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旧ユーゴスラビア連邦、スロベニア・ボスニアヘルツェゴビナ・クロアチア・セルビア・マケドニア・モンテネグロ・コソボの関係(歴史的経緯から現状まで)について、たとえば宗教が違う、民族が違うなどの違いで説明できることは多いと思うのですが(たとえばボイボディナは独立運動がそれほど盛んでもない感じなのに対しコソボは民族だけでなく宗教の問題もあった)、その中で、クロアチアとセルビアには非常に感情的な対立が見受けられると思うのですが、根本的にはどのような因果なのでしょうか。
クロアチアは第二次大戦中でセルビア人を弾圧した。なのにユーゴの建国においてはこの呉越が協力し連邦となった。流れからいえばセルビア中心の国家なのかと思いきや、まとめたのはチトー(クロアチア人)。
先のユーゴ解体の経緯においても、スロベニアの穏健な離脱に比べるとクロアチアはかなりラディカルに事を進めている(ついでに言うとボスニア辺りは、個人的に受ける印象は、なんだかそれほど積極的には見えない)。
これはどう解釈すればいいのでしょうか。
日本人からみると顔も一緒にすら見えます。ツチ族VSフツ族もそんな感じですが、とりあえずまずセルビアVSクロアチアから、知りたいので、ご存じの方もしいらっしゃいましたらお教え願います。

A 回答 (3件)

クロアチアとセルビアの対立が深刻化してきたのは第一次世界大戦後からです。



それまでクロアチアは長い間、独立国を形成していませんでした。
はるか昔、9世紀頃には国がありましたが、その後、ハンガリーの支配下に置かれます。
15世紀になるとオスマン帝国の支配下に置かれました。
19世紀になるとオーストリア・ハンガリー帝国に支配されました。
クロアチアは長年独立を目指してしてきたのですが、なかなかうまくいかず大国に支配され続けてきました。

第一次世界大戦でオーストリア・ハンガリー帝国が敗北します。
一方で、セルビア王国が勝者となりました。
この時、セルビア王国は敗北したオーストリア・ハンガリー帝国からクロアチア、スロベニア、ボスニアを取り、「セルビア・クロアチア・スロベニア王国」を建国します。後に国名は「ユーゴスラビア王国」に改名されています。

この「ユーゴスラビア王国」は当然の事ながらセルビア主導であり、政府の要職もセルビア人で占められていました。セルビア人に牛耳られている国にクロアチア人が反発し独立運動が盛んになります。

そうしているうちに第二次世界大戦が始まりました。
「ユーゴスラビア王国」はドイツ軍の侵攻を受け支配されます。
この時、ドイツはクロアチア民族主義でファシスト政党ウスタシャのアンテ・パベリッチという人物を元首にした「クロアチア独立国」というクロアチア人の国を建国し、ドイツの傀儡政権としました。
なおドイツはセルビア地域には「セルビア救国政府」という傀儡政権を作っています。

アンテ・パベリッチは、ウスタシャ以外の政党を認めず一党独裁を行い、ヒトラーの人種政策を見習ってクロアチア人以外の人種を差別し、弾圧し収容所をつくり虐殺しました。
セルビア人だけでなく、ユダヤ人や、ロマ人、反対派のクロアチア人も弾圧します。
セルビア人は劣等な人種であると政府は宣伝し、セルビア人を弾圧しますが、そのような事が主張された事は、それまでのクロアチアの歴史でありませんでした。アンテ・パベリッチの過激な思想です。

このセルビア人を弾圧するアンテ・パベリッチの「クロアチア独立国」に対して報復行動に出た組織がありました。
旧ユーゴスラビア王国軍のセルビア人兵が中心となって組織された「チェトニック」という抵抗組織であり、この組織は「クロアチア独立国」と戦いつつクロアチア人を虐殺しています。

「クロアチア独立国」はクロアチア人の国でしたが、全てのクロアチア人がその政府を支持していたわけではありませんでした。
ドイツの傀儡政権という事や、セルビア人への過激な弾圧政策を支持できないと思い不満を持つクロアチア人も大勢いたのです。
全てのクロアチア人がセルビア人を弾圧していたわけではないのです。

その結果、民衆を惹き付けたのが、果敢に抵抗運動を続けるチトーの共産党でした。チトーは民族平等を主張し、民族、宗教、言語などの違いをこえ、ユーゴスラビアの解放のために戦う事を主張したのです。
この主張が民衆の支持を集め、チトーの勢力は拡大していき、ついに勝利をおさめました。

90年代のユーゴ崩壊についてですが・・・
必ずしもスロベニアも穏健にユーゴスラビア連邦から離脱したわけではありません。
スロベニア独立阻止に連邦軍が出撃し戦闘が行われています。スロベニアで独立阻止に動いた連邦軍は、スロベニア防衛隊に敗北しています。
スロベニアでの戦闘が激化・長期化しなかったのはクロアチアが独立宣言した事と、スロベニアの人口構成ではスロベニア人が圧倒的に多いからです。
連邦がスロベニアに部隊を派遣するにはクロアチアを通過しなければ行けません。スロベニアと国境を接している国はクロアチア以外ありません。そのクロアチアとも戦闘になり、スベロニアに軍を派遣できなくなったのです。空と海という手段もありますが、連邦軍には海空から大軍を送り込む能力はありませんでした。

クロアチアとセルビアの戦いが激化したのは、セルビア人とクロアチア人が混在していたからです。
独立を宣言したクロアチアにもセルビア人がおり、それは人口の12%、60万人にもなりました。
特に多かったのがクライナ地方で、この地ではクロアチアの独立宣言が出される前に行われた住民投票では90%がセルビア共和国への編入を希望していました。
そしてクロアチアが独立を宣言すると、クロアチア国内でもセルビア人の多い地域において、クロアチア軍とセルビア人の衝突が起こったのです。
セルビア人には独立した中で少数派となり権利を侵害されるのではないか、第二次世界大戦の時のように弾圧されるのではないかという不安があり、抵抗運動となりました。
これにセルビア人保護を名目として、セルビア人を主力とするユーゴ連邦軍が介入します。同胞を助けるためです。
そしてクロアチア内戦となり、セルビア人対クロアチア人の対立が激化しました。

セルビア人とクロアチア人の対立は、クロアチアに多くのセルビア人が住む混在地域があった事と、第二次世界大戦での双方の弾圧がまだ記憶されていた事によるものでしょう。
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この回答へのお礼

めちゃめちゃ分かりやすいです。ありがとうございました!!

お礼日時:2009/08/12 12:26

旧ユーゴスラビアを構成した共和国は、南スラブ人という共通の民族でした。


しかし、長年他民族の支配下にあったり、民族形成の時に影響を受けた国が異なるため、しだいに民族が分離していってしまいました。
・スロベニアは、1000年にわたり、ドイツ(オーストリア)の一部として扱われた地域で、南ドイツの文化を受け継いでいます。
・クロアチアは、1000年にわたり、ハンガリーの一部であり、ハンガリー文化の影響を強くうけています。
クロアチアの中に、クライン地方というところがありますが、そこはセルビア人が多数派を占めていましたが、クロアチアがユーゴ分離の時に、クロアチアが民族浄化を行い、セルビア系住民を追放してしまいます。
クライン地方は、セルビアがトルコに占領されていたときに、当時のオーストリア(ハンガリー)が、亡命セルビア人を定住させた地域でした。
このことが、セルビアとクロアチアの対立をより先鋭化させることになります。
・セルビアは、ビザンツ帝国の影響下で、南スラブ人が造った国です。
・ボイボディナ自治州は、セルビアがトルコに占領されていたとき、ハンガリーの支配下に入った地域ですが、ハンガリーの支配下にあったのが、ハンガリー支配下にあったのが200年程度であり、トルコの支配下に入る前に民族形成がされていたため、ハンガリーの影響が限定的だった地域です。また、少数のハンガリー人が住んでいます。
・コソボ自治州は、元々セルビアの首都があったところで、トルコの支配下に入ったとき、多くのセルビア人が逃げ出し、そこにアルバニア人が入ってきて定住した地域です。
・ボスニア・ヘルツェゴビナは、中世において、東西どちらの教会も影響を与える事ができなかった地域で、ハンガリーやセルビアに常に圧迫されていた地域です。
そのため、トルコが進出してくると、トルコに積極的に協力し、イスラムに改宗した地域になります。
・モンテネグロは、そもそもセルビアの一部でしたが、トルコが進出したとき、トルコの属国となる事で、独立を維持した地域です。
主に西欧(イタリア)とトルコとの交易の窓口になっていたところです。
・マケドニアは、中世において、セルビアとブルガリアが奪い合った地域で、ブルガリアの影響を強く受けた地域です。
そのためブルガリアでは、マケドニアを西ブルガリアと呼び、領有権を主張しています。第二次バルカン戦争の起こった原因の地域のひとつで、第一次世界大戦、第二次世界大戦で、ブルガリアが枢軸国についた原因ともなった地域です。
>日本人からみると顔も一緒にすら見えます。
元々が同一民族・人種ですから、当然の事です。
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この回答へのお礼

なるほど、事実関係が歴史や宗教の影響から複雑化していった経緯が分かりました。ありがとうございました!!

お礼日時:2009/08/12 12:31

ご質問は、研究者が分厚い本を書けるだけの複雑な内容です。


とっかかりとして下記の本でも読まれると良いでしょう。

ユーゴスラヴィア現代史 (岩波新書)
http://www.amazon.co.jp/dp/4004304458/
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この回答へのお礼

読みたい!
教えていただいてよかったです。ありがとうございました!!

お礼日時:2009/08/12 14:21

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