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がん性疼痛緩和治療に関する仕事(医療従事者ではありませんが)を始めたばかりなので、少々お尋ねしたいことがございます。

先般、某週刊誌に
「(がん性疼痛緩和治療に対し)モルヒネを使うと死期が早まるなどという誤解が医療者や患者・家族にも根強い」という記事がありました。
一方、某新聞記事で紹介されていた「尊厳死の宣言書」のサンプル文面には
「痛み止めの麻薬などの副作用で死ぬ時期が早まってもかまわないので苦痛を和らげる処置は最大限に実施してほしい」とありました。

後者は疼痛治療を望みながらも「副作用で死期が
早まっても良い」という表現のため、前者の「誤解」につながってしまうのではないかと思います。
症状には個人差があるとは思いますが、
「副作用で死期が早まる」ものなのでしょうか?

A 回答 (4件)

 しばしばモルフィンを処方している者としてお答えします。

癌性疼痛に対する鎮痛剤の使用についてですが、最初は非ステロイド性消炎鎮痛剤というカテゴリーの薬剤を投与します。アスピリンなどを想像していただければよいかと思います。このグループの薬にも消化器症状などの副作用があります。

 この群の薬で対処困難になったら、吸収の遅いモルフィンの飲み薬を処方することが一般的です。このとき、最初の群の薬と同時に処方することもあります。処方の原則は必要かつ十分ということに尽きます。

 一般には投与量が徐々に増えていき、ある時点で、経口投与が困難になる場合が多いのです。それは消化管ががんのために正常に機能しなくなる事で、経口投与が不可能になる場合もあるし、痛みをとるための必要量が薬を飲み下すのに困難を覚えさせるほど多いといった場合もあるでしょう。その場合には座剤、貼付薬、持続皮下注射などの方法に切り替えます。

 さて、モルフィンによる生命予後の短縮についてですが、医学部での教育で、医師は生命予後を可能な限り引き伸ばすことを教え込まれます。したがって、本来教え込まれた癌との戦いを放棄することへの忌避が『寿命を早める』といった言説をまことしやかなものとして広める動機になったと考えられます。

 一方、モルフィンの投与によって癌組織が縮小したとする報告もあり、その立場からすると、モルフィンの投与によって寿命が延びるということになります。

 我々が担癌患者にモルフィンを処方するのは、恒常的な痛みがもたらすストレスを軽減するためであり、そのことによって日常生活の質が改善することが多いのです。

 もちろんモルフィンには皮膚の掻痒感とか便秘などさまざまな副作用もありますので、それらを打ち消すような薬剤を同時に処方する必要がありますが、じっと痛みを我慢するようなことを強いるべきではありません。

 なお、必要にして十分な量のモルフィンを処方した場合、意識が朦朧として日常生活がまともに送れなくなると言う事はありません。そうした状態になる場合、すでに脳への転移などが発生して寿命が尽きようとしている場合も考えられるでしょう。
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この回答へのお礼

解説、ありがとうございます。

医学教育の時点ですでに「死期を早める」と認識されやすい流れ(?というのかな)があるとすれば、
それは非常に重大な問題と思われます。

がん患者さんを持った遺族の方が「(モルヒネを使用して)朦朧としている親族を見ている。<疼痛>などと簡単に言ってくれるな」と<疼痛緩和医療>の推進について反発気味でした。
(否定をしているのではなく、「手品のように簡単に痛みが消えるものではない」ということをきちんと説明して実施すべきである、というご意見)

もしかすると上記の遺族の方は、実は(患者さんに対して)「必要にして十分」ではない量の投与だったり、病状の進行が別のとこにきて(すみません、言い回しが下手で;)たところに疼痛治療が合致してして、それに気づかなかった(分からなかった・知らされなかった)かもしれない、という可能性も考えられますね。

難しい。うーん。とても重い仕事になってきました…

お礼日時:2004/07/12 22:04

こんばんは^^



>*「ムンテラ」とは相談?「譫妄」←読むこともできない!

「ムンテラ」は症状説明
「譫妄」せんもう   です^^
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この回答へのお礼

度々ありがとうございます。
感謝:m(_ _)m-★

お礼日時:2004/07/13 15:23

こんばんは。



疼痛緩和に重点を置きすぎてしまうと
呼吸不全などの副作用で呼吸困難によりお亡くなりになるというケースもあります。

じっさい医療現場ではモルヒネを使いますが
これでは足りないからもっと強くしてほしいと要望される場合があります。
そのような場合はケースバイケースなのですが
家族の方にムンテラします。

これ以上のモルヒネを使用すると痛みは楽になるだろうけど
譫妄や呼吸困難などがおこってくるので
それによりなくなる場合があるという説明もされます。

そういうことで、モルヒネで死期が早まるというようにいわれているのかもしれないですね。

参考になれば幸いです。
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この回答へのお礼

回答、ありがとうございます。
疼痛緩和は大事だけれども
「重点を置き過ぎる」ことはまた別の問題が派生するのですね。
何で「痛いのか」の「何」を、いつも把握してないと疼痛に偏ってしまう事での「弊害」(という表現しか、私にはできなくて恐縮ですが)も有り在り得るということですね。それで、死期が早まるということにつながる、と。

うーん、そうか、多方面からいつも考えてないとダメなんでんすね。これは大事なことでした。「とにかく疼痛一番だ!」みたいになっており、このあたりに気が回りませんでした。感謝します。とても参考になりました。

*「ムンテラ」とは相談?「譫妄」←読むこともできない!ので自分で調べてみます。

お礼日時:2004/07/12 21:34

こんにちは。



まず、モルヒネですが、この薬は非常に長い歴史を持ち、十分すぎるほどの臨床データもあり、どの位を使えば痛みだけ制御できて、身体には害を残さないか、どの位使えば中毒になるか、死期を早めるような事になるか・・・という事が良くわかっている大変使いやすい薬です。

昔は、そういう知識が無かった、普及してなかったなどの原因で、とにかく大量投与で痛みを止めたため、実際に体力を消耗し、あるいは中毒になり、死期を早めた事が非常に多かったのです。

ですので、今では、その文章のその部分は形式だけになっています。
痛みを制御する目的で、中毒量を使うなんていうのは非常に特殊な場合だけです。

どうしても制御しきれない痛みというのが出る場合が非常に希にですがありまして、そういう場合はやむを得ず、中毒やそういう副作用を承知で使用しますが、こういう例は滅多にありません。
世界でいくつあった・・・というレベルの話です。

ですので、現在、医療でモルヒネの使用による中毒が発生したら、それだけで訴訟ものです。

実際問題、まずありえないと考えていただいて結構です。

その位、経験、知識が蓄積した大変使いやすい薬なのです。

ただ、痛み止めの薬はモルヒネだけではありません。
モルヒネが効かない場合とか、量的にそろそろ避けたい場合に他の薬を使う場合もあるでしょう。
モルヒネほど経験の蓄積された薬というのは大変稀有なものなので、モルヒネよりそちらの方が危険が大きい場合はあるでしょう。
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この回答へのお礼

回答、ありがとうございます。
「痛みはとれる、と言っても副作用が大変だから、
安易に<疼痛治療しましょう>と推進するな」と
言われたこともありました。
直接患者さんに面会、というのもなかなか難しいので、ご回答は大変参考になりました。

お礼日時:2004/07/09 15:54

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