ボルトの弾性域や塑性域についてのグラフの見方を教えて下さい。
下記リンクのグラフ(pdfファイル)を見ると、
トルク(縦軸)は最大の点を越えてから緩やかに下がり、破断を迎えています。
http://img1.rivercrane.jp/catalogue/11741/63.pdf
これは、トルクが最大の点を越えると、
ボルトを工具で回さなくても勝手に伸びて、ブチっと切れるということでしょうか?
例えば、水飴が伸びて勝手にちぎれるような感じで。
よろしくお願いいたします。
A 回答 (5件)
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No.5
- 回答日時:
クルマの研究で食ってる者です。
>ボルトを工具で回さなくても勝手に伸びて、ブチっと切れるということでしょうか?
ブチッと切れるケースもあり、切れないケースもある、ということですが、『水飴が伸びて勝手にちぎれるような感じ』とは違います。
※ボルトが塑性域に入るほど軸力を与えてしまうと(強い締め付けトルクをかけてしまうと)、遅れ破壊という現象が起こります。前の日にネジをしっかり締め付け、その時はそれで終わっても、翌朝(或いは数日後)見るとネジの頭が落っこちている、という現象です。
これは水飴が勝手に千切れるのとはメカニズムが違いますが、見た目の現象は同じ様なモノです。
※遅れ破壊が起こるかどうかは、塑性域内でどこまで回すか?によります。故に塑性域角度法というネジの締め付け方法では、最初に締め付けトルクの勾配(締め付けトルクの増加率)を測っておき、塑性域に入ったことが検出されたら、『塑性域に入ったところから1/6回転』という様に回転角で規定します。(塑性域に入ると締め付けトルクがほぼ一定のままネジがグイグイ回るので、トルク管理は出来ません。)
※尚、蛇足ながら・・・塑性域角度法が普通のトルク管理法より優れているのは、締め付けトルクの大きさそのものを管理しないからです。
締め付けトルク自体はネジ面とネジのアタマが乗る座面の状態(摩擦係数μの大小)によって違ってしまうので、トルク管理法はあまりアテには出来ません。(同じ締め付けトルクでも、最大で50%もの軸力のバラツキが出ます。)
塑性域角度法ではトルクの大きさではなく勾配(トルクの増加率)を見ており、トルク値自体の大小はあまり問題ではありません。
※故に・・・御質問に貼付のページの解説は、工学的には『半分ハズレ』となります。
トルク法で締め付け力を管理しようとした場合、重要なのはどれほど精密に締め付けトルクを測るか?ではなく、ネジ面や座面のμをどれほど安定させるか?にかかっています。
軽量化と部品のコンパクト化の為、細いネジを限界ギリギリまで締め上げる設計を施すレーシングカーの場合、ネジと座面には銅粉やモリブデン等の極圧剤が入ったグリスを塗り、μを安定させてから締め付けます。(ネジにグリスなど塗ったら緩みやすくなるだろう、と考えるのは単なる『気のせぃ』で、ちゃんと設計され締め付けトルクが決められたネジでは、グリス程度の潤滑では緩みません。そもそもエンジンや変速機内は超高性能潤滑油にジャブ漬けですが、中で使われているネジを増し締めなどしませんよね?)
ご回答ありがとうございます。
色々な情報も頂き、とても為になりました。
遅れ破壊に関しては、水飴と現象自体は似ているということですよね。
遅れ破壊に関してではなくて、あのグラフの最大点を超えてから緩やかにトルクが下がっていく事象に関しては、遅れ破壊ではないのですよね?
No.3
- 回答日時:
「弾性」と「塑性」ですね?
簡単に言いますと。。。
「弾性」=「変形してるけど元に戻ろうとしてるし、元に戻れるし、大丈夫だよ」って言ってるんです。
「塑性」=「もう変形しちゃっていて元に戻れないよ、見た目は大丈夫だけど何かあったら責任持てないよ、これ以上他の振動とか力掛かったら壊れちゃうよ」って言ってる状態です。
「弾性域」の範囲なら、ボルト君は「大丈夫だよ、OKOK」って言っていて、「塑性域」の範囲だと「ちょっとぉ、そこまでは守備範囲じゃないよ、責任持てないよ、止めてくれよぉ」って言っているのです。
「弾性」も「塑性」も外部からの「力」が「掛かって無い=締め付け終了後」の話ですね。
そして「弾性域」ならば「振動等」の「その後」の力に対しても「耐えられるだろう」けど、「塑性域」まで「行っちゃう」と「振動等」の「その後」の「力」には「耐えられない」となります。
>これは、トルクが最大の点を越えると、
ボルトを工具で回さなくても勝手に伸びて、ブチっと切れるということでしょうか?<
単純に「そう考えてもいい」です。
No.2
- 回答日時:
説明上、トルク-伸びグラフとなっていますが、材料工学では応力-歪み線図というグラフです。
弾性域の応力が低いうちは、応力に対して歪みの発生が比例しており・その領域を比例域と呼びます
(バネ秤がこの原理を利用しています。錘を増やし過ぎると重さと伸びが比例しなくなるのが弾性域
以上になります。塑性域に入ると錘を外しても元のバネ長に戻らずに伸びてしまいます)。
「トルクの最大点」と書かれているのが「引張り強さ」と呼ばれる値で、この応力値に達するとそれ
より低い応力値(=負荷)で材料は伸びていきます(材料の試験では油圧やモーター駆動で試験材を
引張りますが、引張り強さを超えると試験加重は低下していく一方で材料の伸びや断面積の減少が
はっきりと確認出来ます)。
No.1さんが書かれているように、ボルトを締めていた力が急に軽くなってスッと回ってしまいます。
但し、材質や熱処理によっては材料が破壊した時が引張り強さとなるものもあります。
>>トルクが最大の点を越えると、ボルトを工具で回さなくても勝手に伸びて、ブチっと切れる?
破壊に至るまで変形させていないのであればトルク(=荷重)を加えなければすぐには破壊しません
が、振動や衝撃あるいは何かの外力が加わった場合には簡単に破壊する可能性は高くなります。
また、ボルトを締めた力が必要以上に内部に残ってしまうと遅れ破壊という現象を起こして時間が
経過してから突然折れてしまうという事もありますから、実用には耐えられません。
トルクによる締付管理は、ねじ山の加工状態や締め付け接触部の摩擦(潤滑)状態で値が大きく
変わるので、劣悪な条件では締付の過不足が起こるおそれがあります。意外と奥が深いものです。
一部、塑性域まで締め込む事でボルトの再利用は出来ないがしっかりと締付を行えるようにする
方法を採るやり方もありますが、これも管理が悪いと遅れ破壊を起こしてしまいます。
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