私は読書が好きで、中でも三浦綾子『塩狩峠』は心に残る作品の一つです。
ただ、どうしても気になる場面があるので今回質問させていただきます。
主人公の信夫は父と祖母と住んでいましたが、やがて祖母が亡くなり、「クリスチャンだから」という理由で家を出ていた実の母・菊と一緒に住み始めます。
祖母は基本的に仏教を信仰しており、生前に「わたしが死んだら、お線香くらいは上げてくれるんでしょうね」と言っていました。
ところが菊は、仏壇に供え物をしようとはしませんでした。
それは唯一神を信仰するクリスチャンとしてはできることではなく、菊も「おばあさまのことを忘れているから、ごはんをあげないのではない」と言っています。
さらに、たしかこの点に関して(記憶があやふやですが)信夫の婚約者となるクリスチャンのふじ子も「仏壇で手を合わせるだけが供養ではなく、子孫である自分たちが立派に生きることこそ…」という主旨の発言をしていました。
これについて、皆さんはどのように考えますか?
私は幼児洗礼を受け、現在カトリックへの関心を持っているのですが、この点については祖母が望んでいた「線香を上げる」という行為くらいはしてあげても良いのでは…と思うのです。
祖母はキリスト教を信じていたわけではありませんし、それを「自分たちが立派に生きることこそ」とすり替えるのはいかがなものかと思います。
私はこの作品がきっかけでカトリックを改めて向き合おうと考えていますが、全体を通して、仏教をはじめとするその他の宗教をどのように捉えるべきか…という点が腑に落ちませんでした。
もともとキリスト教嫌いだった信夫は途中で折り合いがついたらしいのですが、その経緯ははしょられていたのでよくわかりません。
この点についての皆さんの意見、あるいは私の読み方が間違っていればその点も教えてくださると嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
No.3ベストアンサー
- 回答日時:
私はあの小説は好きです。
信夫があんまりいい人過ぎて、作り物のような感じをうけなくもないのですが、最後に線路に身を投げる場面は、何度読んでも胸をうたれます。
では本題のキリスト教の話を。
私には外国の友人知人が何人かいますが(殆どがキリスト教徒です)、どのくらいキリスト教につかっているかは人によって様々です。
私は、菊が線香をあげないというのは、ありえる話だと思って読んでいました。実際、私の知っている中で一人だけ、神社を案内したときに鳥居から中に入らなかった知人がいます。
明治時代に、本当に三浦綾子の書くようにキリスト教に対する偏見があったのなら、その中で敢えてキリスト教徒になるというのはよっぽどキリスト教に心酔しているはずです。そのような純粋な気持ちから、他の宗教儀式にかかわらないということになるのではないでしょうか。
もっとも、私は、あの場面は祖母に"伝統的に"育てられた信夫が、キリスト教と初めてであったときの戸惑いと葛藤を象徴している場面と感じました。
では、実際にsakura-krさんがどうするべきかということですが、それはご自分の裁量によっていいとおもいます。私はキリスト教徒の人たちをみてそう思います。
日曜日に欠かさず教会に行く人もいれば、面倒だ(!)といって行かない人もいます。異教徒と結婚する人もいますし、だからといってそれを問題にする人もいません。
私は、キリスト教というのは、信者に対する要求の少ない、寛容な宗教のひとつだと思います。教条的である必要はないのではないですか?神様と対話すると同時に、自分自身との対話を試みれば、頭で考えなくても、自分が仏教や神道とどう向き合っていくのが自然なのか、おのずから答が出るのではないでしょうか。
回答いただき、ありがとうございます。
非常に参考になりました。
特に私個人の問題についても言及してくださり、大変ありがたく思っています。
キリスト教に向き合いたいと思う反面(教会に通ったりはしています)、日本人として神道や仏教にも関心があり、どう折り合いをつけたら良いのか、この問題を誰に訊けばいいのか、ずっと考えていました。
すぐに答えが出る問題ではありませんが、もう少し考えをめぐらせてみたいと思います。
ありがとうございました。
No.5
- 回答日時:
宗教には関係のない人生を歩んでいて、難しいことは良くわかんないけど、
仏壇に供え物をしないのは、他宗教の儀式だからといえばそうなんだけど、
彼女の信じている宗教では、そこにおばあさんはいないからじゃないかな。
そこで手を合わせても、おばあさんには何も伝わらないし、既に亡くなった人の
未来を変えることはできないと信じていたからじゃないかな。
お線香をあげることが、今生きている他人を傷つけないためなんだったら、
それはそれで宗教の本質に近い部分だと思うので、本人次第だと思う。
回答ありがとうございます。
おばあさんはいない…そういう心境だったのかもしれませんね。
今回質問してみて、いかに自分の感覚に縛られ、視野が狭くなっていたのかに気がつくことができました。
どうもありがとうございました!
No.4
- 回答日時:
なにげに見ていてタイトルの『塩狩峠』に反応して相談内容を開きました。
日本の宗教は、キリスト教に学んだものが古来より多く有ります。厩戸の王子とかもそうですし、そもそも仏壇(Altar)も雛人形(Presepio)も信長の時代に宣教師達が持ち込んだものを日本的に商業化したもので、京都・滋賀から全国に広まったのはそういう背景があるからです。庶民の葬儀の風習自体もそれまでの日本には殆ど無く、16世紀にキリスト教が伝来するや急速に広まった原因に葬儀が有ったと言います。戦国乱世が治まって来ると権力構造を確固たる物にする為に、それまで鉄砲という強力な兵器と共に伝来したキリスト教も鉄砲と共に排除する必要が生じます。それ以前の古いお寺には檀家を持たないお寺も残っているのをご存知ですか?政治権力は仏教の有り方を変え檀家制度とか法事とかで民の相互監視体制を作り反乱暴動の芽を摘み取ります。仏壇はキリスト教迫害の象徴と成った訳です。戒名も東照大権現をルーツとし江戸時代に始まったものです。唐辛子やイチジク(唐柿)などキリスト教によって伝来(ちなみに、例二つは伊達政宗の遣欧使節が持ち帰ったものです)したものが名前や由来を変えて生き残りました。それまでは庶民には墓も無く先祖を大事にする風習は輪廻を基本とする仏教本来のものとは異なります。
幕末にキリスト教が再伝来すると、翻訳に困りました。用語がすっかり日本の神道・仏教に溶け込み使えないので新たに作らなければならなかったのです。キリスト教用語だけでなく二文字熟語の大半はこの時代に作られ、漢字の本家中国に逆輸出されました。
線香は18世紀の日本独自の発明品ですが、香はキリスト教でも祈りの意味を持ちます。
私がハンドル名にしているJohn_Papaは、日本にもおいでいただいた前の法王の名前から拝借したもので、写真も無断で借りています。キリスト教同士の交流だけでなく、世界の宗教の交流を呼びかけた人で大いに共感を得ました。
塩狩峠が書かれた背景の時代は、それ仏教とキリスト教が正面切って反目していた時代です。その後仏教の方が原点に(キリスト教の聖書のように万人に開けれてはいませんが)立ち返って調べたりして大きく方針が変わったと思います。つまり、かなりの部分キリスト教と共通のものから拝借しているという事。
もちろん、キリスト教もそれ以前に流行った中近東の宗教ミトラ教を利用(誕生日をクリスマスにしたりとか)してローマに広まった歴史を無視してはなりません。
日本には「もったいない」に代表される風習があります。このルーツについては判りませんが、「活かす」「無駄にしない」というのはすばらしい事です。16世紀に訳された「愛」に相当する言葉「お大切」はずばりその言葉だと思います。
自殺が禁じられるキリスト教において、自らの死を最大限に活かした信夫の行為に日本人らしさを感じます。
あるいは、イエス自身も日本人だったのかも知れませんね。実際にはイエスの行為が日本に根付いたのでしょうけど。紙一重で犬死という大いなる無駄になってしまうのですが。私の叔父も含め靖国にその様な人たちが祭られていて、日本って難しい国ですね。
詳しく説明してくださり、ありがとうございました。
私の知らないことばかりで、勉強不足を痛感しております。
それぞれの宗教を切り離して考えること自体、限界があるのかな、と思いました。
私ももう少し勉強して、ゆっくり答えを探すことにします。
本当にありがとうございました!
No.1
- 回答日時:
宗教関係は難しいですね。
だいたい宗教にまじめになればまじめになるほど、排外的な原理主義になって無用な争いを招きます。
幸い日本では信長、秀吉、家康の時代に宗教勢力の現世の牙(武力)を抜いてくれたので、平和な時代を謳歌できました。
三浦綾子さんの描くクリスチャンが排外主義者とは思いませんが、もっと寛容であるべきだと思います。
もうちょっと言い方を変えれば「上から目線は止めてくれ!」ですかね。
なるほど、ありがとうございます。
私自身は『塩狩峠』に感銘を受けた一人ですが、客観的に見ると受け付けない人もいるのではないかと思うんですよねー…
なので今回、ご意見が伺えて良かったです。
もう少し他のご意見も参考にさせていただいてから、ベストアンサーを決めたいと思います★
どうもありがとうございました!
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