2の非クロス取引なら時間優先の原則が適用されるので,一般投資家の参加の可能性があるからです。
さらに事前に買付けに関して公表を行うので,その意味でも実質的に一般投資家が取引に参加する機会が保障されていると考えられます。

「事前公表型ToSTNeT-2(非クロス)」というのがこれまで企業支配権の移動を伴うような取引を立会外で行うぎりぎりのラインとして,実務上存在してきたのです。
ライブドアの熊谷氏のブログでこれまで行われた例としてあげられた三井住友銀行の事例でも,事前公表を行った上でToSTNeT-2で行われています。

ライブドアの取引を違法や違法の疑いがあるという意見は,ToSTNeT-1かToSTNeT-2か,クロスか非クロスか,事前公表があったかなかったかを意識されたものです。

今回金融庁が立会外取引の規制を含む法改正を発表しましたが,法律案の概要によれば「公開買付規制が適用されない『立会外取引のうち、相対取引に類似した取引』については、株主に平等に売却の機会を与えるため、公開買付規制の対象とする。」とされています(『』は回答者による)。
これも立会外取引すべてを規制するものではなく,規制すべきものと規制する必要のないものがあることを意識しています。
具体的には内閣総理大臣が定めることになりますが,ToSTNeT-1かToSTNeT-2か,クロスか非クロスか,事前公表があったかなかったかが意識されることになると思います。

長くなったのでまとめます。
1.一般投資家の参加の機会が保障されて,マーケットへの信頼が維持されることが大切。
2.立会外取引にも一般投資家の参加の機会という観点で違いがある。
3.法改正も立会外取引すべてを規制するものではない。その基準は「相対取引に類似し」ているか。言い換えれば一般投資家の参加の機会の保障と言えるのではないか。
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この回答へのお礼

 こんばんは。ご回答、誠にありがとうございます。

 これまでの回答の中では、最も私の疑問に正面からかつ詳細にお答えになっているように感じました。学識経験も相当お持ちなんですね。

 ただ、気になったのは、「不公正」の根拠が、「一般投資家に支配権移動の情報が提供され、またその際に取引参加の機会が保障されるべき」という、おそらく国民全体に共有されているには程遠いであろう価値観だということです。私は法学部出身なのですが、商法はおおいに勉強し、今回のニッポン放送株問題については新株予約権発行は違法との論陣を張りましたが、証券取引法については体系的に学ぶ機会がありませんでした。商法だけ勉強すると、株式の譲渡は自由じゃないか、時間外だから、あるいは市場外だから何が不公正なんだ?と思ってしまうのです。今でも、貴殿の論にうんうんと頷こうとする自分と、株式譲渡自由の原則からして会社支配権の移動は当然に起こりうることであり、事前に公表する必要などないと主張する自分が、葛藤しています。

お礼日時:2005/03/12 02:24

立会外取引(時間外取引)と市場外取引とは異なります。

前者はTost-Netというシステムによって行われるもので、市場を通しています。ライブドアが採ったのはこちらの方であり、市場外取引ではありません。また、本日のニッポン放送による新株予約権発行禁止の仮処分命令においてもこの点について言及しており、立会外取引によるライブドアの株式取得は違法でないという判断をしています。もっともニッポン放送による保全異議申立を受けての審理の中で覆る可能性もあり、今後の動向を注視していく必要があると思います。

ご質問では、立会外取引(時間外取引)と市場外取引とを一緒くたにされていると思われましたので、区別して考える必要があると思われます。

まず、立会外取引(時間外取引)での上場株式の売買ですが、そもそもこれは企業間の株式持合いの解消などに多用されていた経緯があり、これを違法だと言うならば、一体過去どれだけ多くの違法行為が行われていたかということになってしまうでしょう。少なくとも市場で行われている以上、違法性はないと思います。今回はそれが露骨に行われてしまったために問題視され、金融庁も見直しを図っているようですが、それではライブドアを標的にしたものだと受け取られても仕方ないのではないでしょうか(私は別にライブドアの肩を持つつもりはありません)。ライブドアの取引を違法だと言うには、過去の立会外取引(時間外取引)も違法だと言わなければなりませんが、今のところこちらについては誰も全く何も言っていないのは首を捻らざるを得ません。

次に、市場外取引での上場株式の売買ですが、こちらは問題があると思われます。ご質問では「たまたま株式を上場している」ということで上場株式を売買することは不公正でないとおっしゃられていますが、上場するということは、株式、つまり会社の分割された所有権を株式市場という公開の場で多くの投資家に譲渡することを意味しますから、透明性や公平性が求められます。また、そうした考え方を持たない経営者がいる会社は、逆に上場すべきでないと思います。西武鉄道株の問題で、堤容疑者は「なぜ上場するのか分からなかった」と言っていたそうですが、こういう考え方の経営者のいる会社は上場してもらいたくありません。

上場している以上、証券取引所のチェックを受ける必要があると思いますが、市場外取引については証券取引所のチェックを受けられませんので、個人的には不公正だと思います。
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この回答へのお礼

 こんばんは。ご回答、誠にありがとうございます。
 
 時間外取引と市場外取引は別のものであると認識していましたが、時間外取引は時間内取引と市場外取引の中間に位置するもので、時間外取引が不公正だとすれば市場外取引はもっと不公正なのだろうと考えてああいう書きか方をしました。

 株式を上場することで、当の上場した会社が一定の規制などの不利益を受けることには異論ありません。しかし、時間外取引や市場外取引が規制されて不利益をこうむるのは、今回のライブドア問題でも分かるとおり、株を取引しようとする者であって、上場した会社ではありません。上場した以上、上場した会社に各種財務データの公表義務を課す等は理解します。しかし取引への規制は、上場した会社よりも株を取引する者に不利益を与えますよね?

 証券取引所のチェックを受けなければ、なぜ不公正なのか、また市場外取引が不公正ならば上場していない会社の株式取引はよろず不公正ということにならないのか、ご教示願えたらと思います。

お礼日時:2005/03/11 23:49

これは、ルールとマナーの問題だと思います。


今回のライブドアの行為は、マナー違反だと個人的に思っております。
どんなものにも、暗黙の了解というかマナーが存在します。特に日本はこれを重んじる傾向があります。
では、なぜルールにしないのか、それは、細かくルールを決めてしまうと、融通の利かない物になってしまい、うまく機能しなくなるからです。
今回のケースは、アメリカ式と日本式のギャップが生んだ問題だと思っております。
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この回答へのお礼

 こんばんは。ご回答、誠にありがとうございます。

 貴殿のご見解は、市場外ないし時間外での大量取引は、不公正とかいうわけではないが、日本の取引慣行(マナー)に違反している。法改正も従来の取引慣行のうち明文化されていなかった部分を明文化するに過ぎないということでしょうか?

お礼日時:2005/03/11 20:48

証券取引法はご存知でしょうがその第2章に


「当該発行者以外の者による取引所有価証券市場外における買付け等(株券等の買付けその他の有償の譲受けをいい、これに類するものとして政令で定めるものを含む。以下この節において同じ。)は、公開買付けによらなければならない。」
という記述があります。
また、その適用を受けない例としていくつかありますが
「著しく少数の者から株券等の買付け等を行うものとして政令で定める場合における株券等の買付け等(当該株券等の買付け等を行う者及びその特別関係者の株券等所有割合の合計が3分の1を超えない場合に限る。)」
という記述から、今回のライブドアの大量取得は違反しているという指摘があってもおかしくはありません。
いままでの規制が緩すぎたんですね。規制の強化は法治国家として当然の処置でしょう。

この回答への補足

 いや、だから、なぜ「公開買付けによらなければならない。」のかという、根本をここで問いたいのです。規制には根拠が必要でしょう?そして株式は自由に譲渡できるのが原則なのではありませんか?

 日本の株式会社の圧倒的多数は上場していませんよね?上場していない会社の株なら自由に取引できるのに、上場している会社の株だと、たくさん買う場合は公開買付にしなくちゃいけなんておかしくありませんか?私はそこを問いたいのです。市場外取引が、こうこうこういう理由で不公正だと説明して頂ければ、私も規制強化賛成論者になるかもしれません。

補足日時:2005/03/11 20:35
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