No.15
- 回答日時:
こんにちは。
なかなか面白い質問で、本質的にも実は難しい問題ですね。
較正機関の者ではありませんが、精度・較正の関連規定に携わったことがあり、議論が繰り返される問題でもあります。他の方のご意見が少し論点がずれてきているようでもありますが、次のような回答は参考になるでしょうか。
ポイントは、「実は”較正”の考え方は、測定器をある範囲で信頼することが前提。原則論では、再較正時の誤差責任はさかのぼらない(ようにする)」
さて、仮に単純化した次のような問題が起きたときに、皆さんはどうお考えでしょうか。
「十分に較正された測定器を準備し、その後1年間に長さの誤差1%以内で「棒」を1万本生産した。1年後に測定器の精度を調べたら、1.5%短く表示されることがわかった。出荷した製品はどうすべきか」
当然、生産する「棒」の性質により、取扱が大きく異なり、単純な「正解」はありませんね。
「棒」が生命を左右する医療用薬液の調整バルブならば全数回収も当然(さかのぼって品質完全保証)。一方、「棒の形のキャンディ」ならば長すぎるのはお客さんに利益があるので過去は無視。再調整すれば十分でしょう。
その中間の「中途半端な責任」がある場合でも状況は複雑で、「ロットごとの記録があれば、誤差0.7%(1/1.5)を超えたものだけ弁償扱い」とか、「顧客も怒ったがお詫びしたら性能に影響がないので穏便に済すませてくれた」などなど。
他方、これらの複雑な状況を前に一般的な「較正」の規定(ルール)を作る側では次のように考えています。
・まず、製品に対して「社会的に」必要な精度が「ひとまず」決まります。(一次基準)
(自動車の速度計(センサ)などは安全性の面から法律で(表示が-0%~+10%になるなど)、キャンディの大きさなどは原料コストの余裕やお客さんの満足度調査をもとに会社の規定で「-0%~+7%」など)。)
・次に、測定器の精度と較正間隔を決めます。この際には測定器の信頼度を「経験により」盛り込みます。
製品の誤差を10%以下にしたいのならば、もともとの誤差精度が1%くらい以上の測定器を使用するべきなのは当然ですが、測定器そのものの経年変化を考慮して要求する精度と較正期間を決めます。
例えば、常識的に公称1%精度の測定器の実力としての誤差が0.5%で、5年かけて誤差が1%くらいまで劣化しそうならば、較正間隔を十分短い期間として1年とします。
(なお、通常「どの程度劣化しそう」という明確な統計データは入手しにくいので、このあたりは測定器メーカの提示仕様のほか、経験・常識による)
・最後に、これらの見込まれる測定や較正要件まで含めてルールとして策定します。(二次基準)
「許容誤差は-0%~+10%とする。計測の際には公称誤差1%以下の測定器を使用し、測定器の較正間隔は1年以下とする。」
・・・この場合、論理的に最悪では11%の誤差が生じる可能性がありますところ、もとの「10%」に重大な社会的意義があるならば、「許容誤差は・・9%・・とする」として、論理的に(あくまで論理)10%を超えないように修正しますが、通常は「10%」そのものの規定のわかりやすさを優先して「・・10%・・」と規定します。
したがって、一般的にはこのような規定の考え方は
「測定器の精度は社会的に期待される精度に比べて十分に高いので、測定器の精度にはある程度の余裕がある」
という前提になっているものでもあるため、特に「測定器をぶつけてしまった」や、「明確な故障とみられる桁違いの誤差が見つかった」などの事件がないかぎり、原則として「過去にさかのぼる義務はない」ということになります。
(精度・較正関係の規定についても、「1年以下で較正すべき」と書いても「較正時に大き目の誤差が見つかった場合の製品の処置」は記載しないことが多い。その意味では、実は上記の「棒」の問題は、
「誤差1%以内の製品に、これと同等の桁の精度の測定器を使用する規定を設けたこと自体が誤り」です。)
とはいえ、製品の性質ごとに上記の一般的な考え方に加えて、品質管理のいろいろな考え方を規定に追加していきます。
測定対象を抜き取りか全数かや、逸脱がわかった場合の製品の処置、測定器の故障さえも考慮して測定器を2台以上使用して精度を確保する場合(これは確度とも言います)等いろいろな場合がありますが、
いずれにしてもそのような場合には計測規定や品質管理規定に明確に記載することになるので、それらが決められていない製品ならば、一般論に従って、「過去を振り返る必要はない」(測定器は再確認せずに廃棄してよい)ということになるでしょう。
さてさて、問題がけっこう深いこともありすっかり長くなってしまいましたがいかがでしょう。
お役に立てば幸いです。
余談ですが、「較正翌日の保証」もよくある議論です。こちらも対象製品の性質により考え方が異なりますが、一般論で申し上げれば次のようになります。
「較正翌日にも精度が維持されているかどうか・・・実は”翌日に精度がくるって規格逸脱の製品が製造された”ことについて、較正機関は責任を負いません。
(あくまで特定の日に精度が確保されていることの確認。実は車検も同様の考え方。この点では特に杜撰な較正が行われていなければ裁判所も門前払い)
そこで、規格逸脱製品については製造業者の責任となりますが、法令で定められた較正期間を守っていた場合には製造業者も少なくとも法令違反としての責任(刑事責任)は問われず、最後に残る顧客に対する責任(民事責任)については、これが「返金」だけですむか「慰謝料」や「休業補償」まで支払うかは最終的は裁判所の判断になるのだが、結局は、”被告(製造時業者)は規定の較正を行っており、その精度や間隔の基準は通常にありえる経年的な劣化に対して十分に余裕をみたものである上、較正の次の日において(故障等により)大きな誤差が生じたことについて被告は重大な過失があったとは言えず、価格(返金)の範囲でのみの補償が相当”との判決になりそうだと感じています。
・・・「不可抗力」と言います。まあ、ひとまずの責任は認めるが、自然災害みたいなものなのでその損害はみんなで引き受ける・・・という感じの考え方。
実際には「企業の信用」の問題があるので、こんな事例での裁判は稀かと。)
ご丁寧な回答有難う御座います。
>ポイントは、「実は”較正”の考え方は、測定器をある範囲で信頼することが前提。
>原則論では、再較正時の誤差責任はさかのぼらない(ようにする)」
>いずれにしてもそのような場合には計測規定や品質管理規定に明確に記載することになるので、それらが決められていない製品ならば、一般論に従って、「過去を振り返る必要はない」(測定器は再確認せずに廃棄してよい)ということになるでしょう。
申し訳御座いません。やはり、私は、i_am_a_godのご意見に賛成です。
No.14
- 回答日時:
私は、較正後の1年間の測定値は保障されると言っています。
また、もしも(あくまで仮定の話ですよ)、翌日の測定値が保証されないのなら、機器を検査して正常(誤差は規定内)と出ても、その1日前の測定値も保証されないことになります。
No.13
- 回答日時:
おいおい、それじゃあ、「校正の有効期限は、1年です」は、何の意味もないと?
較正に出しても、その翌日には既定の誤差以上に狂っているかもしれないから、測定値があっている保証はないということ?
そんな風だとしたら、一年後に誤差測定して規定内に入っていたとしても、一度ずれて、また元に戻っただけかもしれないという意味になってしまう。
「この機器は、いつどれだけ狂うかわかりません。狂いはプラス側になることも、マイナス側になることもあるので、たまたま使っているうちに打ち消してしまうこともあります。」になってしまって、1年間隔で機器の検査をしたとしても無意味ということになってしまう。そんな無意味なことをするはずがない。
較正の有効期限は、
「1年間は、この調整した機器を既定の誤差内で信用してもよろしい。1年間その機器が既定誤差以上に狂う可能性はありません。」というのが正しい意味。
この回答への補足
>おいおい、それじゃあ、「校正の有効期限は、1年です」は、何の意味もないと?
>較正に出しても、その翌日には既定の誤差以上に狂っているかもしれないから、測定値があっている保証はないということ?
翌日の測定値は、保証しません。但し、1年前のH25年1月30日から、H26年1月29日に、この計量器で、測定した値は、「正常」であると保証します。ということですね。
No.10
- 回答日時:
N校正機関では機器が到着した時点で最初に行った校正で正常/異常の判断をします。
通常は調整が必要ならばその後調整して返却しますが、最初の校正で異常判断がなされれば使用者側は即是正対象です。
校正機関では調整前に異常があった場合、到着時と返却時の2通の校正証明書が送るはずです。
これは前回(1年前)から今回までの間に校正外れを起こしている場合に製品回収などの措置を講じられるようにです。
この回答への補足
>これは前回(1年前)から今回までの間に校正外れを起こしている場合に
>製品回収などの措置を講じられるようにです。
その通りですね。
校正とは、前回(1年前)から今回までの間、すなわち1年間過去を遡って問題がなかったことを証明するのですね。
すると、購入時は、使用していないので、校正は不要なのですね。
使用1年後に校正して、1年間過去を遡って問題がなかったことを証明すれば良いのですね。
No.9
- 回答日時:
確かに、厳密な意味での較正(この字が正しいようです)には、調整は含まれません。
正しい値と、測定器の表示値とのずれを調べて表示するだけです。この場合、誤差の大小にかかわらず「較正ずみ」になります。(その意味でも、合格/不合格、という結果にはならない)しかし、普通、機器の較正というと、 誤差測定→調整→誤差測定→調整・・・ を繰り返して、最終的に誤差を基準内に納める作業をさすことが多いです。
もし、較正した機器に「合格」と書かれていたなら、それは「最後の誤差測定で基準内の誤差に納まっていることを確認した」という意味です。
No.8
- 回答日時:
※校正とは基準値の範囲内に計測器の測定値が収まっていることを「確認する作業」のことを言い、「調整」とは異なる。
調整は、校正を行ったあとに次回校正で異常判定が出てしまう可能性がある場合に行うものです。
No.7
- 回答日時:
そもそも論
テスタの2端子法測定にどれだけの精密性があるのか?おそらく電圧確認用途であったのでしょう。
そもそもそのテスタはどういう用途でどのようなものに使用していたかが問題となるはずでは?
製品製造過程で使用されていた場合、その製品のスペックから外れるものを出荷している可能性があり、最悪の場合リコールや購入者から訴訟などを起こされます。
副標準機として社内に電圧を確認するためのものがあれば、そこでトレーサビリティをとって電圧確認を行う(誤差計算などは別途行う)ことで保証するやり方もあるかとは思いますが。
そこはやり方の問題だと思います。用途が対製品であれば校正してから廃棄するべきでしょう。
この回答への補足
>そこはやり方の問題だと思います。
>用途が対製品であれば校正してから廃棄するべきでしょう。
用途は製品出荷のため、電圧を測定します。
校正してから廃棄するべきというご意見に同意します。
>副標準機として社内に電圧を確認するためのものがあれば、
>そこでトレーサビリティをとって電圧確認を行う
>(誤差計算などは別途行う)ことで保証するやり方もあるかとは
>思いますが。
この点も同感です。
No.6
- 回答日時:
#2です。
計量法では取引用のメーターの中には検定期限が10年という長いレンジのものもあります。
電気料金やガソリン購入など、10年もどうやって遡って精算するのですか?
そもそも検定時に正常範囲内であったならば、途中は正常であったと証明出来るのですか?
気温による変動などもあったかもしれません。
そもそも1年も遡って製品回収しなければならないようなものであるのなら、毎日の仕業点検で誤差測定して未然に防止した方がコスト的にも安くなるでしょうし、信用も確保できるのではないですか?
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