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『指させて指す』とはどういう意味なのでしょうか?
将棋の考え方のひとつなんでしょうけど、よくわかりません。
ある局面での次の一手がそうですみたいな回答でもかまいません。
いろいろ教えていただけるとありがたいです。
よろしくお願いします。

A 回答 (3件)

私たちは普段あまり意識していませんが、将棋には着手に関して3つの原則があります。


1.将棋は先手と後手が必ず交互に一手づつ指さなければならない。
2.ある局面において必ずしも自分にとって有効な着手が存在するとは限らない。
3.ある局面において、着手可能な手のほとんどは着手する側にとって有効ではない。

この3つの原則に即した着想が『指させて指す』という考え方なのです。『指させて指す』考え方を最もうまく実戦で表現している棋士が羽生二冠王だと思います。そこで羽生さんの有名な棋譜を題材にして説明してみたい。

放映日:2007/10/14
棋戦詳細:第57回NHK杯戦2回戦第11局
「羽生善治王座・王将」vs「中川大輔七段」
http://wiki.optus.nu/shogi/index.php?cmd=kif&cmd …

この棋譜は大変面白いので是非とも並べていただきたい。71手目の▲4七歩に注目してください。
この手の意味はなんでしょうか。この将棋は相掛かり相腰掛銀の戦型から▲4五銀▽同銀▲同歩と4筋の歩を進めて、さらに▲4四歩▽同歩と突き捨てて、持ち歩を4七に打ったのです。この手の意味は4七の空間を埋めて、将来4六や4七に相手から打ち込まれる手を消したということでしょう。4六の銀を支える意味もあります。しかし馬の退路も消していますし、玉の逃げ道もなくしているので本当に得な手かどうかはなんともわかりません。こういう手は級位者には、まず指せない手だと思います。
こういう手が『指させて指す』手です。「私の方には、さほど有効な手がありませんが、貴方の方はもっと有効な手がありませんよね。何か指してみてください。」そういう意味でじっと相手に手を渡します。
さて手を渡された中川七段は72手目に▽7四飛と指します。▲7五角の王手飛車の筋を消しながら、▽7七歩成や▽7七角の打ち込みを見せて先手を脅かした手です。これにも羽生二冠王は▲2九飛と下段飛車の構えで、また相手に手を渡します。中川七段は▽5二金と応じて、先手の方から動いて下さいよと待ちます。ここまでの数手はお互い、手の渡しあいなのです。▽5二金を見て、先手は▲7五歩▽同飛▲6四銀と動きます。この順は後手が▽7四飛、▽5二金の2手を指したから生じました。▽8四飛▽6二金の形のままなら、こうは指せません。飛車が7四にいるからこそ▲7五歩が飛車取りの先手になるのであって、8四のままだったら意味をなしません。また金が6二にいると▲7三銀成(不成)には▽同金と応じられて面白くありません。

『指させて指す』とは、こういうことなのです。相手に何か手を指させて、相手の着手に応じて手をつくっていく。

この後を進行を見れば▲4七歩には▽7四角や▽7三角といった角打ちの筋を消している意味があったことにも気づくでしょう。▽7四角は遠く2九の飛車に当たっているので大変厳しい手です。このように▲4七歩は後手の持ち角の威力を弱めて、将来強い戦いができるようにしていた用意周到な手だったのです。これに対して▽7四飛は、▲7五歩と叩かれただけで、後手の得な手ではなかったのです。

先を急いで、146手目の局面を見てください。もし4七に歩が無かったら、▽4七桂と詰めろで縛って後手が必勝だったでしょう。71手目の▲4七歩がここでも絶大な効果を発揮しています。打った時点ではなんだか意味不明な手でしたが、それは先手にとって大きな得があった手だったのです。それでも▽4一飛と後手玉を脅かしている金を取って後手必勝だったと思います。ところが後手は▽8七飛成と誤ってしまいます。次に▽8九竜の詰めろですから、悪い手ではないように思えますが、これには▲9八角が絶好の攻防の手となってしまいました。▲9八角は▽8九竜を防ぎながら、遠く後手玉を睨んで▲5四銀の進出を睨んでいるのだからたまらない。それでも▽8八竜と逃げながら、詰めろが続いているので、まだ後手が勝っているようにも思えるのですが、最後は先手の勝ちとなりました。

この将棋で私にとって印象深い手は、なんといっても71手目の▲4七歩です。初形の位置を歩を打ち直すというのですから、なんとも言い難い変な手で、元気が無い手のようにも思えます。
どうせ歩を打つなら、▲4五歩▽同歩▲同銀▽4四歩▲3四銀▽同銀▲同馬と金取りに馬が飛び出た方が元気が良いように思えますし、この筋を本線に読む人がほとんどなのではないでしょうか。▲4七歩と打ってしまうと、もう4筋に歩を打つことは不可能になるので、この筋は無くなってしまうのです。

『指させて指す』。それは奥が深い高等戦術です。なかなか、こういう手は指せないものですが、ここまでの説明で、その意味はなんとなく見えてきたでしょうか。

この回答への補足

mekuriya さん、こんばんは
例によって、またしばらくお時間いただきたく。

補足日時:2012/02/23 21:06
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この回答へのお礼

羽生2冠対中川7段の将棋は大変為に成ました。
ありがとうございました。

お礼日時:2012/03/04 05:51

指させて指すというのは、言い換えれば相手の力を利用するということです。


例えば矢倉の森下システムは後手の指し手によって態度を決めるという戦法です。
相手に態度を決めてもらって、それに対応していこうというものです。
 
同じような考え方の手に、手を渡すとか、損のない手を指しておくというのがあります。

相手に態度を決めてもらう場合もあれば、
相手が何をしたいのか分かっていて、敢えてそれをやらせる場合もあります。
共に相手に指させて、自分もそれを手がかりに手を模索して行きます。

検索したら次が例題で直ぐにかかりました。
http://www.hakusa.net/shogi/note/item_43.html

図から△3二玉が指させて指すのだそうですが、この場合は損のない手を指して万全を期したわけですね。
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この回答へのお礼

『うまくいかないときは他力思考』(相手に手を委ねる)
羽生さんもそのようなことを言っておられますね。
『相手の手にあわせて指し手を決めていく』ということなのですね。
ありがとうございました。

お礼日時:2012/02/19 21:32

要するに、相手に指したくない所に指させてそこを取るまたは自分に有利な状況に持っていくという事ではないでしょうか

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この回答へのお礼

指さないですむならば、指さないほうがよかったというマイナスの手のほうが圧倒的に多い。
ありがとうございました。

お礼日時:2012/02/20 21:54

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