自己言及の文についての質問です。
1.「この命題は間違っている」という文は命題ですか?
もし命題であるならば、その命題の真偽は?
2.「この命題は正しい」という文は命題ですか?
もし命題であるならば、その命題の真偽は?
3.「この命題は証明可能である」という文は命題ですか?
もし命題であるならば、その命題の真偽は?
4.「この命題は証明できない」という文は命題ですか?
もし命題であるならば、その命題の真偽は?
以前にも4.について質問をしたのですが、
返答が得られなかったので、改めて質問いたしました。
どなたか論理学に詳しい方がいれば、ご教授願います。
No.4ベストアンサー
- 回答日時:
一応、集合論者で、数理論理学を授業で教えたこともある者です。
標準的な数理論理学の立場から見た場合の回答と私が思うことを書いておきます。非標準的な立場の論理学で違う結論に達することはありうるだろうと断った上で。ものすごく厳密に言えば、命題とはある一定の条件を満たす記号列のことです。だからこれらの文は全て命題ではありません。もちろんこれは揚げ足取りと言われても仕方がない回答ですが、このことはとても重要だと思います。
あまり厳密でないシチュエーションでは、日本語の文であっても、それを表現しているような記号列が存在すれば命題であると確かに言います。例えば、「『素数は無限個存在する』が命題である」と問われれば、ほとんどの人はイエスと答えるでしょう。しかしながら、それはこの主張を表現しているとほとんど全ての数学者が認めるような記号列が存在しているからであって、真偽が定まるからではありません。
また、ここで「表現しているような記号列」であるかを考えるには、体系の言語や公理系やその解釈が(ある程度は)定まっていないければいけないでしょう。
それに加え、真偽を語るためにはモデルを決めないといけません。ですので「その命題の真偽は?」という問いは不十分です。もっとも、全ての「普通の」モデルで真ならば、モデルについての言及なしに真だと言うこともあるかもしれませんが、このような微妙なところでは不適切な問いの立て方だと思います。
その上で、一つ一つの質問を見てみます。
>1.「この命題は間違っている」という文は命題ですか?
>もし命題であるならば、その命題の真偽は?
これを表現できるような記号列は、標準的な体系には存在しないでしょう。細かくは言いませんが、タルスキの「真理の定義不可能性」というものがあるので、真偽に関する自己言及は普通はできないはずです。
>2.「この命題は正しい」という文は命題ですか?
>もし命題であるならば、その命題の真偽は?
1.に準じます。
>3.「この命題は証明可能である」という文は命題ですか?
>もし命題であるならば、その命題の真偽は?
ここからが微妙です。普通の自然数論の体系(またはその拡張)Tを考えたときに、記号列Hで「Hは証明可能である」と解釈できるような命題と同値になることがT上で証明できるようなものが存在します。これはヘンキン文と呼ばれているものです。ただし、「この命題は証明可能である」ということをそのまま記述して命題にしているわけではなく、「この命題は証明可能である」という性質を持つようなものをうまく構成しているというものです。
ここでは、ゲーデルが不完全性定理の証明において使ったアイデアが使われています。存在はしていますが、それがなぜ「この命題は証明可能である」という意味を持つのかというところはさほど自明ではありません。このような文が、いくつかの自然な条件を満たす体系では証明可能であるということはレブによって証明されています。すなわち、そのような体系の全てのモデルにおいて真になります。
>4.「この命題は証明できない」という文は命題ですか?
>もし命題であるならば、その命題の真偽は?
3.と同様、(記号列としての)命題Gで、「Gは証明できない」と解釈できるような命題と同値になることがT上で証明できるようなものが存在します。これはゲーデル文と呼ばれているものです。Gもその否定もT上で証明できないということが、ゲーデルによって証明されています。そのため、完全性定理により、Gが成り立つようなTのモデルも、Gが成り立たないようなTのモデルも存在します。後者は不思議な感じがすると思うのですが、ここではGがどのような意味で、「Gは証明できない」と解釈できるような命題と同値になるかということが効いてきます。そのあたりは、きちんとした数理論理学の教科書なら書いてあると思います。
いずれにしても、しっかりとした数理論理学の理解なしに考えると、わからなかったり誤解したりすることの多い箇所ですので、もしちゃんと理解されたいようならば、何がしかの教科書をきちんと読むことをおすすめいたします。
専門家の方のご意見、ありがとうございます。
命題とはある一定の条件を満たす記号列という定義、とても参考になりました。
高校で習う命題の定義(真偽の判定ができる)は、じつは非常に曖昧なのではないかと考えていました。
なので、この4つの問題を考えるにあたって、定義を見直す必要があるだろうと思ってはいましたが、
これで少しすっきりしました。
4.だけでなく3.でも、不完全性定理の証明におけるアイデアが使われているんですね。
数理論理学は遠い昔に、ちょっとかじった程度で本格的に勉強したことはなかったのですが、
きちんとした教科書は、いまでも押入れにしまってありますので、時間のあるときに引っ張り出して
本腰をいれて読んでみようと思います。
No.3
- 回答日時:
素人の回答に返事を戴き、ありがとうございます。
2については私は「真」と見ます。これには、論理的な必然性も、意味論的必然性もありません。これは、いわば人畜無害な命題ではないでしょうか。1の反対で、どう考えても問題を起こさない、対象界に意味を持たらさない、「無意味」という意味しか持たない文ではないか。したがって、どう観るかは各個人に任される。??まあ、素人の気楽さですか。
3,4については、「証明可能」を日常語と解するなら、3は2と、4は1と同じ「命題」であろうと思います。
然し、形式論理学的な問題としますと、証明とは、と始めると、いきなりむずかしい問題にぶつかりそうですね。私は、遠い学生時代にも手を引っ込めました。ゲーデルについても敬して遠ざけていました。詳しい方が簡易な説明をくださるといいですね。
No.2
- 回答日時:
私は「論理学に詳しい方」ではないのですが、少し疑問があります。
先の方への返答を拝見しますと、
命題とは、真または偽であるべき文、と規定されているようですね。その時、1の件ですが、より正確に記述しますと、
G:「Gは命題であり、かつGは偽である」
となりますね?
このGの否定は、
「Gは命題ではないか、またはGは真である」
と見れそうな気がするのです。そうすると、Gは命題ではないと云うあなたの結論は、Gの否定を肯定し云々、となって、循環してしまわないですか。
要するに言いたいことは、1~4の「この命題」と言うのは拙いのではないですか、ということです。
再帰的定義記述が出来るとして、
1,G:「Gは偽である」
2.G:「Gは真である」
3,G:「Gは証明可能である」
4,G:「Gは証明可能でない」
1~4は、命題ですか?
という問題設定である、と考えて宜しいのでしょうか。
1,2については、古典的な問題です。3,4になると「証明」という意味を明確にするために、何らかの公理系においてとか、前提を置かねばならない、ではないでしょうか。
で、疑問です、
コンピュータのプログラム言語では函数の再帰的定義が出来るものが主流でしょう。でも、それは終端を自分で規定しているか、実行するOS側で監視していないと、スタックオーバーフローのエラーを起こしますね。つまり、再帰的定義を許す論理系があるとしても、それは、何らかの制限のあるものでないと、無理ではないか、と素人的に思うのですが。
1に関しても、質問者さんは、命題ではないと解釈をされるわけです。が、再帰的定義と否定によってパラドックスが起るから、「再帰的定義」は許されないとし、そのような論理系を考えた人も居るわけですよね。その場合は、1~4は全て不可な訳ですね。ただそれだと、制限がきつ過ぎるらしいのですが。
ついでにもう一つ疑問ですが、(これは自分で勉強せよといわれれば全くその通りなのですが)
ゲーデルのあの定理で、そのような直接的に再帰的命題が登場するのでしょうか。与えられた論理系が、「自分自身が無矛盾であることが証明出来ない」という命題を記述するのでしょうか。あの証明は直接的にそのような「命題」を生成して見せているのですか。そうではなく、存在を云っているだけ、と想像するのですが。即ち、それに該当する命題の存在を示しただけで、そのような再帰的定義が可能かどうかには触れていない、そんな気がします。(不勉強を告白しても仕方ありませんね、悪しからず)
とりとめもないことを書きましたが、専門家の登場されるまでの話題繋ぎになれば、と思いました。
返信ありがとうございます。
> 再帰的定義記述が出来るとして、
> 1,G:「Gは偽である」
> 2.G:「Gは真である」
> 3,G:「Gは証明可能である」
> 4,G:「Gは証明可能でない」
> 1~4は、命題ですか?
> という問題設定である、と考えて宜しいのでしょうか。
はい、そのとおりです。質問が拙かったようで失礼しました。
ところで質問ですが、2.G:「Gは真である」についても、
パラドックスが起きるのでしょうか?
Gは真であっても、Gは偽であっても矛盾はおきないですが、
この場合は、G∧¬Gが真となってパラドックスとなるのか、
Gは真または偽となってパラドクスは起きないか、私にはよくわかりません。
3.4.については、私が不勉強のため、全くわかりません。
わかるのは、あのゲーデルの不完全性定理と関係しているくらいですが。
> コンピュータのプログラム言語では函数の再帰的定義が出来るものが主流でしょう。
> でも、それは終端を自分で規定しているか、実行するOS側で監視していないと、
> スタックオーバーフローのエラーを起こしますね。つまり、再帰的定義を許す論理系があるとしても、
> それは、何らかの制限のあるものでないと、無理ではないか、と素人的に思うのですが。
確かに、終端(境界条件)を課した論理系なら再帰的定義は問題ないようですね。
でも数学の論理系では、コンピュータと違って終端を規定しなくても、論理構造が保てるものは
あるように思えるのですが、、、うーん難しいですね。
> ゲーデルのあの定理で、そのような直接的に再帰的命題が登場するのでしょうか。
> 与えられた論理系が、「自分自身が無矛盾であることが証明出来ない」という命題を
> 記述するのでしょうか。あの証明は直接的にそのような「命題」を生成して見せているのですか。
遥か昔のことなので、ゲーデルの定理は殆ど忘れてしまいましたが、
たしか、ゲーデル数というものを使って、再帰的命題を構築させたと記憶しています。
(記憶違いであれば、ごめんなさい…)
ここについては私も時間があるときに専門書を読んで見たいと思います。
No.1
- 回答日時:
特に論理学に詳しいわけではありませんが,お答えしてみます.
質問の1,2,3,4,いずれも命題ではありません.なぜならば,
1,2,3,4の文が,文のなかの「命題」の内容に依存するからです.
つまり,「文の真理値が或る変数に依存するものは命題ではない」のです.
この様な文を「開いた文」を呼んでいるようです.
ですから,1,2,3,4,が命題になるためには,別に命題がもう一つなければなりません.
例えば,
命題G: すべての偶数は2つの奇素数の和で表せる.
という命題Gがあって,その上で,1,2,3,4の「 」のなかの命題を命題Gに
変えれば,これらの文は,命題になります.
私は,論理学は専門ではないので,何か勘違いがあるかも知れませんが,
気が付いたら,お知らせします.
早々の返信どうもありがとうございます。
質問の仕方が悪かったのかもしれませんが、例えば1.で
G:「この命題は間違っている」の「この命題」とは、Gそのものを指します。
つまりGは「Gは間違っている」と表され、自己言及の文となっています。
じつは、1.については明快な解答が得られており、
Gが真であると仮定すれば、「Gは間違っている」は真、すなわち
Gは偽となります。これはGが真であることに矛盾します。
同様に、Gが偽であると仮定すれば、「Gは間違っている」は偽、すなわち
Gは真となります。これはGが偽であることに矛盾します。
Gは真と仮定しても偽と仮定しても矛盾するので、
Gは命題ではないことがわかります。
2.3.4.については、命題か否かは私にもわかりません。
ご存知であれば教えて頂きたいと思い、投稿いたしました。
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