以下の論評から実際に「ソロモンの金の盾」が発見される可能性に関してご意見をお願いします。なお、下記の見解は旧約聖書のみではなく考古学的・歴史的資料に基づいています。シュリーマンのトロイ発見もギリシャの「オデッセイ」に端緒があります。なお、TANUHACHIさんはご回答をご遠慮ください。
アドベンチャー映画シリーズ「インディ・ジョーンズ」の第一作「レイダース/失われたアーク(聖櫃)」をご覧になった方は多いことだろうと思います。この映画の監督はスティーブン・スティルバーグ、主演はハリソン・フォードです。この映画において、ハリソン・フォードが演ずるプリンストン大学で教鞭を執る高名な考古学者インディアナ・ジョーンズ教授は、世界中の宝物を探し発見するというトレジャーハンターでもありました。ある日、彼のところにナチス・ドイツがタニスの遺跡を発見して聖櫃(アーク)の発掘に着手したという情報が飛び込みました。実際に、この映画の中では、タニスの地下に「失われた聖櫃」が埋もれていることになっていますが、これは全く根拠のない想像の産物であるとも言えません。
旧約聖書の列王記略上14章25,26節では「レハブアム王の治世第五年に、エジプトの王シシャクがエルサレムに攻め上って、主の神殿と王宮の宝物を奪い取った。彼はすべてを奪い、ソロモンが作った金の盾もすべて奪い取った」(新共同訳)と記されています。このシシャクは、歴史的にはエジプト第22王朝の創始者・エジプト王ショシェンク1世(治世は紀元前945年から924年)であると理解されています。そして、タニスはエジプト第22王朝の政治的中心地であり、このことからシシャク(ショシェンク1世)がイスラエルから聖櫃を当時の政治的中心地であるタニスに持ち帰り、やがて聖櫃はタニスに埋もれたであろうという推測がストーリーの基礎になっていると思われます。
しかしながら、列王記略上14章25,26節には、シシャク(ショシェンク1世)が「神殿と王宮の宝物を奪い取った。彼はすべてを奪い、ソロモンが作った金の盾もすべて奪い取った」と記されていますが、聖櫃を持ち去ったとは記されていません。もっとも、シシャク(ショシェンク1世)の奪い取った「神殿と王宮の宝物」の中に聖櫃が含まれていたという推測も成り立ち得ます。しかしながら、この推測は当たっていません。なぜならば、「金の楯」に関しては具体的な言及がありますが、「聖櫃」関しては具体的な言及がないからです。そして、当時のエルサレムの神殿で「聖櫃」は至聖所にあり、神殿の中では最も目立ったイスラエルの宗教上の象徴的存在でした。したがって、「金の楯」に関して具体的に言及しながら、「聖櫃」に関しては具体的に言及しないということは考えにくいのです。
実際、その後のヨシヤ王(治世は紀元前640年から609年)の時代に「聖櫃」に関する言及があるのを最後にして「聖櫃」は所在不明になります(歴代誌略下35章3節)。したがって、「聖櫃」は、ヨシヤ王の時代までは存在していたことになり、シシャク(ショシェンク1世)がタニスに持ち去ったのではありません。エレミヤは「人々はもはや、主の契約の箱について語らず、心に浮かべることも、思い起こすこともない。求めることも、作ることももはやない」(エレミヤ書3章16節)と述べており、この時点(紀元前626年頃)で「聖櫃」は既に喪失していたことが窺われます(エレミヤは紀元前627年から活動を開始しその後バビロン捕囚を経験し紀元前568年にエジプトに連れ去られた)。
ところで、それ以前、紀元前586年には、新バビロニア王国のネブカドネザル2世がエルサレムを征服し神殿を略奪していることから、バビロン捕囚の際に、ネブカドネザル2世が「聖櫃」を持ち去ったという説も成り立ち得ます。しかしながら、「聖櫃」は、ネブカドネザル2世が持ち去った宝物としては列挙されていません(列王記略下25章8節から16節)。先に述べたように、「聖櫃」は極めて重要な宗教的象徴であったので持ち去られたならば、言及されないはずはありません。ちなみに、エレミヤが活動を開始した紀元前627年はヨシヤ王の治世であり「聖櫃」が最後に目撃された時代であったので、エレミヤ自身が「聖櫃」喪失の経緯を知っていた可能性もあります。すなわち、紀元前627年から紀元前586年の間に「聖櫃」は喪失したか破壊された可能性が最も高いことになります。エレミヤの表現の仕方から、エルサレムの陥落に際し、異教徒の新バビロニア軍に渡さないためにイスラエル人が自ら「聖櫃」を破壊した可能性が最も高いと思われます。
最後に、タニスに埋もれている可能性があるのは「聖櫃」ではなく「金の楯」です。列王記略上14章25,26節には、シシャク(ショシェンク1世)が「・・・ソロモンが作った金の盾もすべて奪い取った」と記されています。では、「金の楯」とはどのような宝物でしょうか?ソロモンの黄金と栄華は有名ですが(ソロモン王の歳入は666キカル・金約22.8トンに相当する)、列王記略上10章16,17節は、「金の楯」に関し、「ソロモン王は延金の大盾二百を作った。大盾一つにつき用いた金は六百シェケルであった。延金の小盾も三百作った。小盾一つにつき用いた金は三マネであった。王はこれらの盾を「レバノンの森の家」に置いた」と記しています。ところで、600シュケルは約6.8キログラムですから、「金の大盾」200に用いられた金の重量は4080キログラム、3マネは約1.7キログラムですから、「金の小盾」300に用いられた金の重量は510キログラムとなり、金の総重量は4590キログラムになります。現在の金相場からすると、金時価総額196億円程度ですが、ツタンカーメンの黄金のマスクが約300兆円の価値と評価されていることからすると、歴史的・宗教的価値を加味すれば、300兆円をはるかに上回ると推定されます(ただし、アメリカの国家予算でも購入できないような価格の宝物はあってないような机上の価格の宝物であり、購入できる者は誰もいません)。これがタニスから発掘される可能性はあることになります(タニス遺跡の発掘調査は現在に至るまであまり進んでおらず、未発見の遺跡が多数存在すると推定される)。
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
個人的な見解でよろしければ・・・。
エジプト王が、他国の権力の象徴である金の盾をそのまま保管しておく理由が無いのではないか。
仮にシシャク(ショシェンク1世)がソロモン王を尊敬していて保管を命じたとしても、
その子孫が果たしてそのままにして置いたろうか。
金は非常に加工がしやすい金属であり、その価値を考えても、小さな指輪程度の加工品ならともかく、
盾のように大きな塊を無価値のまま放っておくはずは無いと思われます。
ツタンカーメン王のマスクに関しては、近年の彼に関する本などを見ると、
日本古代の神々のように、当時は封じ込めて表に出してはいけない存在だったように感じます。
ツタンカーメンの墓が暴かれずに済んだ一因が、ここにあるかもしれません。
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