No.6ベストアンサー
- 回答日時:
> HとBは違うものじゃないんですか?
HとBが同じだという意味ではありません.
HとBとを同じものだと言っていないのは論旨からおわかりと思います.
E-H対応でHと称している物理量と,E-B対応でHと称している物理量は
同じであるということです.
同様に, E-H対応でBと称している物理量と,E-B対応でBと称している物理量は
同じです.
どうしてこういうことを書いたかと言いますと,
磁荷(磁気量)の表現の仕方がE-H対応とE-B対応とで異なるからです.
E-H対応では,通常,
真空中で距離 r にある2つの磁荷 q_m,q'_m 間の磁気的クーロン力を
(1) F = q_m q'_m/4 π μ_0 r^2
と書いています.
一方,E-B対応では
(2) F = μ_0 q_m q'_m/4 π r^2
と書くのが普通です.
μ_0 は真空の透磁率と呼ばれる量で,
(3) μ_0 = 4π×10^(-7) [N・A^(-2)] = 4π×10^(-7) [m・kg・s^(-2)・A^(-2)]
です.
(1)(2)の μ_0 の入り方に注意してください.
したがって,E-H対応とE-B対応とでは,磁荷という物理量の単位が異なります.
E-H対応なら,q_m の単位は
(4) Wb = m^2・kg・s^(-2)・A^(-1) = V・s
です.Wb はウェーバーで磁束の単位と同じです.
一方,E-B対応なら,q_m の単位は
(5) m・A
です.
なぜこんなことになるかと言いますと,磁場を表す本質的な量がHかBかという
ことに関係しています.
E-H対応では,「磁場」はHですから,q_m が作る「磁場」をHとして,
(1)が
(6) F = q_m' H
と書けるように磁荷の単位を決めないといけません.
E-B対応なら,「磁場」はBですから
(7) F = q_m' B
と書けるように磁化の単位を決める必要があります.
(6)(7)と,B = μ_0 H を組み合わせると,必然的にE-H対応とE-B対応とで
磁荷の単位が μ_0 倍だけ違って来ます.
実際,(3)(4)(5)で
(8) {m^2・kg・s^(-2)・A^(-1)} / {m・kg・s^(-2)・A^(-2)} = m・A
になっています.
この回答への補足
文脈の理解が甘くてどうも失礼しました
しかしそんなに混乱するのだったら磁荷を使って電磁気を説明するのはやめた方がいいですね
最近の高校ではどうなっているのかしれませんが昔は磁荷で磁気を説明していたでしょう
やはりローレンツの力から始めないとだめですね
学習効果からすればクーロンの法則のように磁界と電界がよく対応するのでいいのですが以上の議論のように学習が進んでいくと混乱しますからね
ところで電磁気を勉強するに当たって何か役に立つ情報があったら教えてください
よろしくお願いします
No.5
- 回答日時:
> 物理屋の方々はHを磁場とするかBを磁場とするかのこだわりがあるのですか?
さて,どうでしょう?
私自身は大してこだわっていませんが,
磁場として基本的な量はBであると思っています.
あまりこだわっていない方が多いんじゃないですかね.
どちらがベターであるか程度の認識はたいていの方がもっておられるようですが,
それかといって,もう一方は全然ダメとは思っていないようです.
ここらへんは余り自信がありません.
> 名前の付け方が統一されていないのは知的能力の無駄遣いで
> 合理主義者のすることとは思えませんが
> 実際本を見るたびに呼び方が違うので
> 結局Hは何なのかBは何なのか海馬に登録されません
名前が違うのは確かに面倒ですが,HとBという物理量そのものは
名前の付け方によらず同じ量です.
E-H 対応でも E-B 対応でも,HとB自体に違いがあるわけではありません.
「名前自体は便宜的なもので本質的なものではないので」
と言われるとおりです.
> 教育的見地からE-H対応を採用するのが良いのではないでしょうか?
そこは意見の分かれるところでしょうね.
だからこそ,E-H 対応と E-B 対応両方のテキストがあるのだと思います.
私は E-B 派です.
E,D,H,B という場の量によって電磁気を記述するというのは,
理工系の大学1年級以降の話でしょう.
そうすると,当然ながら,電気は電気だけ,磁気は磁気だけでは済みません.
電流に磁気作用があること自体は(多分?)小学校でも電磁石ということで
やっているくらいですから.
電流の変化で磁場をコントロールする技術が使われている例は
枚挙にいとまがありません.
現行のアンペアの定義が既に電流の磁気作用の関連したものになっています.
すなわち,
無限に長い平行直線電流間に作用する力で電流の1アンペアを定義しているのですが,
これは第一の電流が磁場を作り(ビオ・サバール則)
それを第2の電流が感じる(ローレンツ力)ということを使っているわけです.
電圧の単位のボルトの定義も現在はジョセフソン効果を使ったものになっていますが,
これも磁場がからんでいます(アンペアよりは間接的ですが).
こういう点を考えますと,電流の磁気作用に重点を置いた E-B 対応の方が
メリットがあるように思えます.
> 統一されていないと話するときにも
> 定義しながら話をしないといけないので本質的な話をする頃には疲れてしまいますね
通常はコンテクスト自体が用語の意味を規定していると思います.
細かいところで用語の意味が違ったりするのは,電磁気の話に限らないでしょう.
物理でなくても,他の学問でもそうういことはあるでしょう.
> こういうのは誰か権威がこうだ言ってしまえば済む話なのに何で言わないのでしょうね?
それは難しいでしょう.
度量衡の統一とは話が違います.
この説は正しくてあの説は間違っている,というようなことではありませんから.
この回答への補足
名前が違うのは確かに面倒ですが,HとBという物理量そのものは名前の付け方によらず同じ量です.E-H 対応でも E-B 対応でも,HとB自体に違いがあるわけではありません
HとBは違うものじゃないんですか?
テンソルの誘電体の中ではHとBには比例関係はないですね?
だとすれば同じとはいえないと思うのですが
どうでしょうか?
よろしくお願いします
No.4
- 回答日時:
No.3についての補足に関連してコメントいたします。
あらためて、高校、大学のテキスト等を見直してみました。
例えば江沢洋氏の本では、
電場:電気力線の存在する空間
電場ベクトル:空間の各点で試験電荷単位あたりが受ける力(ベクトル)
電場の強さ:電場ベクトルの大きさ
という立場で、これなりに一貫していて分りやすいです。
高校の教科書では、電場、電界併記ですが、「電界」の方が勢力が強そうです。
意外なことに、ほとんどの場合「電界の強さ」は電界ベクトルの大きさを指しているようです。電界と電界ベクトルの使い分けは厳密にされていません。界(field)は、ある性質をもつ空間を指し、かつ、その空間中の試験要素に働く力の場(これは物理量ですね)も指すものとして使われています。
ベクトルEを表す用語として「電場の強さ」も使用する砂川流は、もしかして小数派なのかなとも思うようになりました(調べは十分でありません)。
HとBについては種々思うことがありますが(質問を出そうかと考えたこもあるくらいです)、大変なことになりそうなので、触れないということでお許し下さい。
統一されていないと話するときにも定義しながら話をしないといけないので本質的な話をする頃には疲れてしまいますね
こういうのは誰か権威がこうだ言ってしまえば済む話なのに何で言わないのでしょうね?
どうもありがとうございました
No.2
- 回答日時:
物理屋の siegmund です.
nikorin さんのいわれるように,
> 理学系では「電場」「磁場」、工学系では「電界」「磁界」
が多いようです.
> 電束密度は電気変位以外に別の呼び名はないのでしょうか?
他の呼び方はないようですね.
>「の強さ」を付けないで電場電界はEを指すのでしょうか?
そのとおりです.
これは誰でも同じ使い方だと思います.
> 磁束密度は他に呼び名はないのでしょうか?
>「の強さ」を付けないで磁場磁界はHを指すのでしょうか?
磁場関係については事情が複雑です.
Bは磁束密度という呼び方が普通ですが,「磁場」と呼ぶこともあります.
Hを「磁場」ということもあるので,混乱しますね.
HとBとを混同することはないので,磁場H,磁場B,などとHやBを必ずつけて
記述している本も見たことがあります.
事情が複雑な原因は,磁場の本質をどう理解するかにあります.
電場は電荷が生み出します.
同じように考えれば,磁場は磁荷が生み出すことになるわけですが,
単独の磁荷(N極だけ,あるいはS極だけ)は通常の意味では存在しません
(単極子を探すような話にはここでは触れないことにします).
そうすると,磁気双極子ならありますから,
(a) 磁場の起源は磁気双極子とみなす立場が可能です.
この時は,電荷が電場を生み出す,磁荷(実際は磁気双極子だが)が磁場を生み出す,
という対称性がよい表現になっていて,
Hはこちらの立場での磁場を表現するものでした.
この立場は E-H 対応と言われています.
電場だけ,あるいは磁場だけ,扱っていると見通しがよいのですが,
電場と磁場がからむと多少不便になります.
(b) 磁場の起源は電流という立場もあります.
これだと,電荷が重要で,電荷に作用する場はEとBですから
(ローレンツ力 F = q(E + v×B) を思い出してください),
磁場として基本的な量はBです.
こちらは E-B 対応と言われています.
電場と磁場がからむ話にはこちらの方が便利でしょう.
もともとは上のようなことだったと思うのですが,
(a)の立場でBを磁場の基本的量と見なすような折衷的(?)立場もあったりして,
なかなか大変です.
対応関係の他に,SI系か,cgs系かという単位系の問題もあります.
SI系では,MKS の他に電流を基本量として導入して MKSA にしていますが,
cgs系では別に電流を導入することはしていません,
さらに,cgs系には,cgs静電単位系,cgs電磁単位系,ガウス単位系,
の3種があります.
最近の基礎教育的テキストは SI 系の E-B 対応が多いのですが,
実際の磁気測定などでは必ずしもそうでもないようです.
この回答への補足
物理屋の方々はHを磁場とするかBを磁場とするかのこだわりがあるのですか?
工学屋の方々はHを磁界とするかBを磁界とするかのこだわりはないのですか?
名前の付け方が統一されていないのは知的能力の無駄遣いで合理主義者のすることとは思えませんが
実際本を見るたびに呼び方が違うので結局Hは何なのかBは何なのか海馬に登録されません
覚えやすさからすればE-H対応で本質からすればE-Bであるならば名前自体は便宜的なもので本質的なものではないので教育的見地からE-H対応を採用するのが良いのではないでしょうか?
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