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量子物理学を勉強しています。
Semiconductor Opticsという文献を読んでいます。
その中の25.3.2.3Coherent Processesの中で

「スピンの位相緩和時間は波動関数のthe real space partの位相緩和時間よりもかなり長くなり得る」

とあったのですが、これはどういう現象なのでしょうか?
できれば波動関数を用いて式で説明していただきたく思っています。
どうかお力添えお願い致します。

A 回答 (1件)

 どのレベルから理解できていないか解らないので、回答し辛いのですが、だいたい以下のようなことです。



 量子状態はそれが複素数で指定されるのに対し、観測量が実測であることに対応して、位相という項が現れます。これが量子の干渉性を生み出しています。この位相情報は環境との相互作用により乱され、徐々に失われて行きます。この位相情報が失われる時間の指標が位相緩和時間です。スピンの例で行くと、z方向に量子化軸を取った時に、経度方向の向きの情報が位相に対応し、こちらの変化は、エネルギーの変化をともなう緯度方向の変化(エネルギー緩和時間)よりも起こりやすくなります。これが、その本に書いてあるT2<2T1ということです。

 非相対論的波動関数では、時間と空間が非対称です。そのため粒子は、空間部分を表す波動関数と、それとは独立の内部角運動量自由度であるスピン関数の2つの組み合わせで状態が指定されます。これら二つを独立なものとしてとらえて、それぞれで位相緩和時間を考えると、空間の位相緩和時間が、スピンの位相緩和時間よりも短いということです。たとえば、アハラノフボーム効果のように、空間成分の干渉をみるためには、サンプルの質や温度に非常に気を配らねばなりません。これは、空間成分が環境と相互作用しやすいため生じています。一方、スピン成分は環境との相互作用が小さいため、緩和が起こりにくく、スピン共鳴効果などを通じて比較的容易に検出することができます。

 ところで、実際にはスピンと空間項は完全には独立ではありません。これは波動関数を相対論的に書き換えたDirac方程式から明らかです。スピンは軌道角運動量との相互作用を通じて、環境と相互作用しています。そのため、空間成分と関連したスピンの緩和も起こります。しかし、スピン軌道相互作用は、系によってその大きさが大きく異なります。例えば伝導帯では価電子帯に比べて非常に弱いですし、また炭素のような軽元素ではゲルマニウムなどの重い元素にくらべて弱くなります。そのため、系によってはスピン自由度が空間成分と大きく切り離されて、位相緩和時間が大きくなることがあるのです。
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