
No.5ベストアンサー
- 回答日時:
まず、日本の産業の脆弱性が挙げられます。
第1次世界大戦中の欧米の輸出能力の減少で、日本はアジア市場を席巻しただけでなく、大戦による世界的な船舶不足の中で造船業や原料の製鉄業が伸張し、欧米からの化学製品の輸入が途絶したために化学工業も勃興し、日本は重化学工業化に成功することになります。しかし、このような事態は鳥なき里の蝙蝠で、日本の製品は欧米製品の代替品に過ぎず、品質・価格面で欧米製品に太刀打ちするだけの力を持ちませんでした。大戦が終了し欧米の製品がアジア・日本市場に回帰するようになるとアジア市場を奪還されたのみならず、日本市場においても重化学工業品を中心に輸入が急増し、貿易は輸入超過に陥ります。さらに大戦中の設備の増加と、在庫の増加を適正に解消できず(供給過多の状況)、戦後恐慌が発生していました。打撃を受けた企業・銀行の中では中小企業を中心に企業・銀行の倒産が相次ぎ、また倒産に至らない企業・銀行でも粉飾決算が行われ、不良債務は潜在化しました。政府は日銀券を増発し、産業救済を行いましたが、逆に経済破綻を先延ばしにしただけで根本的な解決にはなりませんでした。更に関東大震災とその後の震災手形とよばれるモラトリアムや、日銀の再割引手形(実質的な日銀特融)の中に戦後恐慌による不良債権が紛れ込み、それまでの問題点がより潜在化します。さらに復興のためもあり、輸入急増により在庫が増加し、産業の整理は進まず、工業製品の国際競争力の不足と、日銀券の増発などによるインフレの傾向により、貿易赤字は増大し、慢性的な不況下にありました(このような状況下で旧財閥への集中が進みます)。昭和2年には金解禁の目標もあり、震災手形の処理を行おうとした方策のまずさから昭和金融恐慌が起こり、田中義一内閣の高橋是清蔵相によるモラトリアムの発令で、かろうじて金融システムの崩壊を食い止めたほどです。しかし、この政策も結局のところ日銀券の増発により弥縫策でした。ですから1920年代を通じて産業の合理化・整理は進まず、競争力のない企業は残り、慢性不況の中、日銀券の増発により、破綻を回避する弥縫策を続けてきたことになります。当時はマネーサプライとの考えはありませんでしたが、結局のところマネーサプラを増加させたことにより競争力のない企業・産業を存続させ、不良債権を先延ばさせ、さらに増加はインフレ傾向を生み出し、貨幣価値を減少させ、為替相場の下落(円安)と国際競争力の低下をもたらすという悪循環に陥っていました。そのため為替相場は第一次世界大戦時の金輸出禁止前の1¥:0,49875$から最安1¥:0,38$台を底値として円安傾向にありました。このように連続的不況・恐慌に陥った1920年代を恐慌の時代とも呼びます。さて、金解禁は金の輸出解禁ではありますが、輸出代金の決済のために正貨(金貨及び金の地金)の輸出を解禁することです。同時に金の兌換の再開でもあり、金本位制への復帰でもありました。さらに金本位制は為替の固定相場でもありましたから、金平価(通貨交換比率)を維持するために、貨幣価値を維持する必要があり、そのためにマネーサプライは抑制的になりやすい性格がありました(平価の値にもよります)。特に当時の日本は戦後恐慌に始まる慢性的な不況状況にあり、マネーサプライを増加させることにより破綻を回避しているような状況は前記の通りでしたから、金解禁に伴ってマネーサプライの減少、不良債権の処理が促進されることは必然でした。つまり、今までと真逆の政策を実施することになります。
その上、為替相場の実勢が1¥:0,465$の中で旧平価(金輸出禁止前の平価)1¥:0,49875$で金解禁(実勢価格以上の円高)を実施しようとしたのですから、実勢価格以上の円高平価ですから、貨幣価値を維持するためにはマネーサプライを減少させ、貨幣価値を上げる必要がありました(デフレ要因となります)。在野の高橋亀吉・石橋湛山などは平価切下げ=実勢ルートでの金解禁を主張しています。
また、金解禁の準備として昭和4年度の当初予算より5%、1億円弱の削減をし、さらには昭和5年度予算案も削減後の予算と同規模とするなどの緊縮財政を行い、マネーサプライを減少させ、貨幣価値を上昇させ、円高誘導のための方策をとっています。(デフレ要因となります)
さらに緊縮財政は物価の引き下げも目的としており、それにより産業の合理化、国際競争力を高めようとしました。
そもそも第1次世界大戦までは日本をはじめ主要国は金本位制を採用していたわけですが、大戦に伴い次々に離脱します。大戦後に主要国は金本位制に復帰しますが日本だけが復帰できずにいました。金本位制への復帰=金解禁は国際的な要請でもあったわけです。ただし、平価を切り下げて金解禁を実施した国も多いのですが。
また、金本位制へ復帰していないことは管理通貨制にあるということで、マネーサプライの増加に金本位制の時ほど気を遣わなくて済むことになります。戦後恐慌等を日銀券の増発という手段で救済する訳ですし、逆に金本位制へ復帰できない要因にもなるわけです。
為替相場は当時の日本経済の実勢で展開し、大きく変動しますが、多くは円安に振れることにより、輸入が抑えられ、輸出が促進されたはずですが、財界を中心に金解禁により実質固定相場制に移行し、為替相場を安定させ、貿易を促進させることを望む声が強くありました。
このように当時の日本経済は戦後恐慌・関東大震災などにより恒常的な不況の中にあり、産業の整理・合理化は進まず、国際競争力に乏しい企業が温存されました。それを日銀券の増発、マネーサプライの増加により救済しているような状況でした。そのため、インフレが進み、為替相場は円安傾向で不安定な状況になり、放漫財政に陥っていました。このような中で主要国中唯一金解禁を実施していない日本に対して金解禁を求める内外の圧力は高まっていました。
このような背景の中から浜口内閣の井上蔵相は表裏の関係にある財政緊縮・金解禁を行うわけです。その財政・金融政策の方針は、財政緊縮による放漫財政の是正、物価の引き下げ、産業の合理化・経済の抜本的な整理、国際競争力の強化、為替相場の安定などを目的とし、金解禁を実施します。
上気したように、日本経済は日銀券の増発というマネーサプライの増加により破綻を防いできたわけですが、緊縮財政によるデフレ的な政策の上に、同じくデフレ色の強い金解禁を実施することは、新平価(円を実勢価格で金解禁)であったとしても、デフレ不況の色合いの濃い政策ですので、さらなる不況・企業の倒産・失業者の増加の可能性が高かったと思います。企業・産業の整理・合理化はつまるところ企業の倒産・合併により競争力の高い企業産業を残すことですから、最初から企業の倒産・失業者の増加は見込まれていたことになります。
まして、日本の実力以上の円高である旧平価での金解禁ですから、より多くの企業倒産と失業者の増加は避けられなかったと思います。
さらに、1929年の10月24日が世界大恐慌のきっかけとなった暗黒の木曜日で、ほぼ一か月後の同年11月21日に30年1月11日からの金解禁の実施発表、そして発表通りに旧平価による金解禁ですから、恐慌に輪をかけた実施としか言いようがない状態となったわけです。
長くなりましたが以上、参考まで。
No.4
- 回答日時:
No.2の回答者です
字数制限で詳しく書けず誤解を招いたのは申し訳ございませんでした
しかしながら日本の金解禁は大恐慌が起きた後に施行されたのは確かです
昭和恐慌は《金解禁を施行された後の結果》として起きた経済恐慌のはずです
No.3
- 回答日時:
#2様はある程度理解しておられるようですが念の為に。
井上準之助と金解禁断行を参照。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E8%A7%A3% …
たった1年で禁止されますが、その間に日本銀行券を兌換した金貨は海外へ流出しています。
金解禁の場合、世界恐慌でなく、昭和恐慌と答えねばなりません。
(正貨流出と昭和恐慌の発生参照)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%98%AD%E5%92%8C% …
No.2
- 回答日時:
戦間期の日本は積極政策を重視し金解禁に消極的な政友会と金解禁に積極的な憲政会(民政党)が対立していました
当時日本の主幹産業であった製糸業や遊資を抱える銀行などは為替の安定を求め
また外資導入を促進するために金解禁を要望する声がある一方
重化学工業界は円高不況を恐れ金解禁に批判的でした
当時の日本の重化学工業の技術は極めて低く、低品質の製品は戦災から復活した欧州諸国の企業の高品質製品に太刀打ちできなかったのです
戦間期の日本は銑鉄の需要を国内でまかないきれず
当時英の植民地であったインドの民族資本財閥のタータ製鉄から銑鉄を輸入していたほどです
日本重化学工業は軍需主導であったのも弱点の一つで
工作機械に至っては旋盤など単純な機械を除くと外国製品の模倣すら出来ず全面輸入に依存していました
長期不況、輸入超過というそんな中、成立した浜口民政党内閣の蔵相井上準之助は金本位制信奉者で旧平価での金解禁を断行したのです
旧平価での解禁を断行した理由は
実際の経済実態を反映していないにも関わらず円高は強い国力を示すものと錯覚していたことと
敢えて円高不況を起こし不良企業を淘汰する財界整理、産業合理化の思惑からです
そのため輸入抑制、国産品愛用促進、緊縮財政と諸政策を打ち出しましたが
29年10月に大恐慌が発生していたにも関わらずその重大性を感知できずに30年1月に金解禁を断行しました
それはまさに嵐に向かって窓を開けることとなり
米価が暴落、まだ大土地所有制が主流で高額小作料を強いていた日本の農業は破綻し小作人たちは都市へ流失
ただでさえ円高不況となり重化学工業、特に製造業労働者の失業者が増大している中
失業率を更に高め日本の雇用状況を悪化させたのです
No.1
- 回答日時:
世界恐慌そのものと金輸出解禁は関係の無い政策です。
金輸出解禁は恐慌前に決定されていた政策です。日本は1919年以来なだらかな不況(2000年代のようなもの)が続いていました。原因はWW1バブルとその崩壊、後処理の失敗(間違っても平成バブルの話じゃありませんよw)です。そして関東大震災(阪神淡路大震災じゃありませんよ)です。震災により実質的な債務返済引き延ばしが行われました。世界的な金輸出解禁(間違っても金融ビッグバンじゃありませんよw)に日本も同調せねばならなくなり、その需給バランスを考えてデフレ政策(間違っても90年代の政策じゃありませんw)を行いました。金輸出解禁のデメリットは無いはずだったのですが…
世界恐慌(リーマンショックじゃないおw)の発生です。金輸出解禁で円安になり輸出産業の活気を取り戻す筈が円が投機の対象となって円高になり、その投機マネーが金に化けたのです。輸出産業は円高の打撃を受け、庶民はデフレ政策の打撃を受けたのです。更に昭和4・5年は凶作だったのですが、政府のデフレ政策で米相場が安値を推移しました。
昭和6年、満州事変勃発(間違っても麻生の経済対策ではないwww)により世界的に金輸出停止が行われました。ドル買い(間違ってもドジョウの無意味為替介入ではないw)も一挙に円安に進み収まることになります。6年は大豊作で米価は大暴落し農村の現金貯蓄は大打撃を受けています。製造業は満州事変による特需(震災特需じゃないよ)で息を吹き返します。
7・8年は大凶作で農村は壊滅的打撃を受けます(東北太平洋沿岸は昭和三陸地震の津波で壊滅…東北大震災ではない…)。一方の製造業は8年に恐慌影響を脱しますが、9年の事変終了で不況に戻ることになるのです。(尚、当時朝鮮総督府への緊急支援政策は間違っても韓国へのスワップ融通とは関係がないw)
ま、こうやって見ると次は…尖閣諸島を巡って日中軍事衝突かな
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