私は「個」と「箇」の字について、
「個」は「コ」と読む場合、「箇」は「カ」と読む場合と区別して使っていたのですが、
最近「個条書き」と書いてあるのを目にするようになり、気になったので検索したところ、
以前の質問http://oshiete1.goo.ne.jp/kotaeru.php3?q=1977734を見つけました。
その後、漢和辞典で調べたところ「箇」は「個」の古い字であり、「個」は俗字、
「個」の読みには「カ」「コ」があり、「コ」には慣用読みのマークが付いていました。
ということは「個人」「個体」「三個」なども「カジン」「カタイ」「サンカ」
と読むのが本来の読み方なのでしょうか?(日常会話で使う気はありませんが)
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
「慣用音」の問題は#1さんの回答のとおりですね。
ちょっと別のことを書いてみます。
>「個」は「コ」と読む場合、「箇」は「カ」と読む場合と区別して使っていた
その通りでした。
「個所」「箇条」の表記が生まれたのには次のような経緯があります。
当初、当用漢字音訓表では「箇=カ」「個=コ」だったのです。
昭和二十九年に「当用漢字補正案」というものが出ました。
1) 当用漢字から「朕、隷、遵、箇」など二十八字を削って、代わりに「亭、俸、僕、戻」など二十八字を加える。
2) 「個=コ」を「個=カ、コ」に変更する。
「燈=トウ」を「灯=トウ/ひ」に変更する。
つまり、「個」を「カ」とも読むようにしたのは「箇」を削除することとセットになっていました。
マスコミ関係はこれに準拠して、「個所」「個条」「順守」などの表記に切り替えました。
ところが、国語審議会の第四十一回総会(昭和三十五年)で、「削除はしない。補正案は尊重する。」ということになったのです。
「箇」が生き残ったため、「個条」「箇条」が併存しているわけです。
余談ですが、「遵守」を「順守」と書き換えたので、「遵」は表外字だと思っている人が少なくありませんが、
最初からずっと当用漢字であり、引き続き現在も常用漢字ですから、お役所の文書に使ってもなんの問題もないはずです。
この回答への補足
セットにすべきものを一方だけ実施してしまったために、(私だけかもしれませんが)混乱が生じているわけですね。
「当用漢字補正案」以前は(明治時代以前も)「個=コ」「箇=カ」が一般的だったのでしょうか?
「遵守」は読めない人が多いですね。書き換え以前は「順守」という熟語は存在しなかったのでしょうか?
(たとえば漢字テストで書くと×になるとか)
日本史では「石包丁」でなく「石庖丁」、「下克上」でなく「下剋上」と書かなければいけないと言われたのに、
理科で「師管」と習ったものが本来は「篩管」と書くことを知ったときに「早く教えてほしかった」と思いましたね。
だからと言って「颱風」なんて書きたくはないですが。
No.5
- 回答日時:
#1です。
補足質問に対して、>「慣用読み」が、本来は間違った読み方でも、長い年月の間に定着した読み方のことを言うことと、
>例えば「個人」を決して「かじん」と読まないこととは、どういう関係があるのですか?
そのままですが、「個人」を「こじん」と読む読み方が「長い年月の間に定着している」ので、「個」に「か」という読みがあるとしても、「個人」は「かじん」とは読まないということです。
やはり分かりにくいでしょうか。
この回答への補足
回答ありがとうございます。
「消耗」を「しょうもう」と読む読み方は、長い年月の間に定着していますが、
本来の「しょうこう」という読み方も稀ではあるでしょうが(老人などでは)有りうると思います。
「決して」をつけるということは、その稀なケースが否定できない以上、理解できません。
他の方が言われているように、「個=こ」という読み方ができてから
「個人」という言葉が成立したという理由なら理解できますが…。
No.4
- 回答日時:
まず、読みの確認
個: カ(呉音、漢音)、こ(慣用読み)
箇: カ(呉音、漢音)、コ(唐音)
>「個人」「個体」「三個」なども「カジン」「カタイ」「サンカ」
>と読むのが本来の読み方なのでしょうか?
「個人」と「個体」は「こ」という慣用読みができたあとの漢語で「こ」と読むことを前提としたものなので、「カジン」という読みはないと思います。
さて「三個」です。
このような助数詞は、おっしゃるとおりもともとは「箇」です。
万葉集の長歌に「鰒珠(あわびたま)五百箇(いほち)」というのがあります。これは真珠500コという意味です。この「いほち」のように古くから、日本の助数詞は「つ」や「ち」をつけていました。「1=ひとつ、2=ふたつ」とか「20=はたち、30=みそぢ」とかですね。
この助数詞の「つ」「ち」は、今でも国語辞典では「箇、個」という漢字で載っています。万葉仮名には漢字の音だけではなく訳による字も当てられていたわけです。
その後、遣唐使の時代も終わり、日宋貿易や日明貿易などで「箇」を「こ」と読む唐音が伝わりました。このときから、「か(が)」とも「こ」とも読む読みかたが定着していったのです。ご指摘のとおり「個」は「箇」と同じものです。同じように使っていました。そこから「個」にも「こ」の読みかたが出てくるのは自然な流れといえるでしょう。また、本来「三箇所」「三箇条」と書くところを「個」と書くのもこういった背景があるわけです。
ちなみに、近代で「こ」を「箇」と書いた例
二葉亭四迷『浮雲』
戰爭とは別箇のものだと、マルコン氏は心配さうに云ふのである。
夏目漱石『こころ』
或は箇人の有つて生れた性格の相違と云つた方が確かも知れません。
田山花袋『蒲団』
一箇の古い中折帽を冠った男が立っていた。
有島武郎『カインの末裔』
五年の後には小さいながら一箇の独立した農民だった。
#2さんが言及なさっている当用漢字のブレは、「箇」の削除に反対が多かったためです。現代では、上記のような混在を避けるため「こ」は「個」、「か」は「箇」と書くのが一般的です。
なお、「箇」については現在でも常用漢字から削除するよう主張している人もいます。
この回答への補足
詳しい回答ありがとうございます。
教えていただくと、ますます疑問が生じてしまいます。
「つ」や「ち」の読み方は今回の質問直前に初めて知りました。
現代では年齢の二十歳についてだけ「はたち」と言いますが、
以前は物が20個ある場合でも「はたち」と言っていたのでしょうか。
>万葉仮名には漢字の音だけではなく訳による字も当てられていたわけです。
この意味が解らなかったので、詳しく説明していただけると嬉しいのですが。
「辨」「辯」「辮」「辛力辛」の役割全てを「弁」に押し付けてしまったように、
「箇」が背負ってきた役割を「個」だけに押し付けてしまおうした歴史的経緯があるということでしょうか。
No.1
- 回答日時:
「慣用読み」というのは、本来は間違った読み方でも、長い年月の間に定着した読み方のことを言いますから、
例えば「個人」は「こじん」で、決して「かじん」とは読みません。
あまりにも広く多く使われているために、正規の読み方を圧倒していく場合もあります。
こうなると正規とか本来とか言っても、それは単に語源を解釈しているだけで、実生活とはかけ離れたものになりますね。
この回答への補足
「慣用読み」が、本来は間違った読み方でも、長い年月の間に定着した読み方のことを言うことと、
例えば「個人」を決して「かじん」と読まないこととは、どういう関係があるのですか?
「貼付」を「てんぷ」と読むのも慣用読みだと書いてあるサイトも見ています(「せんぷ」と読まれた経験もありますが)。
これについては却って紛らわしくなるので個人的には賛同しかねていますが、
今さら「消耗」「攪拌」を慣用読みでない読み方で読もうとは思っていません。
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