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IRなどで観察されるフェルミ共鳴について教えて下さい。

これはある振動モードのピークの高次のピークと別の振動モードのピークが重なるときに、2つの振動モードが相互作用し合い、基準ピークが大きく観察される、というような現象だと思うのですが、
手元にある実験化学講座には、高次の非調和項が近接する振動状態と混合する場合のことを指す、書いてあります。

疑問なのは、
・なぜ高次の振動モードと別の振動モードが混ざると共鳴が起こるのでしょうか?
・これによって引き起こされるのは、基準モードのピークが大きく観察されるということで合っていますか?
・普通の高次の項ではなく非調和項であることには何か意味があるのでしょうか?

フェルミ共鳴に関して書かれてある書籍があまりにも少なくて理解しきれませんでしたので、どなたか教えて下さい。
或いは詳しく書かれてある書籍を教えて頂けないでしょうか?

A 回答 (6件)

> 同じ原理だということを仰られているのだと思うのですが、



すみません。言葉が足りませんでした。「……同じ理屈です(少なくとも数式の上では)」と書いたのは、「どっちも行列の固有値問題になりますよ」という程度の意味でした。「二つの水素原子の原子軌道から、分子軌道が二つ(結合性軌道と反結合性軌道)できるのと同じ理屈です」の方がよかったかも知れないです(←よく分からなかったら無視して下さい)。

> 中間的な振動モードが存在出来ないのは量子力学から要請なのでしょうか?

基準振動モードは、古典力学で考えても出てきます。古典力学系で中間的な振動モードを作ろうとすれば、基準振動モードの重ね合わせで作ることになりますけど、このような中間的な振動モードは、定常状態にはなりません。つまり、位相や振動数や振幅が時間的に変動する、非定常状態になります。ですので、うるさいことをいえば、中間的な振動モードが存在出来ないのは古典力学でも同じ、ということになるでしょう。

ですけど、うるさいことをいわなければ、「振動モードが量子化されているため、このような中途半端な振動モードは(定常状態としては)存在しえない」と説明する方が、分かり易くていいと私も思います。
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> 例えば90°とか間の位相であっても、振動モードの励起はあり得そうな気がする



起こりそうですけど、起こりません。
 二酸化炭素分子O=C=Oの左右のC=O結合の伸縮振動が、同位相(両方のCO距離が同時に伸び縮みするモード)で起こると全対称伸縮振動になり、逆位相(一方のCO距離が伸びると他方が縮むモード)で起こると逆対称伸縮振動になるのと、同じ理屈です(少なくとも数式の上では)。
 ケトンのカルボニル基のCO伸縮モードが1700cm-1くらいなので、二酸化炭素分子O=C=OのCO伸縮モードも1700cm-1くらいになりそうなものですけど、実際には1333cm-1(全対称伸縮モード)と2349cm-1(逆対称伸縮モード)に「分裂」します。中間の位相の振動モードは、ありません。

共鳴に関しては、以下に岩波理化学辞典第5版を引用しますので、参考にして下さい。
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共鳴
[1] 振動系に加える周期的外力の振動数を振動系の固有振動数に近づけていくにつれて,振動系の振幅が急激に増加する現象をいう.(以下略)
[2] (省略)
[3] 量子力学では,多くの粒子(あるいは部分系)からなる系において,粒子間の相互作用の一部を無視した場合の縮退した定常状態α,β,…を表わす波動関数をΨα,Ψβ,…とすると,相互作用を考慮した場合の系の波動関数Ψは,第1近似として線形結合
  Ψ=aΨα+bΨβ+…
の形に表わされる.この場合,状態α,β,…は量子力学の意味で共鳴しているという.
[4] (省略)
----------
フェルミ共鳴は、[3]の意味での共鳴ではないかと私は思います。
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この回答へのお礼

お礼が遅れてしまい申し訳ありません。

> 二酸化炭素分子O=C=Oの左右のC=O結合の伸縮振動が、同位相(両方のCO距離が同時に伸び縮みするモード)で起こると全対称伸縮振動になり、逆位相(一方のCO距離が伸びると他方が縮むモード)で起こると逆対称伸縮振動になるのと、同じ理屈です

というところなのですが、つまり全対称伸縮振動と逆対称伸縮振動はあるが、その真ん中の振動モードは存在出来ないということと、同じ原理だということを仰られているのだと思うのですが、
そういえば、これってなぜなのでしょうか?
中間的な振動モードが存在出来ないのは量子力学から要請なのでしょうか?
振動モードが量子化されているため、このような中途半端な振動モードは存在しえないということで良いのでしょうか?

お礼日時:2009/03/23 13:43

<br />  共鳴現象はそう珍しいものでは有りません。非常に簡単な実験、1本の横糸を張っておいて、それに2個の振り子をつるし、

せると他方ととの間で振幅を交換し合う現象が簡単起こります。単純なのに結構面白いです。√2倍の長さの振り子(周期2倍)とも共振を起こすような現象とかも試すことができるでしょうね。振り子をつるす「横糸」はある意味分子内力場、誘電体や双極子そのもの、つるす「振り子」は分子内基準振動と考えれば振動間の相互作用の基本モデルになるでしょうね。
 101324さまの回答の通り、分子内力場ではは波動関数の混成に近い現象と考えるとのことのようです。縮重していなくてもFermi共鳴がおこり、2ν1≒ν2の場合、a・ψ(ν2)+b・ψ(ν2);a^2+b^2=1からψ(2ν1)の吸収・散乱が活性(ただし2ν1,ν2は摂動を受けもとの2ν1,ν2とは違う(2ν1)´,(ν2)´になるような、分裂に似た現象が生じることがある)になる、ν1+ν2≒ν3の場合にも同様なことが可能、より多様な混合においても可能なことがあるということのようです。
 古い資料を持ちいたために「狭い事実」を基にした回答になってしまってたことをお詫びします。頑張ってください。
(上記サイトの内容に惹かれ、ほかの文献を参照してて回答が遅れました。ごめんなさい。)
 
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> 結局、フェルミ共鳴というのは、(中略)


> ν1の方の縮重がとけて2本に観察されるということなのでしょうか?

いいえ。違います。2ν1のモードは、本来は禁制遷移のために吸収ピークが観測されないはずです。しかし、たまたま2つの振動モードが2ν1≒ν2の関係にあった場合に、ν2の吸収ピークに加えて、2ν1のピークが観察されます。そしてさらに、2ν1のモードとν2のモードの間の相互作用のために2ν1≒ν2の偶然縮重がとけるので、それぞれのピーク位置がシフトして、予想とは異なる位置に2本のピークが観察されることになります。

または、振動状態ν2の波動関数が、振動状態2ν1の波動関数と同位相で混ざった状態ν2+と、振動状態2ν1の波動関数と逆位相で混ざった状態ν2-とに分裂した、と考えてもいいです。

> この説明だとν1がもともとは縮重していたということになりますが、

ν1ではなくてν2ですよね。はい。縮重していません。#1さんの説明は、間違っています。

> これらの2本のピークが重なることによって、特にピークが分裂するわけでもピーク強度が強くなるわけでもなく

フェルミ共鳴が起こらなければ、2ν1のピークは禁制遷移なので観測されません(あるいは通常の結合音や倍音のように弱い吸収ピークになります)。本来は観測されないはずの2ν1のピークがフェルミ共鳴によって現れたので、スペクトル上では、ν2のピークが分裂したり強度が強くなったりしたように見えるわけです。

> ピークが分裂するというのがフェルミ共鳴ではないのでしょうか?

はい。そうです。ただし、分裂幅がピークの線幅よりも小さい時には、基準モードのピークが一本線のまま、予想よりも大きくなったように見えます。このときスペクトル上ではピークは分裂していませんけれども、これもフェルミ共鳴といいます。質問文に「基準モードのピークが大きく観察される」とありましたけど、分裂については触れていませんでしたので、質問者さんが分裂のないフェルミ共鳴について聞いているのかも、と考えて#2のような回答をしました。混乱させてごめんなさい。

> 2つの振動モードの吸収位置が近いからといって共鳴する理由

振動モードの間の相互作用の起源は何か?ということでしたら、ごめんなさい、私にも分かりません。振動モードの間の相互作用が存在すること、を天下りで認めてしまえば、「本来は禁制遷移の振動モードが、基準モードと混じり合うことによって許容遷移になる」と説明できます。これは、「基準モードからピーク強度を“借りる”ことで、高次の振動モードのピーク強度が大きくなる」とも表現されます。
 なお、振動モードの対称種が違ったり、振動している原子団の距離が遠いときには、振動モードの間の相互作用が存在しないので、2つの振動モードの吸収位置が近くてもフェルミ共鳴は起こりません。

長い説明の割には中途半端な説明でごめんなさい。詳しくは、
http://comp.chem.tohoku.ac.jp/hirose/chap1-2.pdf
の5ページをご覧下さい。
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この回答へのお礼

ご回答ありがとうございます。

かなり理解が深まりました。

でもどうしても分からないことが2つあります。

一つは、
>または、振動状態ν2の波動関数が、振動状態2ν1の波動関数と同位相で混ざった状態ν2+と、振動状態2ν1の波動関数と逆位相で混ざった状態ν2-とに分裂した、と考えてもいいです。

というところなのですが、同位相、逆位相というのはそれぞれ0°と180°に相当するわけですが、例えば90°とか間の位相であっても、振動モードの励起はあり得そうな気がするのですが、つまり2本のピークが出るのではなく同位相から逆位相にかけて連続したピークになっても良さそうな気がするのですが、なぜそうならないのでしょうか?


二つ目は、教えて下さったURLも見てみましたが、共鳴の起こるメカニズムが分かりませんでした。
他の方でも構いませんのでどなたか教えて下さい。

お礼日時:2009/03/02 19:19

・なぜ高次の振動モードと別の振動モードが混ざると共鳴が起こるのでしょうか?



高次の振動モードと別の振動モードが混ざることを共鳴と呼んでいるだけですので、「共鳴」という言葉にあまり引きずられない方がいいです。

・これによって引き起こされるのは、基準モードのピークが大きく観察されるということで合っていますか?

基準モードのピークが大きく観察されると考えるのではなく、本来は禁制遷移のためにピーク強度が小さいはずの高次の振動モードのピークが、フェルミ共鳴によって大きく観測される、と考えた方がいいです。
 ピークの線幅が広くて,高次の振動モードのピークと基準モードのピークとがスペクトル上で重なりあう時には、基準モードのピークが、フェルミ共鳴によって見かけ上大きくなったようにみえます。
 ピークの線幅が狭くて,高次の振動モードのピークと基準モードのピークとがスペクトル上で重ならない時には、基準モードのピークが、フェルミ共鳴によって見かけ上二本に分裂したようにみえます。

・普通の高次の項ではなく非調和項であることには何か意味があるのでしょうか?

フェルミ共鳴は倍音でも結合音でも起こります。「普通の高次の項」も非調和項のひとつです。

なお、「高いエネルギー順位の基準振動が縮重していなければ分裂としては観測されない」ということはないです。基準モードが縮重していなくてもフェルミ共鳴は観測されます。
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この回答へのお礼

お二方ご回答ありがとうございます。

でもやはり理解出来ませんでした。
高次の項が全て非調和項であることだけは分かりました。


結局、フェルミ共鳴というのは、たまたま2つの振動モードの吸収ピークが、2ν1≒ν2の関係にあった場合に、
ν1の方の縮重がとけて2本に観察されるということなのでしょうか?


理解出来ないのは、この説明だとν1がもともとは縮重していたということになりますが、なぜ縮重しているのでしょうか?特に縮重する原因が見あたらないのですが・・・

それと101325様の説明ですと、これらの2本のピークが重なることによって、特にピークが分裂するわけでもピーク強度が強くなるわけでもなく、ν2のピークが2ν1にかぶってくるために、2つのピーク強度を足し算した場合あたかも2ν1が大きくなって見えたというように解釈出来るのですが、そうではなくピークが分裂するというのがフェルミ共鳴ではないのでしょうか?

そしてもっとも分からないのは、2つの振動モードの吸収位置が近いからといって共鳴する理由が分かりません。

よろしくお願いいたします。

お礼日時:2009/03/02 14:33

● 分解能が上がったときに、二酸化炭素のスペクトルで、本来現れないはずの吸収が現れ、それをどのように考えるかということが問題になったのですね。

一番最初にFermiがこの解釈を与えたことからFermi共鳴といわれるわけですが、その解釈は「1つの基準振動ν1の倍音2ν1が他の基準振動ν2に近い場合には、その相互作用が起こり、エネルギー順位の分裂が起こり、異なる吸収・散乱として観測される」というものでした。

● 調和振動子近似では倍音は生じない。倍音は、非調和成分の存在によって生じる。

 調和振動子近似では、固有値からは基準振動νしか出てこず、エネルギー順位はその整数倍になります。E_n=nhνです。赤外線吸収・ラマン散乱はほとんどの場合Δν=1の遷移で起こるから、吸収・散乱が起こる場合にはΔE=hνとなって、その振動の基準振動で決まる振動数ν以外には観測されないはずです。
 ところが実際にはごくごくわずかならが2ν、3ν・・・に吸収が見られるという実験事実から、原子原子間の結合エネルギーの調和振動子近似は完全でないことになります。倍音・3倍音・・・そのような遷移を起こさせる影響を非調和振動子成分とか言うわけですね。

>>『普通の高次の項』ではなく『非調和項』であることには何か意味があるのでしょうか?
 基本的な用語を押さえてください。

<調和振動子近似>では、振動エネルギーがフック型のポテンシャル(1/2)・k・(Δx)^2で近似できるとして扱い、このような近似を調和振動子近似といいます。これはポテンシャルU(x)を平衡点r_eの近傍r_e+Δrでテイラー展開し、
U(r_e+Δr)=U(r_e)+(∂U/∂r)Δr+(1/2)・(∂^2U/∂r^2)(Δr)^2+(高次項)
で、U(r_e)をエネルギーの基準にとり、平衡点では(∂U/∂r)_(_re)=0であり、(高次項)は無視できるとした近似です。そのときは、基準振動以外の振動数は一切出てきません。
 従って<非調和成分>は無視したポテンシャルの『Δx^3以上の高次成分』によって生じることになります。『普通の高次の項ではなく』という表現は『???』ですよ。倍音を生じた=3次以上の高次項=非調和なのです。非調和成分からしか倍音は生じません。

 以上の通り、<『基準振動の倍音』が生じるのは、結合エネルギーが非調和成分を持つためである。しかし、本来なら『倍音での吸収・散乱はΔν=1のときに比べて、はるかに小さい』(=明瞭な吸収や散乱としては観測されない)はずである。>ということが前提です。

●ところが、分子の対称性からCO2のIRでは667,1340,2350cm^-1の3本の吸収だったものがラマン散乱で1340cm^-1のところが1285cm^-1と1388cm^-1の2本に分解されたのです。1340cm^‐1の基準振動は本来は縮重振動であり、分裂せずに1本の吸収として観測されたのですが、ラマン散乱では、「はっきりと観測される2本の散乱」に分裂したわけです。

 それでfermiの解釈です。667×2=1334cm^‐1となり、これが1340cm^‐1と非常に近い。そのためだと考え、元は縮重して区別のできなかった2つの振動が、667cm^-1の倍音との共鳴を起こし、縮重していたこの2つの振動状態で共鳴の仕方が違うためにそれぞれが違うエネルギーを持つようになりエネルギーが分裂してしまうと考えました。その摂動エネルギーの変化を求めると、『2ν1≒ν2の関係が有るときに、この差が小さければ小さいほど分裂が大きくなり無視できなくなる』ことを示したのです。

 たまたま2ν1≒ν2の関係がありこの差が非常に小さな値にならなければならず、しかも元の基準振動が縮重した状態でなければ分裂も起こらない。他の分子においてこのような『偶然』はあまり起こらないはずですから、『偶然の縮重』とも言われることが有るとのことです。

●以上から、ある基準振動の倍音が生じる→非調和振動によるもの。
●たまたま2ν1≒ν2のような関係がある二つの分子内基準振動があり、しかも高いエネルギー順位の基準振動が縮重していなければ分裂としては観測されない。もともとは『縮重して1本と考えていた2つの振動状態』が、共鳴現象で『異なる相互作用をしてエネルギーの差が生じて2本に分かれる』のであって、最初に縮重振動であることが前提のようです。近ければ勝手に分裂するものではない。
●しかし、明瞭な吸収や散乱として観測されるので、この『フェルミ共鳴の相互作用は思っている以上に強い相互作用である』と考えなければならない。

という結論が出てきます。
 理論計算と、実測からえられた結果とを総合して導いた『やや折衷的な理論』といえなくもないのでは?
(しかしfermiがこんなところでも仕事をしているのには驚きです。)
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