「訪れる」を自動詞としている辞典があります(三省堂、小学館、福武書店など)。これらに従えば、人が訪れる場所に対して「を」を使い、人には使えないことになります。小学館の「類語例解辞典」では、「『彼を訪れる』という言い方はせず、『彼の家を訪れる』の形になる。」と言い切っています。
自動詞は目的としての「を」は使わず、 移動(行為)の場所(例:道路を歩く、公園を走る)に「を」を使うのですが、「先生のお宅を訪れる」は移動先・目的地ですが、はたして移動の場所に該当するのかどうでしょうか。
また、時節や状態が訪れる場合は場所でも人でも「に」を使うのですが、なぜ「へ」は使えないのでしょうか。
次に、自他動詞としている辞典(大修館書店、小学館)に従えば、他動詞の場合は人が主語で場所や人に「を」を使うことになります。
両者の違いは、「人を訪れる」と言えるのかいえないのかということになりますが、皆さんどうでしょうか。
No.3
- 回答日時:
#2です。
>ただ、「彼には、訪れる人も誰一人としておらず」と言う表現では、「訪れる」に対して「には」を使っっているのではなく、「~には~もおらず」と「おらず」に対して使っていると思います。
:
たしかに、おっしゃるとおりですね。失礼しました。
「晩年、すでに影響力を失っていた彼に、訪れる人は誰一人としておらず・・・」という例文に差し替えさせていただきます。
いずれにせよ、
大辞林では「 ある場所や人の家に行く」なので、自動詞であっても他動詞であっても人には使えないことになります。
大辞泉では「人やある場所をたずねる」なので、人に対しても使えるのではないだろうか、ということを言いたかった次第です。
>ところが、「訪れる」(語源は「音擦れるまたは音連れる」)は自動詞という説に従えば、「人を訪れる」とは言えませんが、自他動詞という説に従えば「人を訪れる」と言えることに成ります。
:
自動詞であっても、「彼の居場所」「彼が現在、存在している空間」といった意味で、ヲ格を使った場所への移動という用法は可能ではないでしょうか。
自動詞と他動詞の違いは、単なる移動なのか、目的を持った訪問なのか、ということだと思います。
辞書が自他動詞として他動詞用法も認めているのは、「人を訪れる場合」を認定するためではないでしょう。
訪れる先を単なる移動先と見るだけでなく、「その場所や人を目的にして向かう先」と判断するほうが妥当な場合もある、という解釈に基づいて自他動詞という解釈をしているのではないだろうか、という気がします。
No.2
- 回答日時:
「 [ 人 ] を訪れる」という言い切りの表現は、かなり違和感を覚えます。
「『彼を訪れる』という言い方はせず、『彼の家を訪れる』の形になる。」という類語例解辞典の記述を信用したいところです。
ただ、これは、あくまで終止形の場合のような気がします。
たとえば、「晩年、すでに影響力を失っていた彼を訪れる人も誰一人としておらず・・・」のような表現はできるのではないでしょうか。
大辞泉では大辞林とは異なり、人に対しても使える語釈になっていますが、「ヲ格」を取るなら、たとえばこのような連体形の場合とか、あるいは、「晩年、すでに影響力を失っていた彼には、訪れる人も誰一人としておらず・・・」といった文脈で使うのは、個人的感覚としてもアリと思います。
この場合、「彼と会うために」ではなく、「彼のいる場所」を訪れるというニュアンスで、移動の意味を持つ自動詞になるでしょう。
同様に、「先生のお宅を訪れる」も、移動の場所に該当するように思います。
「彼と会うために」という意図の場合は「彼を訪ねる」と表現すると思いますが、
【1】「訪ねる」は、様子を知ろうとして、その場所に出かける意、または、ある目的から人に会いに行く意。
という類語例解辞典の記述どおり。
先に挙げた2つの例文の場合、「彼に会うために」という要素は希薄であり、「ふらっとでも顔を出すような人もいなかった」というニュアンス。
>時節や状態が訪れる場合は場所でも人でも「に」を使うのですが、なぜ「へ」は使えないのでしょうか。
:
「へ」は、「~に対して」とか「~に向かって」のような【方向性】の要素が色濃い格助詞と言えるでしょう。「世界へ平和が訪れる」でも間違いではないのでしょうが、【時・場所】という要素が強い「に」を使って、「世界に平和が訪れる」とするほうが自然だからだと思います。
>次に、自他動詞としている辞典(大修館書店、小学館)に従えば、他動詞の場合は人が主語で場所や人に「を」を使うことになります。
:
自動詞か他動詞かの区分は、たしかに難しそうですね。
個人的には、移動の要素を重視して自動詞で良いと思うのですが、訪れた先に強い影響を与えるシチュエーションも想定して、つまり「訪ねる」とほぼ同義に解釈できる場合もあるとして自他動詞としているのかもしれませんが、詳しいことはわかりません。
どのような用例が挙がっているのが興味が湧きますね。
詳しいコメントありがとうございます。いろいろ参考になります。
ただ、「彼には、訪れる人も誰一人としておらず」と言う表現では、「訪れる」に対して「には」を使っっているのではなく、「~には~もおらず」と「おらず」に対して使っていると思います。
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三省堂の新明解国語辞典と小辞林あるいは福武書店の国語辞典では「訪れる」は自動詞となっており、大修館書店の明鏡国語辞典では「自他動詞」となっています。また、三省堂の大辞林では「① ある場所や人の家に行く。訪問する。 ② (時節やある状態などが)やってくる。 ③ 音をたてる。④ たよりをする。手紙で安否を問う。」 となっており、小学館の「類語例解会辞典」には『「訪れる」は、「訪ねる」とほぼ同じ意味だが、「彼を訪れる」という言い方はせず、「彼の家を訪れる」の形になる。他に、「春が訪れる」「平和が訪れる」のように、ある時期、季節、状態が「やってくる」の意味にも用いる。』となっています。
これに対して、小学館での「大辞泉」では「1 人やある場所をたずねる。訪問する。 2 季節やある状況がやって来る。 3 音や声を立てる。4 便りをする。手紙を出す。」となっています。
「訪問する」「訪ねる」は他動詞なので、もちろん「人を訪問する/訪ねる」と言えます。ところが、「訪れる」(語源は「音擦れるまたは音連れる」)は自動詞という説に従えば、「人を訪れる」とは言えませんが、自他動詞という説に従えば「人を訪れる」と言えることに成ります。
いろいろ考えましたが、次のようなことではどうでしょうか。
「彼を訪れる人」、「彼に訪れる幸せ」などは違和感がないと思います。
したがって、ものが主語の時には自動詞で目的地・人に「に」を使うが、単なる移動ではなく一定の作用または影響があるので単なる移動の方向を示す「へ」は使わない。
「人」が主語のときには一定の意思や目的があり他動詞として場所や人を目的語として「を」を使う。
ただし、「訪れる」は昔は「音擦れる」または「音連れる」という自動詞だったことから、人を目的とする場合には、ある程度の違和感が生じる場合もある。
結論的にいえば、ものが主語のときには自動詞、人が主語のときには他動詞で、人を目的にする場合には違和感が生じる場合もある。