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- 回答日時:
『いさなとり』は露伴の処女長編であり、完成した唯一の長編小説でもあります。
タイトル通り、鯨捕りを題材にしてはいますが、鯨捕りの場面にいくまでが大変です(笑)。
下田の村に住む好々爺とだれもが思っていた彦右衛門には、だれも知らない過去があった。
十四の時、下田を飛び出して京に向かった彦右衛門、ひょんなことから都で珠数屋の厄介になります。
そこで数年が過ぎ、家付き女房のお俊と過ちを犯してしまう。
平気な様子のお俊に嫌気がさして、彦右衛門は珠数屋を出、あてもないまま広島へ。
今度は算盤屋に奉公するようになります。
そこでもいろいろあって、そこから船で九州へ。捕鯨の大基地のあった生月島へたどりつき、そこで捕鯨船に乗りこむようになります。
ここからやっと捕鯨の描写なんですが、第六十六「浪湧き風なまぐさし」は、やはり圧巻です。
岩波文庫にもなっていますが、できれば『明治の文学 第12巻 幸田露伴』(筑摩書房)版を読んでほしい。
注解も図入りで大変わかりやすくなっています。
そのうち、お新という女房をもらうのですが、このお新には厄介な継母がいた。
仲むつまじい、とまではいかないまでも、子どももできて、とにもかくにも夫婦生活を送るうち…。
ひさしぶりに漁から帰ってみれば、お新は不義を働いていた。
彦右衛門は怒りのあまり、お新、情婦の伝太郎、継母の三人を殺してしまいます。
そうしてみずからも死んでしまおうと、彦右衛門は子どもの新太郎と海に漕ぎ出す。
途中嵐にあって、遭難しかけた彦右衛門は、なんと朝鮮半島の熊川(ゆうせん)にまで流れ着いたのです。
なんとそこで出奔した生月の捕鯨の元締め、松富の隠居に出会う。
妻殺しを告白する彦右衛門に対して、隠居は「意気地のない奴」となじります。
ふたたび隠居の元で捕鯨船に乗るようになった彦右衛門。
懸命に働いて、お金も貯め、やがて歳を取り捕鯨船に乗ることも辛くなった頃、生月を発って下田に戻ります。
下田では嫁ももらって、一人娘、お染もできた。
そのお染を連れて、一家三人東京見物に出かけたかえり、軍艦を見に行くと、その軍艦の士官荒磯大尉は、自分が捨てた新太郎が長じた姿だった。
ということで、めでたし、めでたし、で終わります。
あらすじだけ書くと、これが明治二十四年の小説か、という感じではあるのですが、やはり細かい描写など見ると、若い頃からの露伴の博覧強記ぶりがうかがえるので、ぜひご一読をお勧めします。
この回答へのお礼
お礼日時:2004/10/07 10:25
ありがとうございます!
随分と長い話なのでびっくりしました(笑)
さすがは文豪、ということなんでしょうか。
わかりやすい説明で本当に助かりました。
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