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1 質問事項
口述権について,著作物を公衆に販売した後は,販売した権利がなくなるのか,結論と理由を教えてください。特に,裁判例があればご教示ください。

2 質問の趣旨
先日,このサイトの著作権についての質問において,「著作物である市販物を販売した時点で著作権者は利潤をあげており,それ以上の利潤を認める必要はない。口述権は、狭義の著作権の一部であり,財産権の一種。著作権者が著作物の販売で利潤をあげた後にさらに口述権を保護する必要はない」旨の回答がなされていました。
著作権のうち譲渡権については,26条の2で,いったん公衆に譲渡された著作物について適用されない旨明記されていますから,いわゆる「権利の消尽」がなされるといえます。また,頒布権(26条)については,権利の消尽は明記されていないものの,最高裁平成14年4月25日判決で「頒布権のうち譲渡する権利はその目的を達成したものとして消尽する」と判断されています。
しかし,口述権については,24条で「その言語の著作物を公に口述する権利を専有する。」とされているだけで,「権利の消尽」は明記されていない上,実質的にも,著作物を購入したからといって,その著作物の内容を自由に口述できるとすれば,著作物の内容の社会的価値自体を低下させるおそれもあり,無許諾で行うことには問題があるのではないかと思います。
そこで,正確な結論を再確認したく,質問いたしました。

A 回答 (5件)

No.1です。

ボクはその質問も事案も知らずにNo.1回答をしましたが、少し混乱している気がしますね。

塾で講師も生徒も教材を購入した状態で、教材を読み上げる行為は著作権法24条の「著作物を公に口述する」行為ではありません。
「口述する」とは「読み上げることで内容を伝達すること」です。著作物の内容は講師・生徒が保有している教材に最初から書かれているのだから、読み上げられることで伝わるわけではありません。その行為は口述でないんです。そのような行為に、口述権が及ぶわけはないのです。そこを混同されていますね。

だからこの事案で口述権が保護される、されないを議論するのはそもそもおかしいのです。

それから消尽が明文で規定されていないのは「解釈で導かれる」からではなくて、権利を行使したらその権利が消尽するのは当たり前(解釈は不要)だからなんです。
しかし口述権は一度も行使されていませんね。だからどう解釈しても口述権は消尽しません。

この回答への補足

再度の回答ありがとうございます。
学習塾で,先生と生徒が市販されたテキストを一人一部ずつ参照しながら授業を進めることはそもそも「口述」ではないということですね。
この事案では,この行為について著作権者の許諾が必要かが問題になったのですが,結局,著作権侵害はなく,許諾は不要と考えてよろしいのでしょうか。

補足日時:2012/01/03 21:47
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1.支分権の一つの口述権と消尽はなじみません.つまり,基本的に口述権は消尽しません.


著作権の全ての支分権について消尽が適用されるわけではありません.たとえば,ご存じの貸与権は消尽しません.

「消尽」は知的財産権自体が「物」のような扱いがされ流通する場合において,もともと「譲渡」に関して作られた規定です.ただし,映画の譲渡については譲渡権の対象から除かれており(法26条の2第1項括弧書),貸与を含め頒布権の対象とされます.頒布権の消尽については議論があります.
消尽は,本来,財産権保有者が流通のコントロール(支配)を防止する独禁法の観点にも繋がるような,市場支配を防止する目的があります.
ご質問の中にある「販売利潤を制限する」という意味はそうした背景がありますが,口述権は対象ではありません.

口述権は法24条「著作者は、その言語の著作物を公に口述する権利を専有する。」とあるように,公衆への提示が対象です.また,消尽について規定されていません.口述録音の再生の上映を除く公衆送信も含みます.

2.口述権の対象は小説,詩,講演等であり,上演,演奏などは対象外で,法38条1項で非営利,無料,無報酬の場合は対象外です.適用範囲が狭いためか,口述権に関する争いがあっても,それを認めた判例はありません.
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この回答へのお礼

ご回答ありがとうございました。

「「消尽」は知的財産権自体が「物」のような扱いがされ流通する場合において,もともと「譲渡」に関して作られた規定」で,「消尽は,本来,財産権保有者が流通のコントロール(支配)を防止する独禁法の観点にも繋がるような,市場支配を防止する目的があ」るという点,よくわかりました。

お礼日時:2012/01/04 19:00

口述権に関する判例を私は知りません。

もしかしたらないのではないですかね。口述する場面は多いかもしれませんが、訴訟にもっとも発展しにくい支分権だと思います。譲渡権侵害も珍しいですが覚えがあります。
きっとご存知でしょうけど、ニュース番組で口述した場合は口述権ではなく公衆送信権の対象となり、口述した物を録音し頒布した場合には複製権の対象であり、口述権の対象は直接公衆に対して口述することなので大きく権利を侵害するケースは稀であると思います。著作権関連の本でも口述権に関する記述は非常に少ないです。口述する相手が特定少数であったり、38条の非営利目的での口述が適用され違法でないこともあるでしょう。

著作権判例データベースってサイトで検索したら口述権について7件ありました。そのうち2つが口述権についても争われていて、どちらも講演会の参考資料として使われたものですが、朗読等によって口述されるもののみが口述権の対象として権利侵害が否定されていました。その参考資料は市販のものでないので今回の質問には参考になりませんが。

口述権の消尽は聞いたことありませんし、一度販売されたからといって消尽するのは妥当ではありません。
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この回答へのお礼

ご回答ありがとうございます。
「口述権」は,コピーの交換価値の問題ではなく著作物内容の社会的価値保護の問題なので,おっしゃるとおり,コピーの市販によって消尽することは考えにくいと思います。
大変参考になりました。

お礼日時:2012/01/03 21:58

口述権が問題になっていた、このサイトの事例では、


学習塾の講師及び生徒の全員が、
市販の書籍を購入するということでした。

このような場合は、学習塾でその書籍を朗読することができるとして、
口述権の保護までは不要と考えます。

このサイトの前述の事例は、1人だけが言語の著作物を購入し、
その購入者が、その著作物を購入していない多数の聴衆の前で、
その言語の著作物を口述する場合と事案を異にします。

著作権法を含む知的財産権法の分野において、
「権利の消尽」について、
著作権法26条の2第2項のように明記されていることは例外的であり、
通常は解釈で導かれます。

口述権の消尽も事案に即して解釈で導かれると考えます。
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この回答へのお礼

事案に即して権利の消尽を認めるということですね。
実際には学習塾においていちいち著作権者の許諾はとっていないのが実態で,これは「ゲームソフトの頒布権」と同様権利の消尽を認める方が社会的利益になる面があるとは思います。
結局,学習塾の事案については「著作物である市販物を販売した時点で著作権者は利潤をあげており,それ以上の利潤を認める必要はない。口述権は、狭義の著作権の一部であり,財産権の一種。著作権者が著作物の販売で利潤をあげた後にさらに口述権を保護する必要はない」というより,口述権で保護される著作物の価値を不当に侵害する行為態様になりにくいというところでしょうか。
裁判例が登場するのを期待します。

お礼日時:2012/01/03 11:47

質問のご趣旨は、口述権が著作物の販売とともに消尽するかどうかだと思いますが、結論は「消尽しない」ということになります。



あなたが引用されている質問の回答は誤っていますね。まずそもそもどうして頒布権が消尽するのかというと、「著作物である市販物を販売した時点で著作権者は利潤をあげており,それ以上の利潤を認める必要はない」ということではないんです。

著作物といえども、一つの物品として市場におかれて流通する以上、取引の安全性が確保される必要があります。たとえばゲームソフト。こいつが流通する際に、毎度著作権者に許諾を求めないといけないとすれば、取引の安全性が阻害されますね。そんなかったるいことやっていられないわけです。

取引の安全という社会的利益と著作権者の利益のバランスを考えてみると、著作権者は最初にその著作物のコピーを販売する際に利益を得る機会があったのでもういいのではないか。それ以降は、取引の安全の方を重く見て、著作権者の許諾は不要としても著作権者が大損することはないでしょう、ということなんです。

つまりいちいち著作権者の許諾を得なくても、一旦取得したコピーの販売できるようにしましょう、ということです。でもね、あくまでも消尽でできるようになることはそのコピーの転売だけです。それ以外のことは何も認められていません。せいぜいやれることといえば、私的利用とか非営利・無料での利用程度です。

一方、口述権というのは「著作者は、その言語の著作物を公に口述する権利を専有する」ということで、著作物の所有や流通とは関係がありません。著作物の1コピーを所有することで、そのコピーについての頒布権に関しては処理できましたが、その著作物全体について権利処理できたことにはならないのです。

そして法上、口述権が消尽すると明定されていないのですから、口述権は著作物の頒布に伴って消尽することもありません。著作物のコピーを一つ持っているだけで、何でもできると思ってはいけないということですね。
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この回答へのお礼

さっそくのご回答ありがとうございます。
「コピーについての頒布権(というコピー1個の交換価値)に関しては処理できたが,その著作物全体(の価値)について権利処理できたことにはならない」から「著作物のコピーを一つ持っているだけで、何でもできると思ってはいけない」というご指摘,明快でよくわかりました。結論に賛同いたします。
著作権法の解釈は決して形式的にできるものではなく,ご指摘のとおり利益較量をしないといけないと思います。著作物(コピー)の口述の与える影響は,著作内容の社会的価値自体の希薄化につながることから,著作権の保護を優先させるべきだと思っております。

お礼日時:2012/01/02 22:18

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