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スピン1/2の粒子が3つあったとき、全角運動量の立場から基底は
|方位量子数,磁気量子数>>とすれば
|3/2, 3/2>>
|3/2, 1/2>>
|3/2, -1/2>>
|3/2, -3/2>>
|1/2, 1/2>>
|1/2, -1/2>>
の6つあるの教わったのですが、合成系としての基底は
↑=1/2、↓=-1/2としたら
|↑↑↑>
|↑↑↓>
|↑↓↑>
|↑↓↓>
|↓↑↑>
|↓↑↓>
|↓↓↑>
|↓↓↓>
の8つになると思います。
表し方の違いで基底の数が変わるのはおかしいと思っているのですが、上の基底の取り方は正しいのでしょうか。

質問者からの補足コメント

  • うれしい

    ご回答ありがとうございます。
    正しく理解できているか確認のためにもしよければ教えていただきたいのですが、この例で言うと、3つのスピンをs₁,s₂,s₃としてS=s₁+s₂+s₃としたときに、3粒子系のハミルトニアンが例えば
    H=-J(S²-s₁²-s₂²-s₃²)-μH(s₁,s₂,s₃のz成分の和)
    (J,μ,H:定数)
    だったら、
    |1/2,+1/2>と|0, 0>|↑>に対応する固有エネルギーが縮退して、
    |1/2,-1/2>と|0, 0>|↓>に対応する固有エネルギーも縮退している
    という解釈は正しいでしょうか。

    No.1の回答に寄せられた補足コメントです。 補足日時:2016/08/09 14:44

A 回答 (6件)

> 表し方の違いで基底の数が変わるのはおかしい



はい。おかしいです。


> 上の基底の取り方は正しいのでしょうか。

正しくないです。スピン1/2の3粒子系には、S=3/2 のスピン四重項がひとつと、S=1/2 のスピン二重項がふたつあります。基底の数は 4 + 2 + 2 = 8 で、2×2×2 に等しくなります。


S=1/2 のスピン二重項がふたつありますから、全スピン量子数に基づいた具体的な基底の取り方は、ユニークには決まりません。以下で述べる基底のつくり方はひとつの例で、ひとつずつ順にスピンを合成していくやり方です。

まず、二つのスピン1/2の粒子のスピンを合成します。この合成により S=1 のスピン三重項と、S=0 のスピン一重項が得られます(数式が複雑になるので規格化定数は省略します)。

|1,+1> = |↑↑>
|1, 0> ∝ |↑↓> + |↓↑>
|1,-1> = |↓↓>
|0, 0> ∝ |↑↓> - |↓↑>

つぎに、得られた合成スピンと残りのスピン1/2の粒子のスピンを合成します。S=1 と s=1/2 を合成すると

|3/2,+3/2> = |1,+1>|↑> = |↑↑↑>
|3/2,-3/2> = |1,-1>|↓> = |↓↓↓>
|3/2,+1/2> ∝ (S-)|3/2,+3/2> ∝ √2|1,0>|↑> + |1,+1>|↓> = |↑↓↑> + |↓↑↑> + |↑↑↓>
|3/2,-1/2> ∝ (S+)|3/2,-3/2> ∝ √2|1,0>|↓> + |1,-1>|↑> = |↑↓↓> + |↓↑↓> + |↓↓↑>

のようにスピン四重項が得られ(S±は昇降演算子)、これと直交するスピン二重項は

|1/2,+1/2> ∝ |1,0>|↑> - √2|1,+1>|↓> ∝ |↑↓↑> + |↓↑↑> - 2|↑↑↓>
|1/2,-1/2> ∝ |1,0>|↓> - √2|1,-1>|↑> ∝ |↑↓↓> + |↓↑↓> - 2|↓↓↑>

となります。

さいごに、S=0 のスピン一重項と s=1/2 を合成すると、もうひとつのスピン二重項が得られます。

|0, 0>|↑> ∝ |↑↓↑> - |↓↑↑>
|0, 0>|↓> ∝ |↑↓↓> - |↓↑↓>

このスピン二重項は先に得られたスピン二重項と直交しますので、これらの二つのスピン二重項とスピン四重項はあわせて直交基底になります。基底の数は 4 + 2 + 2 = 8 になります。


少し説明を端折っていますし、数式に間違いがあるかもしれません。分かりにくいところや間違いと思われるところがありましたら、補足欄でお知らせください。
この回答への補足あり
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siegmund です.



> 3粒子系のハミルトニアンが例えば
> H=-J(S²-s₁²-s₂²-s₃²)-μH(s₁,s₂,s₃のz成分の和)
> (J,μ,H:定数)
> だったら、
> |1/2,+1/2>と|0, 0>|↑>に対応する固有エネルギーが縮退して、
> |1/2,-1/2>と|0, 0>|↓>に対応する固有エネルギーも縮退している
> という解釈は正しいでしょうか。

既に 101325 さんが回答されておられるように,その解釈で正しいです.
状態を S_z の固有値で分類記述していて磁場が z 方向にかかっていますので,
磁場がかかっても固有状態はそのまま,エネルギーは -μHS_z だけずれるだけです.

上のハミルトニアンで,s_1^2 などは定数ですので,実質的には
H = -J(s_1・s_2 + s_2・s_3 + s_3・s_1) - μH(S_z)
と同じことです.
3つのスピンを

   3
  1 2

と正三角形に配置してみます.
すぐわかるように,対称性があります.
一つは120度(π/3)回転の対称性.
もう一つは頂点3から12の中点におろした垂線に関する左右反転対称性です(つまり,12 を入れ替えて 3 はそのまま).
|S=1/2,S_z=1/2>> の状態の正規直交基底はいくらでも取り方がありますが,
回転対称性についての固有状態で記述したのが No.2 の(8)(9)です.
ω=exp(2πi/3) が π/3 回転を表しています.
一方,垂線に関する左右反転対称性の固有状態で記述したのが
No.2 の(2)と (1/√6)(↑↓↑ + ↓↑↑ - 2↑↑↓) で(No.1 で101325 さんが書かれています),
前者は左右反転すると符号が変わり,後者では左右反転しても符号が変わりません.

J が正の時は強磁性的,負の時は反強磁性的といいます.
J が正の強磁性的の場合は ↑↑↑ (あるいは全部逆)でどの相互作用も一番エネルギーが低くできるようになります.
一方,J が負で反強磁性的な場合は事情が複雑です.
スピンを単純に矢印(古典スピン)と考えても,1 を↑,2 を↓とすると 12 間の相互作用はエネルギーが低くなりますが,
3 を↑と↓のどちらにしても 13 間あるいは 23 間の相互作用が高いエネルギーになってしまいます.
このような問題をフラストレーション問題といいます.
スピンわずか3つの今の場合でも,事情の複雑さは基底状態(磁場なし)が4重縮退していることや
状態が強磁性のときの ↑↑↑等に比べて複雑になっているところに現れています.
多体系のフラストレーション問題は現在の量子スピン系研究の中心的課題の一つになっています.
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この回答へのお礼

ありがとう

物理的な意味も教えてくださってとても参考になりました。ありがとうございました。

お礼日時:2016/08/10 12:21

> H=-J(S²-s₁²-s₂²-s₃²)-μH(s₁,s₂,s₃のz成分の和)


> (J,μ,H:定数)
> だったら、
> |1/2,+1/2>と|0, 0>|↑>に対応する固有エネルギーが縮退して、
> |1/2,-1/2>と|0, 0>|↓>に対応する固有エネルギーも縮退している
> という解釈は正しいでしょうか。

はい。s₁,s₂,s₃のz成分の和 = Sz ですから、その解釈は正しいです。

1番目のスピンと2番目のスピンを合成して作った S = Sz = 0 の状態と s3 = s3z = 1/2 のスピンを合成すると、S = Sz = 1/2 の状態になります。今の場合、S と Sz が同じであれば同じエネルギーになるので、この状態のエネルギーは、s1 と s2 から作った S = 1 の合成スピンと3番目のスピンから作った S = Sz = 1/2 の状態[註1]のエネルギーと同じになります。

S と Sz が同じなので、回答No.2 の状態 (4), (6), (8), (9) のエネルギーもまた、状態 (2) すなわち |0, 0>|↑> と同じエネルギーになります。とくに状態 (8) と (9) は直交していますので、「ハミルトニアン H = -JS² - μHSz のもとで状態 (8) と (9) は縮退している」ということもできます。いずれにしても縮退度は2で変わりません。


註1:回答No.1では、この状態を |1/2,+1/2> と表し、これに直交するS = Sz = 1/2 の状態を便宜上 |0, 0>|↑> と表しましたが、おそらく一般的な表記法ではないと思います。一般的な表記法かどうかは分かりませんが、J.J.サクライ「現代の量子力学」第三章の表記法を使うと、回答No.1の状態ベクトルをそれぞれ次のように表わすことができます。

 |3/2,+3/2> → |1, 1/2; 3/2, 3/2>
 |3/2,-3/2> → |1, 1/2; 3/2, -3/2>
 |3/2,+1/2> → |1, 1/2; 3/2, 1/2>
 |3/2,-1/2> → |1, 1/2; 3/2, -1/2>

 |1/2,+1/2> → |1, 1/2; 1/2, 1/2>
 |1/2,-1/2> → |1, 1/2; 1/2, -1/2>

 |0, 0>|↑> → |0,1/2; 1/2, 1/2>
 |0, 0>|↓> → |0,1/2; 1/2, -1/2>

詳しくは教科書を参照して下さい。3.7節の「角運動量の合成」のところです。
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この回答へのお礼

ありがとう

大変勉強になりました。ありがとうございました。

お礼日時:2016/08/10 12:20

siegmund です.



101325 さん:
> 1↓2↑3↑ = 1↓3↑2↑ なので、(2)と(4)は一次独立ではあっても
> 内積はゼロにはならない気がするのですが

あ,しまった.
おっしゃるとおりです.
内積ゼロになるわけがないですよね.
(2)(4)の内積がゼロになるのなら,同じ理屈で(2)(6),(4)(6)の内積もゼロになるわけで,
次元2の空間で正規直交基底が3つあることになっちゃいます.
(6)は(2)(4)の線形結合と自分で書いているのに,ボケていました.

なお,(8)(9)は正規直交基底になっています.
これは3つのスピン 1/2 を正三角形に並べたときに,右回りと左回りになっています.

101325 さん,ご注意ありがとうございました.
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> ちょっとやってみるとわかりますが,(2)と(4)の内積を取るとゼロになりますので,


> 独立の基底であることがわかります.

1↓2↑3↑ = 1↓3↑2↑ なので、(2)と(4)は一次独立ではあっても
内積はゼロにはならない気がするのですが > siegmund さん

私の勘違いだったらごめんなさい。
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物理学者の siegmund と申します.



スピンについては |方位量子数,磁気量子数>> よりは
|全スピン,全スピンのz成分>> という方が普通です.
|方位量子数,磁気量子数>> という表現は軌道角運動量の時に主に使われます.
以下 |S,Sz>> と書くことにしましょう.

さて,本題ですが,
|1/2,1/2>> と |1/2,-1/2>> は基底がそれぞれ2つあります.
それで合計8つで話が合います.

スピンを順次合成することを考えましょう.
1番目のスピンと2番目のスピンを合成して S=0 (もちろん Sz=0)の状態を作ると
(1)  (1/√2)(1↑2↓ - 1↓2↑)
です.1↑は1番目のスピンが↑であるという意味.
これに 3↑ を加えて
(2)  (1/√2)(1↑2↓ - 1↓2↑)3↑
とすると,|1/2,1/2>> が作れます.
また,1番目のスピンと3番目のスピンを合成して S=0
(3)  (1/√2)(1↑3↓ - 1↓3↑)
として,2↑ を加えて
(4)  (1/√2)(1↑3↓ - 1↓3↑)2↑
でも |1/2,1/2>> が作れます.
ちょっとやってみるとわかりますが,(2)と(4)の内積を取るとゼロになりますので,
独立の基底であることがわかります.
一見2番目のスピンと3番目のスピンを合成して S=0
(5)  (1/√2)(2↑3↓ - 2↓3↑)
を作り,1↑ を加えて
(6)  (1/√2)(2↑3↓ - 2↓3↑)1↑
を作っても別の|1/2,1/2>> の基底が得られそうですが,
これは実は(2)と(4)の線形結合になっていますので,独立の基底ではありません.
|1/2,-1/2>> についても全く同様です.

基底の取り方は(2)(4)に限らず,いくらでも可能性があります.
例えば
(7)  ω=exp(2πi/3)
として
(8)  (1/√3)(↑↑↓ + ω↑↓↑ + ω^2↓↑↑)
(9)  (1/√3)(↑↑↓ + ω^(-1)↑↓↑ + ω^(-2)↓↑↑)
(矢印は順に1,2,3)というような基底の取り方もあります.
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この回答へのお礼

ありがとう

大変参考になりました。普通と違うような例も書いていただき、ありがとうございます。

お礼日時:2016/08/09 14:45

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