No.2ベストアンサー
- 回答日時:
> 積分定数の所をμ*,Bとおけば作れたのですが
> どうも釈然としません…
一方の成分の化学ポテンシャルが
μ,A=μ*,A+RTlnx,A ……(1)
で表される、といっても必ずしも全ての組成でこの式が成り立つとは限りません。式(1)が成り立つx,Aの範囲に依存して、μ*,Aやμ*,Bの持つ意味が変わります。
■全ての組成で、つまり 0≦x,A≦1 で、式(1)が成り立つ場合
x,A=1のとき式(1)から μ,A=μ*,A となります。このとき左辺のμ,Aは純液体Aの化学ポテンシャルですから、x,Aに依存しない定数μ*,Aも純液体Aの化学ポテンシャルに等しくなります。
x,B=1-x,Aですから、成分Bについても 0≦x,B≦1 で
μ,B=μ*,B+RTlnx,B ……(2)
が成り立ちます。x,B=1のときを考えると、成分Aと同じ理屈で定数μ*,Bは純液体Bの化学ポテンシャルに等しくなります。
式(1)が成り立つということは、成分Aについてラウールの法則が成り立つことを意味します[注1]。ギブス-デュエムの式から、「2成分溶液において一方の成分について全ての組成でラウールの法則が成り立つならば、他方の成分についても全ての組成でラウールの法則が成り立つ」ということがいえます。
■x,Aが1に近いときに限って、式(1)が成り立つ場合
x,A=1のとき式(1)から μ,A=μ*,A となるので、先と同様に、μ*,Aは純液体Aの化学ポテンシャルです。
一方、先とは違って、成分Bについては式(2)が成り立つのは x,B が0に近いときに限ります。今の場合、定数μ*,Bは純液体Bの化学ポテンシャルとは無関係の値になります。無関係であることを強調するために*という記号使わずに、μ゜,Bと書かれることも多いです。
μ,B=μ゜,B+RTlnx,B ……(3)
分子論的にはμ゜,Bは、「個々の溶質分子Bが十分な量の溶媒分子Aに取り囲まれていて、溶質分子B同士の相互作用が全く無視できる(仮想的な)溶液中の、成分Bの化学ポテンシャル」と解釈できます。μ゜,Bの値そのものは、溶質分子Bとそれを溶媒和している溶媒分子Aとの相互作用で決まる、と考えます。
先と同様に、式(1)が成り立つということは、x,Aが1に近いとき成分Aについてラウールの法則が成り立つことを意味します。一方、式(3)が成り立つということは、x,Aが1に近いとき成分Bについてヘンリーの法則が成り立つことを意味します[注2]。ギブス-デュエムの式から、「2成分溶液において溶媒についてラウールの法則が成り立つならば、溶質についてはヘンリーの法則が成り立つ」ということがいえます。
■x,Aが0に近いときに限って、式(1)が成り立つ場合
先とは逆に、成分Aが溶質に、成分Bが溶媒になります。ギブス-デュエムの式から、「2成分溶液において溶質についてヘンリーの法則が成り立つならば、溶媒についてはラウールの法則が成り立つ」ということがいえます。
> 希薄溶液のときは
> μ,B=μ*,B+RTlnx,B
> という式を当たり前のように使っていたのですが
>
> この式の正当性はどうすれば理解できるでしょうか…?
溶媒がラウールの法則に従う希薄溶液のときは、
μ,B=μ*,B+RTlnx,B
という式の正当性が、ギブス-デュエムの式から保障されます。
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注1,2:液相の化学ポテンシャルの圧力依存性を無視する近似の下で。
注2:溶質が揮発性分子の場合。溶質が不揮発性分子の場合には、式(3)は溶質の活量係数が1に等しいことを表している。
御回答ありがとうございました!
何回も熟読させてもらいまして、ようやく理解することができました。
ここまで詳しくは手持ちの参考書にも全く載っていなかったので、すごくすっきりしました。
ありがとうございました!
No.1
- 回答日時:
μ*,Aやμ*,Bに、それぞれの純液体における化学ポテンシャル、という意味を持たせるなら、示すことは不可能です。
ラウール基準やヘンリー基準など、化学ポテンシャルの基準のとり方には、任意性があるからです。μ*,Aやμ*,Bに特別な意味を持たせないで、これらを単なる積分定数とみなすなら、ギブス-デュエムの式
n,A dμ,A + n,B dμ,B = 0
を使うと、示すことができます。この式と、モル分率の定義
x,A = n,A/(n,A+n,B)
x,B = n,B/(n,A+n,B)
と与式から
∂μ,B/∂x,B = (x,A/x,B)(∂μ,A/∂x,A) = RT/x,B
を示し、これをx,Bで積分して下さい。
この回答への補足
御回答ありがとうございます!!
積分定数の所をμ*,Bとおけば作れたのですが
どうも釈然としません…
希薄溶液のときは
μ,B=μ*,B+RTlnx,B
という式を当たり前のように使っていたのですが
この式の正当性はどうすれば理解できるでしょうか…?
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