No.1ベストアンサー
- 回答日時:
分子間力として分散力を考えます。
ロンドンの式を使うと分子間の相互作用エネルギーは
(1) E(AB) = -(3/2)*IA*IB/(IA+IB)*αA*αB/r^6 = -(3/2)*CAB/r^6
(2) E(AA) = -(3/2)*IA*IA/(IA+IA)*αA*αA/r^6 = -(3/2)*CAA/r^6
(3) E(BB) = -(3/2)*IB*IB/(IB+IB)*αB*αB/r^6 = -(3/2)*CBB/r^6
のように表されます。ここで、IA, IB はそれぞれ分子A,Bのイオン化エネルギー、αA,αB は分子A,Bの分極率、rは分子間距離です。
式(1)からαAとαBを消すために、式(2)と式(3)を使います。
CAB = IA*IB/(IA+IB)*αA*αB
= √(CAA*CBB) * √(IA*IB) * 2/(IA+IB)
≒ √(CAA*CBB)
ただし IAとIBの算術平均 (IA+IB)/2 と幾何平均 √(IA*IB) の比を1と近似しました。
よって
E(AB) ≒ -(3/2)*√(CAA*CBB)/r^6
= -√[E(AA)*E(BB)]
となります。
分散相互作用の他に双極子-双極子相互作用があると、近似は悪くなります。またロンドンの式そのものが近似式ですので、よい精度で成り立つ関係式というよりも、『算術平均を使うくらいなら幾何平均を使う方がよい』という程度の関係式と考えるほうが安全かもしれませんね。
丁寧なご回答ありがとうございました!
いくら探しても参考文献が見当たらなかったので本当に助かりました。
しかし、2つほど疑問に感じたことがあります。
1.相互作用エネルギーは分子間距離rによっても大きく変化すると思うのですが、ここでは何故rは等しい値とみなしてしまっても良いのでしょうか?
2.>ただし IAとIBの算術平均 (IA+IB)/2 と幾何平均 √(IA*IB) の比を1と近似しました。
とありますが、何故このように近似できるのでしょうか?
大変恐縮ですが、お時間がありましたらご回答頂けると幸いです。
No.2
- 回答日時:
疑問1.相互作用エネルギーは分子間距離rによっても大きく変化すると思うのですが、ここでは何故rは等しい値とみなしてしまっても良いのでしょうか?
相互作用エネルギーは分子間距離rによって変化しますので、相互作用エネルギーの大きさを比べるときには、rが等しいときの相互作用エネルギーを比べないといけません。
例えば、「キセノン原子間に働く分散力はアルゴン原子間に働く分散力よりも大きい」という言い方をしますけど、キセノン原子間の距離が1cmでアルゴン原子間の距離が1nmであったなら、当然アルゴン原子間に働く分散力のほうがキセノン原子間に働く分散力よりも大きくなります。ですので誤解を招かないようにするには「分子間距離が同じなら、キセノン原子間に働く分散力はアルゴン原子間に働く分散力よりも大きい」というべきなのですけど、暗黙の了解で『分子間距離が同じなら』という条件文を略すことは多いです。
疑問2.>ただし IAとIBの算術平均 (IA+IB)/2 と幾何平均 √(IA*IB) の比を1と近似しました。
とありますが、何故このように近似できるのでしょうか?
じっさいに数値を入れて計算してみると分かります。
例えば分子Aのイオン化エネルギーを10eV、分子Bのイオン化エネルギーを20eVとして計算すると、算術平均は15eV、幾何平均は14eVになりますので √(IA*IB) * 2/(IA+IB)=0.94≒1 になります。イオン化エネルギーが2倍違っていても算術平均と幾何平均は6%しか違わない、というところがミソです。
なるほど。
「極性を持つ分子間など、ベルテロー則があまりフィットしないものもある。」という論文を読んだのですが、この法則が成立するためには
・分子同士が無極性であること
・分子間距離が同じであること
・イオン化エネルギーが大きく違いすぎないこと
など、いくつかの条件が必要になってくるからだったのですね。
分子同士が極性を持つ場合などについても、もう少し自分で調べてみようと思います。
表面自由エネルギーの拡張フォークスの式を説明するのにこのベルテロー則が必要だったのですが、本当にわかりやすいご回答を頂いて感謝しています。
また、貴重なお時間を頂きましてありがとうございました!
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