No.2ベストアンサー
- 回答日時:
基本的には体言(名詞系)が用言(動詞系)に、さらに相言(形容系)にと転成するとともに、その相言から用言に、さらに体言へと再転成もなされる場合もあり、そのような多岐に亘る転成を経て日本語の語彙が豊かになって来ている経緯が窺えます。
「似つかはしい(似つかわしい)」の形容詞語尾「はし(わし)」は、「し」だけの単純接尾辞に対して、より一層語根の意味を振幅させて新しい意味を増殖させる「肥大接尾辞(Hypertrofhic suffix)」の一つと見なされます。
1.
<自動詞四段>狂ふ(くるう) →<形容詞化>狂ほし(くるおしい)
↓
<他動詞四段>狂ほす(くるおす)→<形容詞化>狂ほし(くるおしい)
<他動詞下二>狂はす(くるわす)→<形容詞化>狂わし(くるわしい)
2.
<自動詞上一>似る(にる)←似る(のる)
↓
<自動詞四段>似合ふ(にあう)→<形容詞化>似合はし(にあわしい)
<自動詞上一>似る(にる)←似る(のる)
↓
<自動詞四段>似付く(につく)→<形容詞化>似付かはし(につかわしい)
*<形容詞化>似付くらしい(口語形のみ)
3.
<名詞>苦(くるしび)(くるしみ)→<形容詞化>苦し(くるしい)
→<動詞化>苦しぶ(くるしむ)
この回答への補足
詳細なご回答ありがとうございます。とても見やすく整理していただきました。不勉強な私には助かります。
「似付く」→(動詞未然形に肥大接尾辞「はし」をつけて)形容詞化「似付かわし」
という結論でしょうか。
単純接尾辞で造語しての「似つかしい」についてはどう思われますか。ダメですか。客観的には申せませんが「につかしい」はさすがの日本人にも意味を特定できない音の並びになるからで、肥大増幅目的では全くなかったという真相はいかがでしょうか。
「似つかわしい」はずっと気になっていた言葉でした。使う言葉なのですが違和感があって気味悪い。その理由は今わかりました。教えて頂いた肥大接尾辞の介在です。そういう挟む文字があるのだろうという感じはしていましたが私の教養と日本語研究心に対しては不顕性でした。
これまで無意識に類義語の「相応しくない」よりも攻撃的な用語として「似つかわしくない」を認識してきましたが、肥大接尾辞の分だけ、機能主義ではなく文法主義的には間違いなく、強い表現だと断定できますよね?それから意味も用法も強い表現だと決定して宜しいでしょうか。
肥大化させる日本語の例が他にもありましたらご紹介いただきたいです。「はし」の他の例でもあれば。因みに馬鹿なので確認したいのですが「は」+「し」ではなく「はし」ですよね。「は」を他の接尾辞の転成につかえないのかなどと妄想しました。
3.苦しむのは親が苦しいからで「苦」が根本なのですね。苦だね、苦かね、が原始でしょうね。概念である名詞が起源。動作じゃない単語はやはり名詞→形容詞→動詞が多くなりますか。
いつも私に新しい言葉を与えて下さり有り難うございます。毎回、日本語趣味に誘われます。
せっかくご紹介いただいた日本語意味史序説は図書館にありませんでした。
回答者さんの蔵書こそが図書館です。回答者さんのような人が図書館を仕切らないといけません。今の日本は図書館を無料の娯楽施設にしています。日本中それが公式の方針みたいですよ。非常に問題がありますね。堕落、厚顔無恥です。司書ども本から何を学んだのでしょう。娯楽施設にしたいそうです、社会福祉としても。図書館は公的機関を最も象徴しています。お花畑すぎて、言葉を失います。病気なった時の専門書充実より流行小説スポーツ新聞各紙が社会福祉とは愚民の実態です。施設が置き引きやら歓楽街化するのは当然の成り行きです。
回答者さんは街の図書館などご利用されないのでしょうか。
No.3
- 回答日時:
#2です。
>「似付く」→(動詞未然形に肥大接尾辞「はし」をつけて)形容詞化「似付かわし」
という結論でしょうか。
:
辞書などではそういう説明なのですが、では、それで何が分かったのかといえば、甚だ心許ないわけで、次のような幾通りかのアプローチを考えてみました。
1.未然形+肥大接尾辞「はし」
この場合、なぜ未然形接続なのかという説明が未詳です。その結果として肥大接尾辞「はし(わしい)」の存在も曖昧さを否めなくなります。
連用形「似付き」+形容語尾「し」→「似付きし(につきしい)」ではいかがなものか。
これは、「相応しい」や「似つかわしい」の元ともみなされる「付き付きし」からの類推でもあります。
2.補助動詞「つく」の変化形への揺曳
名詞「似」の動詞形「似す(にせる)」は他動詞でなので、形容詞としての状態性を表す語形としては、その結果態としての自動詞形「似あふ」もしくは「似つく」となった際に、その補助動詞の変化形をも引き継ぐ=揺曳することになった。
「似あふ」→「似あはし(似あわしい)」であり、「似つく」→「似つかふ」→「似つかはし(似つかわしい)」。
3.元来「付く」そのものが「良く合う」意味なのであり、その示唆強調の複合語としての頭語「似」とみなす。
補助動詞「つく」を更に踏み込んで、「付き付きし」である「付く」の頭語とみるならば、「似付きし(につきしい)」とも類推可能であり、その現代語調である「似付かしい」もあり得そうに思えます。
「馴れ付く」=「懐(なつ)く」→「なつかし(なつかしい)」
4.自動詞別形「似合ふ」→「似合わし」との整合
特に1.のような「肥大接尾辞「はし」は未然形を取る」という前提を立てなくとも、その動詞終止形が「似合ふ」のように「~ふ」の形を取れば、「似付かふ」の未然形「似付かは」+形容詞語尾「し」で「似付かはし(似付かわしい)」が自然に生成される。
とまれ、基本的には、
その輪郭やイメージがその想定したものと対比して、全体として「似る」という、その変化形「似合う」→「似合わしい」に加えて、より似合うという強調形での「似つく」→「似つかわしい」「似つくらしい」が展開していると見られます。
一方、「ふさわしい」については、
<自動詞四段>「ふさふ(ふそう)」→<形容詞化>「ふさはし(ふさわしい)」。
「相応(ふさ)ふ」の原義は、多くのチェックポイントを立てて、その数々があるべき原型とマッチング(相応)するという、具体的照応事由を踏まえた形でのいわば帰納的形容といえます。
ここで、社会的役割や人間関係などそこに要求されてしかるべき人品・能力をチェックの上での<分析評価>された場合は、いわば<帰納的事由>により正の調和性を以てシックリした「相応しい」であり、一方、その視覚的な外見や行動パターンなどの印象などを統括しての<(正負に関わらない)イメージ判断>というか、いわば演繹的な判定により適合するという「似合わしい」、更にはぴったり当てはまる「似つかわしい」とみなしてはいかがでしょう。
ですから、「相応しい」とは、話者と相手が対等な関係で、もしくは個々の思惑を離れての客観的事由を以てする正の評価結果に因むものであり、片や「似つかわしい」は、話者の一方的な、場合によっては相手に開示されない正負両面での適否判断であるために、絶対的権威の廃れつつある今日では、もはやワンサイドの押しつけがましいニュアンスが籠もりやすい傾向があるので迂闊には遣いがたいとも思えます。
いまどきでは相手の如何に関わらず、とにかく「フサワシイ」と言っておけばノープロブレムですから。
参考:吉田金彦「国語意味史序説」(明治書院)
「なお動詞を語根とする接辞動詞に珍(め(目)ヅラ)シ・恥(ハヅカ)シ・傲佷(イスカ)シ・短(ミジカ)シがあるが、これらの構語法は分析が難しい。珍(めヅラ)シは連体形のめヅルの被覆形派生と見るよりも、接辞シの肥大形ラシがめズに膠着したとする方が原型的であろう。恥(ハヅ)カシ・傲佷(イス)カシ・短(ミジ)カシのカシも肥大形接辞である。」(125頁)
この回答への補足
毎回お礼が同じになりますが敬服しています。やはり勉強して頭に入っている人は違います。
1.未然形接続ならその理由があるわけですか。凡庸な学生のように未然形接続するものだとしか考えませんでした。基本的なレベルの差を感じています。未然形接続の例は未然形に似つかわしいものばかりなのでしょうか。しかしほんのちょっと考えるだけで違ってくるものですね。
動詞未然形接続は動詞から形容詞を作る場合の規則ではないのですか?他の形容詞もそうなっているという。私は文法の知識がないのですいません。反省しています。
2.「付く」→「つかふ」はどのような揺曳なのですか。「つかふ」とは「使う、遣う」でしょうか。似てつかわす、でしょうか。
4.似付くではなく似付かふという言葉があったのでしょうか。付かふという言葉が有り得るのか。
訳もなく誕生した言葉に対して特例化しないためには説明1が落としどころなのかも知れませんね。
漢字で語源は辿れない、むしろ漢字が字の派生の分岐点になるという感じでしょうか。「つかう」→「つく」になるもんなのでしょうか。ここら辺は国語の造詣の深さに頼らざるを得ません。私は見識が狭いので。
言えることとしては、似つかわしいは、もはや1個の言葉なのですよね。著しいは丸呑みできますが「似付かわしい」は分解したくなるんですよ。
No.1
- 回答日時:
「狂う」という動詞の未然形は「狂わない」です。
狂わしいも、動詞の未然形を使って、形容詞化しているのです。「似つかわしい」の場合、「似つかう」でないけど、「つかう」の未然形「つかわない」から来ていると思います。急ぐ、忙しいは漢字が違うけども、もともとは「いそぐ」から「いそがしい」ができたと思われますね。昔、漢文を読むときに、漢字に和語(日本語)を当てはめて読んでいったのですから、和語では同じ語源の言葉を、違う漢字で表しても不思議ではないです。
基本的に、形容詞の方が後だと思われますよ。
例えば、きいろい。漢字で書けば、黄色い。これなんて、名詞に~いをつけて形容詞化した典型だと思われます。茶色いも同じですね。こう考えると、赤い、青い、白い、黒いも同じです。
動詞、名詞に、~しい、~いをつければ形容詞。勿論、純粋な形容詞とみられるものもありますがね。いちじるしい、とか。
この回答への補足
ご回答ありがとうございます。
「わ」が、狂うとは違うのかなと思いまして。
似付く、付かない、ではないのでしょうか。
形容詞は後であり、形容詞からの動詞化はない。形容詞→名詞は、うまい→うまみ、うまさ、でしょうか。名詞が先でしょうか。
ご回答ありがとうございます。
同訓異字を漢字で分別するのはだから根源的じゃないですよね。同訓同根。
なるほど黄色いは色をかませた形容詞化なんでしょうね。
おっしゃられる純粋な形容詞という視点にときめきました。探してみたくなりました。著しく純粋な形容詞、いいですね。
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