前回の質問「雑音指数の数値の言い方(2017.11.7)」からの続きです。
最終的な疑問は、「動作状態における雑音指数(入力SNと出力SNの比)は、入力信号の大きさ及びS/Nによって変わるので、動作状態における雑音指数と装置の評価指標である雑音指数の値とは異なる」のではないかということです。(要は、動作時の雑音指数は入力信号の雑音電力の大きさによって変わる)
ここでいう「装置の評価指標である雑音指数の値」とはIEEEで規定された条件で測定した値です。(本文では公称雑音指数と表現しています)
以下の例は全て真数表記で、SN、NF、利得Gの単位[倍]は省略しています。
【例1】
利得G=100、公称雑音指数NF=2の増幅器に2種類の入力信号を加えたときに、動作時の雑音指数がどちらの場合もNF=2で動作した場合の例です。
入力信号1:信号Si1=100[mW]、Si/Ni=100(雑音入力はNi=1[mW])
入力信号2:信号Si2=100[mW]、Si/Ni=10(雑音入力はNi=10[mW])
信号1の出力:So1=10000[mW]、So/No=100/2=50(雑音出力は No=200[mW])
信号2の出力:So2=10000[mW]、So/No=10/2=5(雑音出力は、No=2000[mW])
この場合の増幅器の内部発生雑音(出力端子換算)Naを計算すると、
Na1=No-(Ni*G)=100[mW] 、Na2=No-(Ni*G)=1000[mW]となります。NF=2ということは、内部発生雑音が入力雑音のG倍=Ni*G と同じ大きさということになります。
入力信号の大きさや入力雑音の大きさにより内部発生雑音が多少変わるとしても、これだけ変わるというのは不自然です。信号2の場合は公称雑音指数NF=2より小さい値で動作していると考えられないでしょうか。仮に信号2の時も内部発生雑音が100[mW]だったと考えると、信号2の場合の雑音出力は No=(10*100)+100=1100[mW] となり、So/No=9.1 、動作雑音指数 NF=1.1となりそうです。
【例2】
利得G=100、公称雑音指数NF=2の全く同じ増幅器を2台縦続接続し、次の入力信号を加えた場合の例です。(少し現実離れした値ですが、例1に合わせました)
1段目増幅器の入力:信号Si1=100[mW]、Si/Ni=100(雑音入力はNi=1[mW])
1段目増幅器の出力:信号So1=10000[mW]、So/No=50(雑音出力はNo=200[mW])
2段目増幅器の入力:1段目増幅器の出力と同じ(Si2=10[W]、Si2/Ni2=50)
2段目増幅器の出力:2段目増幅器が公称雑音指数NF=2で動作したとすると、So2=1000[W]、So2/No2=25となります。(So2/No2=(Si2/Ni2)/NF=50/2=25)
しかし、従属接続の総合雑音指数は公式によれば NFt=F1+(F2-1)/G ですから、本例の場合の総合雑音指数はNFt=2+(2-1)/100=2.01 となり、2段目増幅器の出力S/NはSo/No=100/2.01=49.8 となります。このことは、2段目増幅器の公称雑音指数は NF=2であるが、動作時は NF=(2段目入力S/N)/(2段目出力S/N)=50/49.8=1.004 で動作していると考えられないでしょうか。
以上、どうしても動作雑音指数は入力信号のS/N(正確には入力信号に含まれる雑音電力の大きさ)によって変わるという気がしてなりません。雑音指数には、性能評価指数としての「公称雑音指数」と、動作時の入力S/Nと出力S/Nの比である「動作雑音指数」の二つがある、という仮説がたてば私の疑問は一気に解決ですが、このようなことは聞いたことがないので間違いでしょう。
間違っているとすれば、前提条件のどこかが間違っていると思いますが、その点を教えて頂ければ助かります。
大変長文で読みづらいかと思いますが、よろしくお願いします。
No.3
- 回答日時:
Agilentのアプリケーションノートは確認しました。
> 雑音入力が小さいとNFは大きくなると解釈できそうです。
S/N劣化の理由は挙げていませんね。
小生は「信号が弱くなって受信限界を割ってしまうとS/Nは急激に悪化する」と解釈しました。これは当たり前のことですが・・・
小生、NFは入力信号や入力雑音のレベルで変化することはないと考えています。
貴殿が考えておられるように変化するのであればNFの扱い方を根本的に見直す必要があるように思います。
つまり測定法あるいは計算法で良い値に見せかけることが可能であるならデータ偽装があり得ることになります。利用者としてはそれを見抜くためにも理論を知っておく必要があります。
小生にも理解できるよう説明していただけませんか?
今回は貴殿とは意見が合いませんでした。小生こそ思い違いがあったかもしれません。失礼の段はお許しを願います。
もう一度貴殿のお考えを聞きたいです。期待しています。
ありがとうございました。
No.2
- 回答日時:
> 伝送路で混入した雑音を内部発生雑音に置き換えてしまうという発想は初めて遭遇し、理解できないところがあります。
小生そんなことは言っていません。
増幅器の内部雑音KTBはどんな場合も避けることはできず、KTBよりやや大きな量が発生する。「やや大きな量」というのがNFのこと。したがって愚考の範囲では外来雑音はないものとして考えています。
アンテナから入ってきた雑音や伝送線路で混入した雑音は「雑雑音」とでもして内部雑音とは別に計上して計算すればよいのではないですか? (小生の範疇では無用なのでやったことはありません)
小生はあくまでも NFとは増幅器が内部で発生する雑音の量を示す数値と考えています。この値を知ることで無線受信機なら受信限界がわかるし、低周波増幅器ならS/N限界を知ることができると思っています。
入力レベルの違いでNFの数値は変わるのかもしれません。そうであったとしても「入力○○のときNFは××でした」というだけで、それが何を意味しているでしょうか?
小生が知りたいのは受信限界です。内部発生雑音の絶対量がわかればそれでよく、NFはそれを表す数値と思っています。受信限界に近いところでの内部雑音の量がわかれば良いのです。
貴殿の【例1】を言い換えれば「入力レベルに関係なく信号は100倍に増幅され、雑音は200倍になる」と解して良いでしょうか?
そうであれば、S+N がものすごく微弱な場合でもその考えで良いですね。ならばどんなに弱い信号でも受信できることになりませんか? 受信限界というものが存在しなくなりませんか? 現実には KTB×NF×C が受信限界なのですが【例1】との関連はどうなりますか?
【例1】を低周波増幅器と考えた場合ですが、やはり小生は増幅器内で発生する熱雑音だけを問題視します。
熱雑音は 300°K、20KHzで KTB=8.27×10^-17 ワット (-130.8dBm) になります。
600Ωでの電圧に換算すると 0.223μV になります( NF=0dBとしています)。
マイクロホンのレベルを -60dBm ( 600Ω で 0.775mV ) とすれば、
このS/N比は 0.775mV÷0.223μV = 3475倍 = 70.8dB これがS/Nの限界値です。
現実には NF は 0dB ではありません。例えば 6dB であったなら S/N は 64.8dB となります。
雑音量の0.223μVは T、Bが変わらない限り一定です。
> 「内部で作られたものである」というのは、実際に「内部で作られたものである」なのか、「内部で作られたものである」と考えて論理を展開するのでしょうか?
何度も言いますが熱雑音 KTB×NF は増幅器内部で発生するものです。信号に重畳して入ってくるものではありません。しかし入力信号に含まれているように見えます。以下次の項参照。
> 「入力信号に含まれているように見える雑音」とはどのようなケースでしょうか?
すべてのケースです。
信号源に熱雑音はなく、熱雑音は増幅器の内部で生じる、というのが愚考の基本。
ではなぜ「入力信号に含まれているように見えるか」というとどんな増幅器や測定器でもKTBなる雑音を内部で発生するためあたかも信号源に雑音が重畳しているように見えることを指しています。実際に発生する雑音はKTB×NFで、NFは装置によって少しずつ違うわけですが、ほぼ同じ量の雑音がどんな増幅器でも発生するので入力信号に含まれているように見えるのです。
> イ項は理解できません。
では電波天文台では高感度受信のために受信機を液体ヘリウムで-270℃あたりまで冷却しますね。熱雑音KTBは受信機の中で生じているためそこを冷やせば高感度になると愚考しています。
違うというのであれば貴兄はどのようにお考えでしょうか?
No.1
- 回答日時:
再度おじゃまします。
小生の考えは次の2つ。
ア 増幅器は入力の有無やその量に関係なく一定量の雑音を出す。
その量は増幅器の入力に換算した値で Ni = KTB × NF
イ 入力信号に含まれているように見える雑音(上記アの KTB の部分)は実際には増幅器の内部で作られたものである。
この量 KTB は(TとBの条件が同じならば)どんな受信機でもどんな測定機でも同じ値として観測されるのであたかも入力信号に雑音が含まれているかのように見える(実際には KTB × NF の量の雑音が発生している。NFは機器の性能によって異なる)。
小生はアンテナが捉えた雑音電波は雑音とは考えていません。あくまでも増幅器自身が出す KTB × NF だけが雑音だと考えています。
ごく微弱な電波を受信する際には受信機を冷却します。これは上式の T を小さくして受信機の内部雑音を減らしています。
受信信号を良好に復調(検波)するために必要な S/N比 を C とすれば、必要な受信レベル Pr は
Pr > KTB × NF × C となります。
KTB × NF は一定値、C も変調形式で決まるので受信限界値が存在します。つまり上式より弱い電波は受信できません。非常に弱い電波は受信できないこと、または受信品質が悪いことはご存知と思います。
貴殿の考えの中には受信限界値を示すものがありますか? 【例1】の中にはないでしょう? ならば間違っておられると思いますが、如何でしょうか?
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早速のご回答ありがとうございました。ようやく論点の食い違いが分かりました。
文字数の関係で2回に分けて投稿します。
私も無線の技術屋だったので、後半のご指摘は理解できます。ただ、今回の疑問は単純に増幅器の問題としてとらえた場合の話です。例えば、復調後の低周波増幅回路の入力信号には、RF・COV・IF・DEM等の回路で発生した歪や雑音が含まれており、これらの雑音を含んだ信号を想定しています。
また、伝送路で混入した雑音を内部発生雑音に置き換えてしまうという発想は初めて遭遇し、理解できないところがあります。
ア項は理解できます。「Ni=kTB*NF=(熱雑音出力+内部発生雑音) の入力換算値」ということですね。
(続く)
(続きです)
イ項は理解できません。
「入力信号に含まれているように見える雑音」とはどのようなケースでしょうか?実際の雑音入力も「ように見える」と解釈するのでしょうか?
「内部で作られたものである」というのは、実際に「内部で作られたものである」なのか、「内部で作られたものである」と考えて論理を展開するのでしょうか?
「入力信号に含まれているように見える雑音(上記アの KTB の部分)」は、入力雑音の大きさによって温度Tを変えるということでしょうか?内容が理解できないので、質問もうまくできません。
できましたら最初の質問の【例1】を単純な低周波増幅器の場合と考えて、回答者様の前提条件で「入力S/Nの違いでNFは変わらない」ことをご説明していただけたら助かります。
(低周波増幅器には受信限界値の概念はありませんが、例1の値で動作する増幅器は普通に存在すると思います)
早速のご回答ありがとうございます。
>小生はあくまでも NFとは増幅器が内部で発生する雑音の量を示す数値と考えています。
まさにその通りで私もそう理解しています。内部で発生する雑音がほぼ一定なら、入力雑音の大きさでS/N劣化度(即ちNF)が変わるのではないかという疑問です。
>入力レベルの違いでNFの数値は変わるのかもしれません。そうであったとしても「入力○○のときNFは××でした」というだけで、それが何を意味しているでしょうか?
その意味を知りたいのではありません。雑音入力の大きさでNF(入力S/Nと出力S/Nの比であって、性能指数としてのNFのことを指してはいません)の数値が変わるのかどうかが知りたいのです。
(続く)
(続き)
今回のQ&Aを繰り返しながら色々とネットで調べましたが、これまで何回もやり取りした2つの定義しか載っていません。ただ次の資料に私の疑問に関連しそうな記述がありましたので記載しておきます。〔Agilent Technologies RFおよびマイクロ波の雑音指数測定の基礎 アプリケーション・ノート 57-1 の8頁〕
「衛星通信の受信機では入力雑音レベルが100Kより低い値になること がよくあります。このような状況では、受信機の雑音指数の変化3dBにより、S/N比は3dBよりはるかに大きく変化します。」→雑音入力が小さいとNFは大きくなると解釈できそうです。
長々とお付き合いいただきましたが、どうしてもスタート時点での論点の食い違いが埋まらないので、今回でこの問題は解決済ということにします。ありがとうございました。
ご丁寧なコメントありがとうございました。私も中途半端でしっくりしていません。もう一度スタートラインに立って意見交換していただけたら嬉しいです。
一両日中に私の考え方をもう一度整理して新しいスレッドを立てますので、ご意見をお聞かせください。新スレッド名は「雑音指数の疑問(その3)」とします。本補足にm-jiro様のレスポンスがありましたら、「ベストアンサー」にしてこのスレッドは閉じたいと思います。