
歌詞の日本語訳から男の子が語る要素を抜き出すと…。
・王冠とシッポをもった
・楽しく遊ぼう。とか、お前が大好きだ、可愛いその姿が。などと子供を誘拐する変質者のような誘惑をする
王冠と言ってるくらいだから王で間違いなく、尻尾があるので人間ではないのでしょうけど、王様直々に子供をさらう、連れて行くというのはどういう存在なのか?
結末から考えると死神というべきなのでは。
歌詞はドイツの詩人ゲーテによるもので、異文化ゆえ神の定義その他もろもろが異なるため、日本語に訳す際に意味合いがズレてしまったのでは?
と思うのですが…。
私が持つ魔王のイメージはRPGなどに出てくる強大な恐ろしい敵なのですが、このイメージこそ本来の意味からズレているのでしょうか?

No.1ベストアンサー
- 回答日時:
これは少しややこしい話になります。
ゲーテはこの詩を、ヨハン・ゴットフリート・フォン・ヘルダーが翻訳したデンマークの民間伝承のバラード「ハンノキの王の娘」を下敷きにして書きました。しかしこれは、「妖精の王」を意味する「Ellerkonge」というデンマーク語の誤訳です。正しくは「妖精の王の娘」という題でした。「妖精の王」に当たるドイツ語は「Elfenkönig」です。デンマークの伝承詩の内容は、翌日結婚式を控えた青年が急いで帰る途中、妖精の王の娘に一緒に踊ってほしいと呼び止められます。断る青年に、娘は黄金の拍車をあげるとか、絹のシャツをあげるとか、山積みの金をあげるとか言って引き留めようとしますが、青年がどうしても聞かないので、病にかけられてしまいます。翌日花嫁が赤いじゅうたんを上げると、死んだ青年がそこにいた、という物語です。
また、もう一つ下敷きになっているものがあって、それはゲーテがイェーナに滞在中に聞いた実話、ある農民が、病気の子供を馬で大学病院の医者の所へ連れて行った、というものです。
この二つを掛け合わせたものがゲーテの「魔王」、「ハンノキの王」になるわけですが、もともと「妖精の王の娘」という題材だったデンマークの伝承詩の要素と、ゲーテがヘルダーの誤訳から逆にイメージを膨らませて行った「ハンノキの王」が混ざっているともいえます。ドイツには、古くから山の霊とか森の霊とかの汎神論的な信仰もあったので、そういうものをイメージしたという意見もあります。また、日本の学校では、子供が熱病にかかっていたと教えられるそうですが、これは、農民の実話の方から考えるとわからなくもありませんが、詩の中で子供は「Erlkönig hat mir ein Leids getan!」と言っており、これは危害を加えたという意味です。デンマークの伝承詩でも、妖精の娘がオルフという青年を病にするときに、心臓の上を叩くという描写になっており、これを踏襲した表現ととるなら、子供は最初から病気だったのではなく、馬の背の上で「ハンノキの王」に病にされたという解釈もできます。
「王冠とシッポ」ですが、「王冠」の方はその通りでよいのですが、シッポと訳されている「Schweif」は、一般に動物などのシッポを意味する「Schwanz」とは違い、「schweifen」(さまよい歩く)という動詞から来た言葉です。長く、ふさふさした毛におおわれた尾のことも言いますが、「彗星の尾」のような比喩的な意味にも使い、人文書院のゲーテ全集に収録されている生野幸吉の訳では、「裾長く曳く」と訳されています。これも複数の解釈が可能です。
詩全体の解釈については、日本でもいろいろ書かれていますが、本国ドイツでもいろいろな解釈があります。最も多いのは、「魔王(ハンノキの王)」は実際にいるのではなく、病気の子供が見る幻影にすぎないという解釈です。もう一つは、ハンノキの森(しばしば沼地になる)の自然の魔力、害を与える魔力の信仰があったという考え方で、この場合、「ハンノキの王」は誤訳ではなく、ゲーテが意図して書いたものとされます。無防備な人間の肉体と生命に未知の力が加えられ、ハンノキの王が人間をあの世に連れて行くという解釈になります。解釈はほかにもいろいろあり、「楽しく遊ぼう。とか、お前が大好きだ、可愛いその姿が。などと子供を誘拐する変質者のような誘惑をする」と指摘なさっている部分については、社会学者や心理学者から、子供の虐待、性的虐待という解釈が出されています。「良い父親」と「悪い父親」がいて、「魔王」は「悪い父親」の象徴である、などの解釈で、この場合子供の死は、肉体的な死ではなく精神的な死とされることが多いようです。
なお、私はコンピューターゲームに親しんだ世代ではないので、RPGのことはわかりません。悪しからずご容赦ください。
物凄くややこしい…。
やはり、誤訳やニュアンスの違いがあったのですね。
ベースとなる伝承や神話の体系が違うのに無理矢理当てはめた結果ズレた…ということですね。
妖精の王、ハンノキの王と魔王では全然違います。
尻尾にまで異なる意味合いが込められていたとは。
こんなにも深い謎を抱えていた歌だったのですね。
詳しい話をありがとうございました。
なおRPGの魔王についてですが…。
Wikiでは定義のひとつとしてコレが挙げられています。
本来は仏教用語で、六道輪廻世界観において欲界の第六天にあたる他化自在天にあり、仏道修行を妨げる「第六天魔王波旬」のことである。
後にその他の神話や伝説における邪悪な神格の頂点、もしくは悪魔や怪物、妖怪などの頭領の呼称として幅広く使用されるようになる。尊称、もしくは魔王の中の魔王を指す呼称として「大魔王(だいまおう)」がある。
特にキリスト教のいうサタン(ルシファー)の訳語として用いられ、時に「魔王サタン」などと称される場合がある。英語の the Devil(大文字始まり)や the archenemy に相当する[1]。
RPGに出てくる魔王はこのイメージに近いです。

No.2
- 回答日時:
>なおRPGの魔王についてですが…。
>Wikiでは定義のひとつとしてコレが挙げられています。
このイメージならわかります。回答No.1を書いているときは、なぜ題名の日本語訳が「魔王」になったのかわからなかったのですが、調べたところ、明治時代に初めてこの詩を日本語に訳した大竹みどりという人が、翻訳に際してデンマークの原詩も参照したらしいのです。それで、ヘルダーの「Erlkönig(ハンノキの王)」が誤訳だと気づいて、もとの意味の「妖精の王」からまず「妖魔王」と訳し、それから「魔王」に直したということです。デンマークの詩の題名をこう訳すのはありだと思いますが、ゲーテの方は「ハンノキの王」のイメージで作詩をしているので、こちらの題名としてはふさわしくなくなってしまったというわけです。原詩のタイトルの誤訳を直したことで、逆にゲーテの方は誤訳のようになってしまったという皮肉な結果です。しかし、「魔王」という題名が一般的になってしまったため、今日まで踏襲せざるを得なくなったということでしょう。そういう例はほかにもあって、マーラーの「亡き子をしのぶ歌」や「子供の魔法の角笛」も、正確には「子供の死の歌」、「子供の不思議な角笛」と訳すのが正しいという人もいます。まあ、「魔王」の方が「ハンノキの王」よりもインパクトがあって覚えやすいので、仕方ないですけれど。
参考URL
http://www.jnpc.or.jp/files/opdf/476.pdf
さらなる詳しい話をありがとうございます。
誤訳やイメージ先行の結果今に至るわけですね。
なんというか…洋画を邦訳したら微妙なタイトルになってしまった、みたいな感じですね。
あの曲が『ハンノキの王』というタイトルだったらここまで有名にはならなかったでしょうね…。
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