No.4ベストアンサー
- 回答日時:
(承前)
代入して読むと、ほんとうに単純な話ですが、純粋をめぐっては、おっしゃるような矛盾がみえます。
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005(篠田3)
(....)【経験的でない認識】のうちで、経験的なものをいっさい含まない認識を 純 粋 認識というのである。それだから例えば、『およそ変化はすべてその原因をもつ』という命題は、【経験的でない命題】ではあるが、しかし純粋ではない、『変化』という概念は、経験からのみ引き出され得るものだからである。
(....)第 一 に、ここに一つの命題があって、この命題が同時に 必 然 性 をもつと考えられるならば、それは【経験的でない判断】である。そのうえこの命題が、これまた必然的な命題だけから導来されたものであればそれは【絶対に経験的でない命題】である。また 第 二 に、経験はその判断に真の、即ち厳密な 普 遍 性 を与えるものではない、ただ(帰納によって)想定された比較的[相対的]な普遍性を与えるだけである(....) 。ところでもし或る判断が【経験が与えるのではない普遍性】をもつと考えられるならば(....)このような判断は経験から得られたのではなくて、【絶対に経験的でないことに妥当する判断】である。(....)例えば『物体はすべて重さをもつ』という命題のようなものである。これに反して或る判断に【経験でないこと】が本質的に属するような場合には、かかる【経験的でなさ】はこの判断が特殊な認識源泉から生じたこと、即ち【経験的でなしに認識する能力】によるものであることを示している。それだから、必然性と厳密な普遍性とは、【経験的でない認識】を表示するのに確実な特徴であり、この両つの性質は互いに分離しがたく結びついているのである。(....)
007(篠田5)
我々はかかる必然的な、また厳密な意味で普遍的な、従ってまた【経験的でない純粋判断】が、人間の認識に実際に存することを容易に証示することができる。その一例を諸学に求めるならば、数学の命題のなかからどれ一つを取ってきても事足りるのである。またこのような事例を、ごく有りふれた悟性使用に求めようとするならば『変化はすべて原因をもたねばならない』という命題でもよい。(....)もし原因の概念を、ヒュームがしたように習慣から引き出そうとしたら、この概念はまったく成り立たないだろう。ヒュームは、生起するものがそれに先だつところのものにしばしば随伴するところから、これら両つの表象を結合する習慣(従ってまた単なる主観的必然性)が生じたと言うのである。だが我々は、【経験的でない純粋原則】が我々の認識のうちに実際に存することを証明するのに、わざわざこのような実例をあげなくても、かかる原則が経験そのものを可能ならしめるために欠くことのできないものであることを【経験によらずに】証示できると思うのである。実際、もし経験の進行を規定する一切の規則がどれもこれも経験的なもの、したがって偶発的なものだとしたら(....)
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経験そのものを可能ならしめる、という言葉によって、すでにカントはこれからの仕事を示しています。直観の形式という考え方をみちびいていくのですね。こうして、ヒュームを叩き台に経験を括弧にくくってその可能性を原理へひきずりあげようとしているところがこの箇所の面白さだなと思います。
ご回答ありがとうございます。
>かかる(【経験的でない純粋な】)原則が経験そのものを可能ならしめるために欠くことのできないものであることを【経験によらずに】証示できると思うのである。
:という、amaguappa さんアレンジ付きの篠田さん訳を提示していただいたお陰で、やっと理解できたように思います。
特に、経験そのものを【可能ならしめるために欠くことのできないもの】という表現ですね。
中山訳の 007 では、
「わたしたちはこうした原則は、経験というものが可能であるためには不可欠であることを、アプリオリに証明できるはずなのである」
となっていますが、ここをもっと注意深く、素直に読むべきでした。
「変化というものは(新たな出来事[経験]なので)アプリオリではないが、その原因は(因果律という)アプリオリな原則に則っている」
となるでしょうか。
007 の『こうした実例を探すとすれば、「すべての変化には原因がある」という命題を示すことができよう』
という表現に過剰に拘ってしまったのがまずかったのだと思います。
辛抱強くお付き合いいただきありがとうございました。
みなさんの給水やバナナの差し入れのお陰でなんとか続行できそうです。
No.5
- 回答日時:
あら、これは、お恥ずかしいことで。
こちらこそ失礼しました。
>変化という概念は、経験からしか引き出せないものだからである。(005)
>原因が結果と結びつく必然性という概念と、この[因果律という]規則が厳密に普遍的なものであるという概念が明らかに含まれているのである。(007)
この件も、余計な修飾語に惑わされなければ、005では、「変化」についての記述で、007では「原因と結果」或いは「因果律」に関する記述でだと理解できるのではないでしょうか。
ついでですから、もう一度、確認しておきますが、
カントの場合は、あくまでも、カントの説として、
「感性」・「悟性」・「理性」を厳密に区別して、人間の認識の構造を説明しています。その際、重要なことは、経験的なことは現象ですから、学問の基礎づけとしては、不十分だから、経験にかかわらない、つまり、アプリオリとか純粋といった言葉を使って、感性における認識と悟性における判断を区別するとともに、その認識や判断のうちにおいても、経験的なものとアプリオリなものを、区別するわけです。
物理学の本でしたら、確かに仰るように、池谷さんの本が面白いですね。
他には、スティーブン・ピンカー、だったか、NHK出版から、二、三冊シリーズででていますが、面白かったですね。武田暁氏は、専門的すぎて、少々難関ですか、眺めるのもよいかも。分子生物学は、最近、専門的なものが多くなって、例えば「時計遺伝子」だけを研究するとか、で、ちょっと良書を現在は思いつきませんね。
失礼しました、頑張って読んで下さい。
ご回答ありがとうございます。
>この件も、余計な修飾語に惑わされなければ、005では、「変化」についての記述で、007では「原因と結果」或いは「因果律」に関する記述でだと理解できるのではないでしょうか。
:まったくおっしゃるとおりです。
#4さんに提示していただいた「(経験を)可能ならしめる」という篠田さん訳の表現で、やっと気がつきました。
他のみなさんのお陰で、固い脳がある程度こなれていたお陰でもあると思って感謝しています。
>アプリオリとか純粋といった言葉を使って、感性における認識と悟性における判断を区別するとともに、その認識や判断のうちにおいても、経験的なものとアプリオリなものを、区別するわけです。
:悟性の定義自体まだあやふやな段階ですが、この記述を参考にしながら読み進めます。
また書籍のご紹介もありがとうございました。
No.3
- 回答日時:
この分別に謎が隠されているのではと思われる気持ちはわかるのですが、わたしは、Q2でご質問の箇所は、「経験的でないもの」を代入できるところにすべて代入して読むくらいの感じで済ませ、矛盾に目を瞑っていいところなのではないかなと思います。
(つまり矛盾はあると思います。)ところで、手元にある篠田英雄訳(岩波文庫)をめくってみますが、Q2ご質問の箇所につづく007の後半と008が面白く、ヒューム批判になっているところはちょうど、今日でもまだ「学習か、生得か」とされているさまざまな認知処理 の議論の初端だなと思うと感慨深い箇所です。
(たとえば族類似的構造といって、対象を認知するためには概念がなんらかの制約をうけているのですが、この制約が学習なのか生得なのかさえ検証できていない。推論というもののプロセスについても同様の議論があります。生得となれば誰でも同じであるはずで、カントの「認識能力の純粋使用」にかけて人間が同じはずであるということと、さほどかわらない。)
カントからそうした問題提起を受け取るだけで、今日的役割は済んでいるのではないかなと思えます。当時の科学の限界を超えて、21世紀に概念をめぐってカントは役に立っているというわけです。
「必然性と厳密な普遍性」を「経験的なもの」に対置した図式を、筆を尽くして書いたところで経験的限界があるにきまっているとおもう不埒者ですが、カントは偉大でそんなことはなく誤解だとしても、図式を正しく見失わないように遠くまで読み進めることのほうが、小さな誤解を払拭することよりも大事のように思います。
ためしに上記のすさまじく寒い【対立概念による代入】を篠田訳にほどこしますと、こんな感じになります。
(つづく)
No.2
- 回答日時:
hakobuluさん。
こんばんわ。解釈、とか、理解、とか、主張、とか、
何でもいいんぢゃないかなあ。
( )内に入れる言葉に、
そんなに拘らずに言葉を放ってる、
こともある、のだろうなあ、と思うので。
どうも、こんばんは。
ご回答ありがとうございます。
今回の質問の意図は、#1さんへのお礼をご参照いただければと思います。
>( )内に入れる言葉に、
そんなに拘らずに言葉を放ってる、
こともある、のだろうなあ、と思うので。
:いや、カントさんに対して畏れ多くも心強い?お言葉です。^^;
まあ、私としても根がづぼらな人間なので、
>なんでもいい
:と思うのは得意なのですが、
やはり、ある程度は納得した上で、なんでもいい、と思いたいな・・・。
とか思っているわけです。
No.1
- 回答日時:
「下の( )内に適切な言葉を入れよ」という問題があったとして、
「命題」「認識」「判断」どれも入れても間違いにはならないでしょうか。
『「すべての変化にはその原因がある」という( )』
ちょっと、たまたま見ましたが、確かに失礼ですね。
ご回答ありがとうございます。
先の質問にも回答していただいてたんですね。
今、じっくりと読んでいる最中です。
「口蹄疫は危険であるという命題」
「口蹄疫は危険であるという認識」
「口蹄疫は危険であるという判断」
という表現はどれもできそうに思えますし、且つ同じ意味だと思うのですが、これと同様に、
「すべての変化には原因があるという命題」
「すべての変化には原因があるという認識」
「すべての変化には原因があるという判断」
という表現が(どれも)成立し、且つ同じ意味であるならば、純粋理性批判における、
『「すべての変化にはその原因がある」という命題はアプリオリな命題であるが、純粋な命題ではない。変化という概念は、経験からしか引き出せないものだからである。(005)』
という記述と、
『人間の経験のうちには、このように必然的で、厳密な意味で普遍的である判断、すなわち純粋でアプリオリな判断が実際に存在することを示すのは、たやすいことだ。~~~。日常的な知性の利用のうちに、こうした実例を探すとすれば、「すべての変化には原因がある」という命題を示すことができよう。この命題で使われている原因という概念には、原因が結果と結びつく必然性という概念と、この[因果律という]規則が厳密に普遍的なものであるという概念が明らかに含まれているのである。(007)』
という記述は矛盾していることにならないだろうか、という疑問が生じたわけです。
無論、カントが矛盾を放置しているはずはありませんから、明らかに私の勘違いがあるわけでしょうが、(純粋理性批判における表現の)どの箇所を勘違いしているのか良くわからないという悲惨な状況に陥っていまして、もしかすると「命題」「認識」「判断」という言葉の(哲学的)解釈に私が疎いためであるかもしれないという観点からの質問でした。
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