シュレーディンガーの式
[-(h^2/2m)(d^2/dx^2)+Vδ(x)]ψ(x)=Eψ(x)・・・★
の解のx=0での接続条件はどのように求めたらよいのでしょうか?
★の両辺を-εからεまで積分し、ε→0とすれば・・・、のような事をやれば、
ψ(+0)=ψ(-0)
ψ'(+0)-ψ'(-0)=αψ(0)
という感じになったと思うのですが、どうも上手くいきません。
1.∫[-ε→ε]d^2ψ/dx^2 dx =ψ'(+0)-ψ'(-0)となる理由
(結論を見る限り、d^2ψ/dx^2はx=0で(δ関数的に?)発散していますが、この場合にも微積分学の基本定理は成り立つのでしょうか?)
2.∫[-ε→ε]Eψ(x)dx=0となる理由
(要するに、ψがx=0で有限である理由です。ポテンシャルがδ関数で発散しているので、ψもx=0でおかしなことになっていない保証はない気がするので)
3.ψ(+0)=ψ(-0)となる理由
(もう一度何かを積分すれば導けた記憶はあるのですが)
の3つが分かれば、問題ないと思います。
No.2ベストアンサー
- 回答日時:
確かにeaternさんの疑問は誰もが感じる(べき)正しい疑問だと思います。
つまりこういった異常なポテンシャルを持つ問題は取り扱いが難しいことが知られています。私が学部でポテンシャルによる散乱問題を習った時には、問題を解く時の理論的なよりどころは連続の方程式だと習ったと覚えています。そのことは確かシッフの教科書にも議論があったと思います。(卒業の時に後輩にあげたので量子力学の教科書が手元にありませんので確認できませんが)
よって波動関数が連続である必要はまったく無いと思います。しかし大抵の教科書では簡単化のためといって、波動関数の連続性を”仮定”します。一般にはこういった異常なポテンシャル問題は量子力学的意味のある系かどうか自明でありませんから、取り合えず意味のある答えがあるかどうか計算してみようよというくらいの態度だと私は考えています。取り合えずその仮定を受け入れたします。
(1)φ(+0)=φ(-0)を仮定として受け入れる。
すると以下の事が導けます。
(2)∫dx d/dx(dφ/dx)=∫d(dφ/dx)=[dφ/dx]_{-0→+0}
=dφ(+0)/dx-dφ(-0)/dx
(3)一方でd/dx(dφ/dx)=(αδ(x)-E)φですから、0を含む微小領域[-ε,+ε]で積分してεをゼロにすると
∫dx(αδ(x)-E)φ=αφ(0) -Eφ(0)*2ε=αφ(0)
なので
dφ(+0)/dx-dφ(-0)/dx=αφ(0)
が導けます(Eも定数としましたが、これも必要ないかもしれません)。
(3)を際に波動関数が[-ε,+ε]で連続だという事を仮定したのでエネルギーに比例した項の積分は積分領域の幅×原点での波動関数で近似しましたが、結局積分領域がゼロの極限をとるとゼロです。波動関数が連続であれば微分が飛んでいても積分に何の問題もありません。
これは積分領域をx<0, x>0に分けて考えれば直感的にも納得いくでしょう。関数が滑らかでないところで積分領域を分けて考えると積分は二つの領域の和です。
最終的には量子力学で使う積分、ひいては物理で使う積分はるベールグ積分の意味で定義されていると見なすべきでしょう。私は難しい事は知りませんが、とりあえずは関数が折れ線や、さらには飛びがあっても、それが一点で起こっている限り積分測度はゼロなので大丈夫だと思います。
一点の効果は積分に利きません。もしも一点から有限の値があるいう風に積分が定義されているなら、任意の線分に実数は無限に存在するので積分は全て発散してしまいます。
(2)を導く際に、dφ/dxが連続でないと言っておきながら、更にその微分を積分するのはOKかという疑問があるでしょう。一階微分の飛びは原点の一点に限られますから、その二回微分も原点では定義されていません。しかし二回微分の値など知らなくても、やはり積分領域をx<0、x>0の二つにわけて積分すれば問題ないことが理解されると思います。なぜならやはり積分測度がゼロだからです。
と大体数学的にはかなりいい加減説明ですが、物理をやる上ではこれくらいの理解で良いのではないでしょうか。気になる場合にはるベールグ積分を勉強することになるんでしょう(数学を勉強したからといって物理の全てを厳密な方法で理解できるかどうかは疑問です)。
最後に(1)の仮定ですが、これは必ずしも必要ではありません。なぜなら量子力学の要請は確立密度
j=-i(φ*∂φ-φ∂φ*) (∂=d/dx)
が連続であればよいことだけですから。異常なポテンシャルを解析する方法にはいくつかあるでしょうが、最も物理的なのは有限なポテンシャルの極限としてそれらを理解する事です。δ(x)ポテンシャルの場合ならそれは[-ε/2,+ε/2
で高さεを持つ階段型ポテンシャルのε→0極限として理解するとか。こういう理解では通常波動関数は連続で微分が飛びます。
なるほど。
確かにルベーグ積分で考えると、測度がゼロの集合は無視できますから、x<0,x>0の2つの分けて考えるのがよさそうですね。
それに、デルタ関数自体が、
・x≠0でδ_n(x)→0 (n→∞)
・(ある条件を満たす)任意の連続関数fに対して∫δ_n(x-a)f(x)dx→f(0) (n→∞)
を満たす関数列δ_nの極限、として定義される(事もある?)ので、
>δ(x)ポテンシャルの場合ならそれは[-ε/2,+ε/2
で高さεを持つ階段型ポテンシャルのε→0極限として理解するとか。
のような考えで得られる結論(x=0で連続etc.)を使っても問題なさそうですね。
ご回答ありがとうございました。
No.7
- 回答日時:
> 直感的には、x=0の近傍での振る舞いは、
> x=0の近傍のポテンシャルで決まるような気がします。
Vδ(x)+V'δ(x-a) の場合の x=0 付近の解を
V'/a の冪で展開して0次の項だけを残すという感じですかね.
ただ,極端な例で
…+δ(x+2a)+δ(x+a)+δ(x)+Vδ(x-a)+Vδ(x-2a)+…
のように周期的な場合もよいのかはわかりません.
超関数や量子力学の数学的定式化あたり不勉強なので
自信なしの回答ばかりで申し訳ないです.
そうですね。確かに、δ関数が無限個あると、おかしなことになるかもしれませんね。
> 直感的には、x=0の近傍での振る舞いは、
> x=0の近傍のポテンシャルで決まるような気がします。
ってのは、古典力学では「力」が、ポテンシャルの微分で決まる(つまり、近傍のポテンシャルだけで運動が決まる)というイメージですのでね。
もちろん、量子力学でもそうなる保証はないのですが。
大変参考になりました。どうもありがとうございました。
No.6
- 回答日時:
> ・x<-aで+∞,x>-aでVδ(x)
> ・Vδ(x)+V'δ(x-a)
> のようにポテンシャルが非対称なものも含まれます。
まだ,ちゃんと考えてないですが,
Vδ(x)+V'δ(x-a)
のほうが状況がましのような気がします.
Vδ(x)+Vδ(x-a)
という対称的なポテンシャルの第2項目の係数を
V → V'
と移す連続的な写像のもとでψが連続であることを導けるかもしれません.
> よって波動関数が連続でなければいけないという証明は
> 散乱問題には適用できないと思われますがどうなんでしょうか。
仰るとおりだと思います.
No.4 での回答は定常的なものを想定していましたので,
どちらからか入射ビームを送ってしまうと適用できないと思います.
この回答への補足
何度もありがとうございます。
>対称的なポテンシャルの第2項目の係数を
> V → V'
>と移す連続的な写像のもとでψが連続であることを導けるかもしれません.
直感的には、x=0の近傍での振る舞いは、x=0の近傍のポテンシャルで決まるような気がします。
なので、Vδ(x-a)等のポテンシャルとは無関係に、x=0での接続条件が決まるべきではないでしょうか?(あくまでも、直感に過ぎないのですが)
No.5
- 回答日時:
#4のrynさんの解答に少し疑問があります。
一次元の井戸型ポテンシャル問題、例えば
V=1 (-1<x<1)
=0 その他
などで散乱を考える時には、設定としてビームを
入射することでパリティ対称性は壊してしまいます。
つまり良く仮定する
φ=Ae^{ikx}+B e^{-ikx} (x<-1)
φ=Ce^{ikx} (x>1)
などを解いて透過反射係数を求めますが、こういった場合にはパリティーは壊されています。
よって波動関数が連続でなければいけないという証明は散乱問題には適用できないと思われますがどうなんでしょうか。
この回答への補足
ご回答ありがとうございます。
さっきは、さほど気にしませんでしたが、確かにそうですね。。。
と思って考えてみたのですが、ポテンシャルが対称であれば、固有値Eに属する任意の固有関数φは、同じ固有値Eに属する固有関数φ_e(偶関数),φ_o(奇関数)を用いて、φ=φ_e+φ_oと表せます。
(φ_e(x)=(φ(x)+φ(-x))/2,φ_o=(φ(x)-φ(-x))/2とすればよい。ポテンシャルが対称でなくてもφ_e,φ_oは考えられますが、一般には固有関数ではないはずです)
なので、ポテンシャルが対称ならば、固有関数を偶関数と奇関数とに分けて考えても問題ない気もします。いかがでしょうか?
No.4
- 回答日時:
ポテンシャルが対称な場合の一般論(1次元)です.
とりあえず,
[-(h^2/2m)(d^2/dx^2)+Vδ(x)]ψ(x)=Eψ(x)・・・★
と,★式において x → -x とした式
[-(h^2/2m)(d^2/dx^2)+Vδ(-x)]ψ(-x)=Eψ(-x)
を見比べると
ψ(x) , ψ(-x)
は同じ固有値に属する固有状態となっていますが,
1次元の場合は縮退がないので,
ψ(-x) = e^{iθ}*ψ(x)
と書けます.
したがって,
ψ(x) = e^{iθ}*ψ(-x) = e^{2iθ}*ψ(x)
から,
e^{2iθ} = 1
すなわち
ψ(-x) = ±ψ(x)
となります.
この回答への補足
ご回答ありがとうございます。
なるほど,ポテンシャルが対称だと、ψは偶関数または奇関数のどちらかであり、いずれにせよψがx=0でおかしな事にならないので、細かい事を気にせず扱えるんですね。
しかし、私の質問のとあまり関係なさそうだったので、省略したのですが、今、私が考えている問題の中には、
・x<-aで+∞,x>-aでVδ(x)
・Vδ(x)+V'δ(x-a)
のようにポテンシャルが非対称なものも含まれます。
いずれにせよ、x=0の近傍では対称なのですが、この場合にも同じ議論が適応できるのでしょうか?
もちろん、結論は、『(x=0の近傍で)ほぼ偶(奇)関数』のようなもので問題ありません。(とにかくx=0での振る舞いが分かれば問題ありません)
No.3
- 回答日時:
一つ補足
波動関数の二乗に確立密度ですから、それが発散してもなんの問題もありません。意味のあるのは測度をかけた量
P([x,x+dx]に電子が存在する確立)
=|φ|^2 dx
です。又はこれを積分した量
P([x,x+a]に電子が存在する確立)
=∫_{x,x+a}φ^2dx
が意味を持てばよいのです。波動関数は発散しても問題ありません。つまり二乗積分できればよいということです。
No.1
- 回答日時:
1について、
デルタ関数は積分によってその意味を成す関数なので、積分が出来ます。これは超関数(distribution)なので、今までの関数(function)とは違います。最初からその意味を探るのは難しいので、物理を学び始めの際に私は「δ(x)をx=0を含む範囲で積分した結果は1。」という定義(?)を丸暗記していました。
2について、
∫[-ε→ε]Eψ(x)dx=0←この問題を解くに当たって、この等式が登場する意味がいまいちよく分からないのですが…。
δ関数により、x=0に無限に高いポテンシャル障壁があるので、x=0に電子は存在しない。という定性的なイメージでは駄目でしょうか?
3について、
1回不定積分すれば、ψ'(x)=αψ(0)+Cで、これをもう一度区間(-ε,ε)で積分すれば、Ψ(-ε)-Ψ(ε)=αΨ(0)(ε+ε)
ε→0の極限で右辺0よりΨ(+0)=Ψ(-0)でどうでしょうか?
この回答への補足
ご回答ありがとうございます。説明不足ですいません。
[-(h^2/2m)(d^2/dx^2)+Vδ(x)]ψ(x)=Eψ(x)
の両辺を-εからεまで積分すると、(積分範囲は省略しますが、いずれもx:-ε→εです)
-(h^2/2m)∫d^2ψ/dx^2dx+V∫δ(x)ψ(x)dx=E∫ψ(x)dx
となります。
ψはx=0で連続(ψ(+0)=ψ(-0))より、∫δ(x)ψ(x)dx=ψ(0)であること
ε→0とすれば、∫d^2ψ/dx^2dx=ψ'(+0)-ψ'(-0)、∫ψ(x)dx=0となる事から、
ψ'(+0)-ψ'(-0)=(2mV/h^2)ψ(0)
が得られる「はず」なのですが、この過程で使ったいくつかの等式が成り立つ理由を質問しました。
>1について、
「d^2ψ/dx^2が(δ関数的に)発散する」というのは、あくまでも、上のようにして得られた結論ですので、この段階では、d^2ψ/dx^2がどんな形であるかは分かっていません。
>2について、
V<0の場合(無限に「低い」ポテンシャルの場合)にも上手く説明できるのでしょうか?
どっちにしても、x=0でψが無限大に発散する(x=0に粒子を見出す確率が有限)というのは、かなり気持ち悪い事に変わりないのですが。
>3について、
ψ'(+0)-ψ'(-0)=αψ(0)
を導く過程で、ψ(+0)=ψ(-0)を使いますので、これを前提としない方がいいです。
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