昨日、法定地上権の成立如何のことで質問させていただいたものですが、この場合はどうなるでしょうか?
Aさん所有の更地があり、B銀行がこれに抵当権を設定しました。
数年後、この土地に、Aさんの会社名義で建物が建ち、Aさんと会社の間には無期限の土地賃借契約が結ばれました。
B銀行は、先のと同一の債権を担保するために、Aさんの会社名義の建物も共同抵当に加えました。
競売で土地と建物の所有者が異なってしまった場合、会社の建物のための借地権は土地競落人に対抗できるでしょうか??
仕事の関係なのですが、難しくてわかりません。どなたかお教え願います。
No.3ベストアンサー
- 回答日時:
ご質問の内容に関しては、非常に微妙な問題だと思います。
前回のご質問は、まさに民法388条の法定地上権が成立するかどうかの問題で、これは蓄積された判例理論を検討することによって、前回shoyosiさんが回答なされた結論にほぼ一義的に決まります。補足説明としてはs-tomyさんのおっしゃる通りです。
それに対して、今回のご質問は、s-tomyさんのおっしゃる通り、民法388条の法定地上権の問題ではなく、民法395条の問題です。この点に関しては、shoyosiさんは、早とちりをなされたのだと思います。
つまり今回の問題は、
民法395条
「第602条に定めたる期間(土地に関しては5年)を超えざる賃貸借は抵当権の登記後に登記したるものと雖もこれをもって抵当権者に対抗することを得る。但しその賃貸借が抵当権者に損害を及ぼすときは裁判所は抵当権者の請求によりその解除を命ずることを得る」
に関する解釈の問題です。
更地に抵当権が設定された後に、建物が建てられ借地権が設定されたとしても、抵当権者に対してこの借地権を対抗することはできないというのが、これまでの判例の理論です。
理由は、建物所有目的での無期限の借地権は602条の期間制限を超えてしまうから、というものです。例え、期限の定めがあっても、建物所有目的の場合、借地借家法3条(または旧借地法2条)の規定により、存続期間は最低でも30年になってしまうため、結果として602条の期間制限を超えてしまい、抵当権者に対抗できなくなります。
しかし、395条は、抵当権者に対して対抗することができないというだけのものであって、賃貸借契約自体は有効ですし、条文の反対解釈をすれば、「抵当権者自身がこの借地権の存在を争わず、むしろこれを積極的に認めているのであれば、その存続を認めても良い」ということにもなると思います。これを認めても、抵当権者に不測の損害を与えるものではないと考えられるからです。
ただ、問題なのは、更地に抵当権が設定された後に建物が建てられ、借地権が設定されていることから、競落人としては、当然この借地権は効力のないものとして、つまり、借地権の負担のないものとして競落している可能性があり、その場合の競落人の保護をどう考えるかという問題が発生すると思います。
しかし、この場合にも、私は395条の文言の反対解釈から、抵当権者自身が更地への抵当権設定後の借地権の存在を認め、進んで共同抵当の目的物としていることから、抵当権者としてはこの借地権の消滅を主張することができず、従って土地競落人も、この借地権の負担のついた土地を取得したことになって、借地権の消滅を主張できないのではないかと考えます。
この点は、異論もあるでしょうし、裁判になった場合には、全く正反対の結論になるかもしれません。
また、私の結論を採ったとしても、競落人から抵当権者であるB銀行に対して損害賠償(民法709条)または追奪担保(民法566条)請求の可能性は残されていると思います。
また、その場合には、建物が建てられた後に借地権を含めた建物に対して共同抵当を設定したB銀行の責任者には、商法486条の特別背任罪が成立する可能性もあるものと考えます。
いずれにせよ、前回のご質問のように一義的に結論が出るものではないと思います。
他にも様々な要因があるかもしれませんし、おそらくお勤めのB銀行には顧問の弁護士の先生がおられるでしょうから、その先生と詳細にご検討なされたほうが宜しいのではないかと思います。
395条短期賃貸借の反対解釈で、短期を越える賃貸借でも、当事者間で有効なこの契約を抵当権者が争わず認めているのであれば、借地権の存続を認めてよい、そして、建物に共同抵当権を設定することはこれにあたるのではないか、というふうに構成するのですね?
本当にありがとうございます。大変勉強になります。
すごく微妙で意見の分かれる話みたいですね。
アドバイスのように弁護士さんにも相談に行ってみようと思います。
No.5
- 回答日時:
まず、本稿のご質問についてですが、先に書きましたように、「土地と建物の所有者が同一」であることが法定地上権成立の要件ですので、本件のケースでは、法定地上権は、成立し得ません。
この点はご理解いただいてますよね?平成9年2月の判例でも、土地と建物の所有者が同一で無いことを理由に法定地上権の成立を否定しています。また、No.73657のご質問の件ですが、結論から先に申しますと、租税債権がないからといって、必ずしも法定地上権が成立するとは言えません。先に書きましたように、この辺の取り扱いは、最高裁で確立されているものではないので、正直、どう判断されるかわかりません。お話にあがっている平成9年の判例や、昭和13年の判例は、いずれも建物の再築のケースであり、設定当初から土地建物双方に抵当権が設定されていたケースですので、設定当初が更地であった本件と同列に考えることは出来ないと思われます。
これは、本稿のご質問でも同様で、「新築された借地権付建物に共同抵当権を設定しているのだから、借地権の対抗力を認めたところで不測の損害でもない」とおっしゃいますが、「更地」と「借地権の負担付土地+借地権付建物」の評価が必ずしも同価値とは限りませんので(例えば、建物が老朽化している場合)、一概に「不測の損害が無い」とはいえませんので、特段の事情の無い限り、借地権は消滅すると考えるべきでしょう。
(先の判例のケースで言っているのは、「土地+新建物」の価値は、「土地+旧建物」の価値を上回る事が多いので、その限りにおいて抵当権者に損害を与えることはない、ということです。「更地」と「土地+新建物」の価値を同視しているわけではありません。)
たしかに。No.73657も今回のケースも再築ではありません。
法定地上権が成立するかどうか、更地に抵当権が設定された後に建物が建った場合の判例がないんですよね。まして借地権は…。
「「土地+新建物」の価値は、「土地+旧建物」の価値を上回る事が多いので、その限りにおいて抵当権者に損害を与えることはない、ということです。「更地」と「土地+新建物」の価値を同視しているわけではありません。」
というところ、納得です。
昨日今日と大変勉強になります。本当にありがとうございます。
No.2
- 回答日時:
このケースは、土地は「Aさん」の所有で、建物は「Aさんの会社」の所有ということですね。
この場合には、「土地と建物の所有者が同一」という要件を満たさないので、法定地上権は成立し得ないと思います。また、「Aさん」と「Aさんの会社」の間で締結された土地賃貸借契約は、土地に設定された抵当権に後れるものであり、これに対抗できません。
したがって、土地のみ、もしくは土地及び建物の両方が競売に付され、土地と建物が別々の人に落札された場合には、借地権は消滅することになります。
なお、「昨日の質問」も拝見させていただきましたが、余計なお世話と思いつつ、ちょっと気になったのでコメントさせていただきます。
土地に抵当権を設定してから建物に1番抵当権が設定されるまでの間に、所有者に租税の延滞などがあり、その法定納期限が到来している場合、建物の代金の配当については、建物に設定された抵当権は、租税債権に後れるものとして取り扱われます。つまり、登記簿上は1番でも、実際の配当については2番目になってしまうのです。
したがって、この場合には、法定地上権を発生させることによりA銀行に不利益となるため、もともと更地評価のもとに設定されたA銀行の土地抵当権を重視して法定地上権は成立しないとするのが実務の大勢のようです。
ただし、この辺のところは、最高裁で確定されているわけではないので、実務でも多少の混乱があるようです。もし、大金が動くような話であるならば、弁護士等の専門家の意見を聞いたほうが良いのではないかと思います。
この回答への補足
大変ありがとうございます。法学部じゃないものですから、本当に助かります。
ご指摘の、土地抵当権設定から建物に共同抵当権が設定されるまでの間の税金の滞納は、なかったです。よかった、この場合抵当権に優先する債権はないんですよね。
法定地上権不成立、借地権は消滅とのご回答と理解しましたが、
私、昨日の法定地上権のところでいただいた回答から、
「最高裁判所 平成9年2月14日 第3小法廷判決(平成7年(オ)第261号)
要旨:所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後、右建物が取り壊され、新たに建物が建築された場合には、新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ、新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたとき等特段の事情のない限り、新建物のために法定地上権は成立しない。」
っていうのの反対解釈(?)で、更地に抵当権を設定し、その後に新築された建物にも共同抵当権を設定したのだから、法定地上権は成立すると考えていいのだな、抵当権者も了解済みなのだから不測の損害を被ってるわけでもないし、と理解したのですが、どうでしょうか?
今回の質問のケースは、それを類推して、銀行は更地に抵当権を設定したあと、新築された借地権付建物に共同抵当権を設定しているのだから、借地権の対抗力を認めたところで不測の損害でもないし、建物収去明渡の必要もなくなるからいいんではないのかなと思ったのですが。
私の解釈、ヘンでしょうか?
No.1
- 回答日時:
「所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した場合、抵当権者はこれにより土地及び建物全体の担保価値を把握することになるが、右建物が存在する限りにおいては、右建物のために法定地上権の成立を認めることは、抵当権設定当事者の意思に反するものではない(最高裁昭和三七年九月四日第三小法廷判決)」との趣旨により、土地建物を同一抵当権の目的にしていますので、法定地上権の成立は認める得べきものと思います。
参考URL:http://civilpro.law.kansai-u.ac.jp/kurita/casebo …
共同抵当権が設定された建物も、法定地上権に関する判例を類推(?)して、借地権を対抗できるとしても良いのですね。
本当に助かりました。ありがとうございました。
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